メールサーバーの種類とメール送信サーバーの仕組みを解説
はじめに
Eメールは、送信・受信それぞれ別々のサーバーによって運用されるのが一般的です。Eメール配信用のサーバーを自社構築・運用する際には、これらメールサーバーの仕組みを理解しておくと、有事の対応がスムーズになります。ここでは、メールサーバーの種類と基礎知識などについて解説していきます。
ビジネス用途で必要なサーバーの種類
「サーバー」とは、それぞれの用途にあわせたソフトウェアを搭載し、ユーザが操作するパソコン(クライアント)からのリクエストを受け、データやサービスを提供するパソコンを指します。
まずは、一般的にビジネス用途で使われるサーバーの種類と、それぞれの概要について解説します。
Webサーバー
Webブラウザからのクライアントのリクエストに応じ、任意のデータを返すサーバーです。Webサイトを表示させるためには、WebサーバーとWebブラウザが必要です。
メールサーバー
クライアントからのリクエストに従い、受信サーバーは「POP3」「IMAP」、送信サーバーは「SMTP」といったプロトコルを用いて、メールの送受信を行います。これらをあわせて、「メールサーバー」と呼びます。
DBサーバー
DB(データベース)サーバーでは、顧客情報や製品情報など、自社の事業にまつわるデータを一元的に保存し、必要に応じて上書きや抽出などを行います。また、これらの動作には主にSQLと呼ばれるデータベース言語が使用されます。
DNSサーバー
DNS(Domain Name System)サーバーは、いわばネットワーク上の「電話帳」のような仕組みです。具体的には、名前解決(ドメインネームとIPアドレスを結び付ける処理)を提供しています。
アプリケーションサーバー
アプリケーションサーバーは、外部からの要求に応じて適宜データを渡すサーバーです。アプリケーションサーバーの定義は広く、企業やサーバー構成によってさまざまです。一般的には、Webブラウザのリクエストに対して、動的な処理が必要な場合にプログラムを実行し、DBサーバーからデータを抽出し、Webサーバーへ受け渡す役割を負います。Webサイトやサービスにおける動的な動きは、アプリケーションサーバーが担っています。
メールサーバーの種類と仕組み
次に、メールサーバーの具体的な仕組み・動作について解説します。メールの送受信は、「メールクライアント(PC)⇒送信サーバー(SMTP)⇒DNSサーバー⇒受信サーバー(POP3、IMAP)」というステップで進みます。それぞれのサーバーの仕組みについて、理解しておくことが大切です。
SMTPサーバー
最もスタンダードなメール送信プロトコルである「SMTP(Simple Mail Transfer Protocol)」が動作するサーバーです。ユーザがメールソフトの送信ボタンを押すと、まずSMTPサーバーに対してメールの配送が依頼されます。これを受けたSMTPサーバーは、DNSサーバーに対して「送信先メールアドレスのドメインを使って具体的な配送先のメールサーバーを教えてくれ」とリクエストします。既に述べたように、DNSサーバーは名前解決の役割を負っています。また、「S P Fレコード」という設定情報の記述により、「どのメールサーバーにどういった処理を返すのか」といった指定も可能です。DNSサーバーから回答が得られると、相手側の受信サーバーへとメールが送られ、送信先に届くという仕組みです。
POP3サーバー
POP3(Post Office Protocol)サーバーは、SMTPサーバーから受け取ったメールをチェックし、メールアドレスごとに用意されたメールボックスへとメールを届けます。ユーザがメールクライアント上で受信ボタンを押すと、POP3サーバーから仕分けられたメールを受信(ダウンロード)できるようになっています。
IMAPサーバー
IMAP(Internet Message Access Protocol)サーバーはPOP3サーバーと同じく、受信処理を司るサーバーです。ただし、POP3とは異なり「メールをサーバー上に置いたまま」管理できるという特徴があります。POP3サーバーで受信したメールは、ユーザのPCなどにあるメールクライアントへとダウンロードされます。一方IMAPサーバーは、ユーザのクライアントへメールをダウンロードさせずにサーバー上から参照できるようになっています。Webメールなど複数のデバイスから同じメールボックスにアクセスする環境で、よく使われる仕組みです。
Eメール運用はSMTPサーバーの構築が重要
ビジネス用途でのEメール運用であれば、キャンペーンやマーケティング、その他顧客との連絡などでメールを送る機会が増えるでしょう。したがって、送信機能を担うSMTPサーバーの構築・運用は特に重視したい部分です。そこで、SMTPサーバーについてもう少し詳しく解説します。
SMTPサーバーの仕組み
