コールセンター内製化はなぜ必要?メリットとデメリット、注意事項を解説
コールセンターの運営をアウトソースで賄うケースは珍しくありません。
しかし近年は、対応力の向上やVoC活動の活性化のために、内製化に踏み切る企業も増えています。とくに高度な内容や緊急性の高い問い合わせが多い場合には、内製化を検討すべきかもしれません。
ここでは、コールセンターが内製化に向かう理由や、内製化のメリット・デメリットなどを解説しています。
1.コールセンターが内製化へ向かう理由
近年、コールセンター界隈の一部で内製化の動きが見られます。まずはその背景を整理してみましょう。
コールセンター内製化の背景
コールセンターでは「一次対応(取次業務や、簡易な回答業務など)」が日常的に発生します。
ただし、一次対応をテンプレート化し、ICTによって自動化・無人化を進めるケースも増えてきました。有人対応は、技術的な内容や複雑な問い合わせなどに限定しているわけです。こうしたケースでは、有人対応で「深い業務知識を持つ自社の社員」が必要になることから、アウトソースよりも内製化が適していることもあります。
また、新製品・サービスリリースや既存サービスのアップデート頻度が高ければ、アウトソーサーへの教育が追い付かずに応対品質の低下を招くこともあるでしょう。
アウトソーサーへ教育を施すコストや品質低下のリスクを考慮すると、多少コストが上がっても内製化が得である、と考える企業もあるようです。
2.コールセンター内製化のメリットとデメリット
では、コールセンターを内製化した場合のメリットとデメリットを整理してみます。
メリット
- メリット1:VoC活動が進めやすい
VoC活動は、顧客の声を製品やサービスの改善につなげることが目的です。内製化によって顧客の声がダイレクトに届くため、VoC活動の精度向上が見込めます。顧客の要望を素早く的確に反映させやすくなるわけです。
- メリット2:情報とノウハウ共有
社内にコールセンターを設けることにより、顧客対応から得られた情報や種々のノウハウを共有しやすくなります。アウトソースの場合もこうしたメリットはあるものの、内製化後はよりきめ細やかで具体的な情報が得られやすくなります。
- メリット3:対応力の向上
同じ社内にある開発部門や営業部門との連携がとりやすくなり、高度で複雑な問い合わせにも対応できるようになります。すべての業務が社内で完結し、アウトソーサーとのコミュニケーションが不要になるため、速度・品質ともに高まりやすいのです。
デメリット
一方、デメリットとしては次のようなものが挙げられます。
- 人件費がかさみがちである
- リソースの確保・調整が難しい
- 立ち上げ・拡張時のリードタイムが長い
- 情報漏洩リスクへの対応が必要
- 教育・管理体制の構築コスト
このようにデメリットは「コストと人手の調整」「体制・仕組みの構築」に集約されます。したがって、コールセンター内製化においては、この2点に配慮した仕組みづくりに注力したいところです。
3.コールセンター内製化に向けて注意すべきポイント
内製化に向けて注意すべきポイントとして、「人的リソース調整への対策」「教育・情報共有体制の構築」「システム面の整備」の3点が挙げられます。それぞれ詳しく解説します。
人的リソース調整への対策
コールセンター内製化では「人手をどう確保するか」が問題になりがちです。
そもそもアウトソース時には人手を考慮する必要がなかったわけですから、ゼロベースで確保しなくてはなりません。そのため、配置転換や異動、中途採用などで人材を確保していく必要があるでしょう。
また、たとえ人材を確保できたとしても、「人材を上手く使う」仕組みがなければコールセンター運営に支障をきたしてしまいます。したがって、稼働状況の把握やシフト管理などを効率よく行うための仕組みを構築したいところです。
人的リソースの調整については、ICTで解決できることもあります。例えばBIZTELでは、ワークフォースマネジメントツール「Cating Table3.0」との連携により、呼量データをもとにしたオペレーターのシフト管理の最適化が可能です。
教育・情報共有体制の構築
コールセンター運営では、情報共有・教育体制の確立も重要な要素です。情報共有・教育体制を整えることで、業務品質の向上・均一化といったメリットが得られるでしょう。
「どういう対応が、応対品質や顧客満足度にどのような影響を与えるのか」、「新人がつまずきやすいポイントはどこか」といった情報を可視化し、ノウハウとして蓄積できる仕組みがあれば、スムーズかつ高品質な顧客対応のベースになります。
システム面の整備
こうした課題は、社内のルール決めやマネジメント層への教育によって、ある程度は解決できるかもしれません。しかし、業務量が増えたり、拠点が増えたりするにつれ、ルールやマネジメント体制のみでは吸収しにくくなることも事実です。そこで、各種ICTツールの活用にも目を向けてみてください。
とくに「CTI」「PBX」「CRM」などは、現代のコールセンターを円滑に動かすために必須とも言えるツールです。こうしたシステムを組み合わせ、自社環境に適したシステムを構築できれば、コールセンター内製化の恩恵を受けやすくなります。また、すべてをオンプレミスで賄うのではなく、「クラウド型」の採用も検討してみてください。オンプレミス型よりも安価に、柔軟性の高いシステムが構築できるからです。
4.コールセンター内製化の事例
最後に、コールセンター内製化の成功事例をご紹介します。
株式会社スマレジ
株式会社スマレジでは、アウトソーサーへコールセンター運営を委託していました。しかし、期待していたよりも応答率が低かったことや、複雑な問い合わせ内容が多かったことから、応答率と対応力向上のためにコールセンターの内製化を進めたとのこと。
内製化にあたっては、まずCTIを導入して応対時間の割合を徐々に増やしつつ、6名程度の小規模から運営を開始したそうです。また、スモールスタートかつ拠点増加やビジネス拡大に対応できるよう、クラウド型CTIを採用したとのこと。
内製化後は、クラウド型CTIの各種機能(エージェント別レポート・稼働状況モニタリングなど)を上手く活用しながら応答率・応対品質ともに向上させていくことができたそうです。とくに応答率の改善は目覚ましく、内製化後は88%という高水準を達成。アウトソース時は50%を切ることもあったとのことですから、格段に向上したと言って良いでしょう。
5.まとめ
ここでは、コールセンター内製化の背景やメリットとデメリット、内製化におけるポイントなどを解説してきました。
コールセンター運営では、アウトソースによるコスト面のメリットが注目されがちです。しかし、本稿で紹介したように内製化によるメリットもしっかりと存在しています。とくに、「問い合わせ内容が高度」で「緊急性が高い」分野では、内製化のメリットを実感しやすい傾向にあるようです。
また、内製化によるコスト増については、クラウド型システムの採用で、ある程度相殺することができます。自社の顧客対応の課題に応じて、クラウド型システムを活用したコールセンター内製化を検討してみてはいかがでしょうか。