前述したようにSMTPは、メール送信用プロトコルの名称です。SMTPが動作するサーバーがSMTPサーバー(送信サーバー)と呼ばれます。ただし、SMTPサーバーは必ずしも「物理的な機械」を指す言葉ではありません。正確に言えば、「SMTPを使用して動作するアプリケーション」を指します。SMTPサーバーは原則として常時起動しており、メールクライアントから送信され、コード変換されたEメールを解析・配送する役割を担います。
●使用ポートについて
SMTPプロトコルの規定ポートは「25番」ですが、25番ポートには送信サーバーに対して認証を取る仕組みが実装されていません。これを悪用した“なりすまし”が横行し、大量のスパムメール・迷惑メールが飛び交う事態が発生しました。こうした状況を受けて近年では「OP25B(Outbound Port25 Blocking)規制」とよばれるメール送信規制が普及しています。OP25Bが敷かれた環境では、外部ネットワークもしくは外部サーバーを介したメール送信を行う際に25番ポートが使用できなくなることから、サブミッションポートと呼ばれる送信メールサーバーの認証を行う代替ポートを使ってメールが送られます。サブミッションポートは、「587番」「465番」を指定するのが一般的です。
●SMTP AUTH(送信メールサーバ認証)
SMTP AUTHは、ユーザ認証機能を持たないSMTPの脆弱性を補う拡張仕様として、メール送信を依頼してきたメールクライアントに対し、IDとパスワードによる認証作業を求めます。この認証作業により、なりすましや悪意のあるスパムメールなどを防いでいるわけです。通常は587番ポートが使用されます。
●SMTPS(SMTP over SSL/TLS)
SMTPSは、SMTPに暗号化(SSL/TLS)機能を組み合わせ、よりセキュリティレベルを高めたプロトコルです。ユーザーとSMTPサーバー間の通信を暗号化し、通信内容を保護します。通常は465番ポートが使用されます。
「OP25B規制」や「SMTP AUTH」、「SMTPS」について詳しく知りたい方は、下記の記事もぜひご一読ください。
●SMTPサーバーの構築方法
SMTPサーバーを構築する方法としては、主に以下2つが挙げられます。
・Microsoft Exchange Serverなどの専用サーバーソフトをインストール
企業・組織において、独自ドメインによるメールサーバーを構築する場合に用いられます。比較的規模の大きなメールサーバーの構築で用いられ、ハードウェア費用やライセンス料金などのコストが発生します。
・サーバー用OSに搭載されているSMTPサービスを設定
中堅・中小企業などで運用するコンパクトなメールサーバーであれば、サーバー用OS(Windows Serverなど)に付属するSMTPサービスを活用する方法がおすすめです。サーバーOSの設定ウィザードに従ってサーバーの種類(SMTP・POP3など)を指定するなど、選択方式でインストールできるため、一見手軽に見えます。しかし、実際にはファイアウォールの許可設定やユーザ・メールボックス・ドメインの追加などの作業も発生するため、専任の管理者が必要になるでしょう。
メールサーバーを自社構築するメリットとは?
では最後に、メールサーバーを自社構築するメリット・デメリットを整理します。
メリット
・細かなカスタマイズやチューニングが可能
・コストさえかければセキュリティを高めやすい
デメリット
・IPレピュテーション管理・メールフィルター対策・送信ドメイン認証など、メール到達率の維持および改善に手間がかかり運用負荷が高い
・ハードウェア費用・ライセンス費用・セキュリティ対応などでTCO(総保有コスト)が高くなる
・メール送信量の増加に対応できるスケーリング(※1)やキャパシティプランニング(※2)などの難しさ
※1:スケーリング
装置やソフトウェア・システムなどの性能や処理能力を、要求される処理量に合わせて増強したり縮減したりすること
※2:キャパシティプランニング
アプリケーションのニーズを満たすために必要なハードウェアおよびソフトウェアの構成を決定するプロセスのこと
まとめ
本稿では、メールサーバーの概要や仕組みなどについて、具体的に解説してきました。SMTPサーバーは、キャンペーンやマーケティング施策などに直結する部分です。しかし、構築・運用には少なからずコストがかかります。もし費用や人手などの都合から自社構築が難しいようであれば、外部サービスの活用も検討すべきかもしれません。リンクが提供するベアメールは、SMTPリレーサーバーとしてだけではなく、ベアメール自体をSMTPサーバーとして利用することも可能です。SMTPサーバーの自社運用に課題を抱えているならば、ぜひご相談ください。
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