POSレジ導入の基礎知識 導入費用を抑えるには、タブレット型POSレジがおすすめ
POSレジとは
店舗に行くと必ず置いてあるレジ(レジスター)。つい最近まではPOSレジは高価であり、大規模店舗やチェーン店舗でのみ使われていましたが、今では低価格のPOSレジも登場し、中小店舗や個人店舗でも導入が進んでいます。さらには、POSレジと同じ機能を持ったPCソフトウェアやアプリも登場し、PC、タブレット、スマートフォンをPOSレジとして利用できるようになっています。従来の単純なレジスターは、単に入力した金額が記録されるだけのものでしたが、POSレジは入力金額や商品種別をデータで記録することができ、何がいくつ売れて、いくらの売上が上がっているのかをリアルタイムで知ることができます。また、データを集計してグラフなどに可視化をすることで、売れ筋商品を探るなどの経営分析もできるようになっています。
運営企業との契約が必要になるPOSレジ
POSレジのPOSとはPoint Of Sales」の略で「販売時点」という意味です。各商品の販売時点でデータを集計できるという意味です。そのため、レジスターの他にPOSシステムも必要になります。このPOSシステムは、クラウド上のPOSレジとインターネットで結ばれ、レジのデータを常に集計しています。レジの集計データは、PCやタブレット、スマートフォンなどでいつでも見ることができるようになっています。複数のレジがある場合、複数の店舗がある場合も、リアルタイムで集計結果を見ることができます。
従来の単体のレジスターは、家電製品と同じように、家電量販店やECで購入をし、電源を入れるだけで使うことができます。一方で、POSレジはPOSシステムとの連動が必要であるため、運営企業との契約が必要になります。初期費用(POSレジの購入代金)の他に、毎月のPOSシステム利用料が必要になります。ただし、現在では競争も激しいため、初期費用を0円にする、あるいは毎月の利用料を数百円に抑えるなど、各社工夫をし、必要な費用ははどんどん下がってきています。
POSレジの機能
商品バーコードの読み取りに対応
あらかじめ商品バーコードと商品名、価格の対応データを作っておく必要がありますが、それがあれば、商品のバーコードをスキャナーで読み取ることで、商品名、販売金額の自動入力が可能になります。客数の多い店舗では、レジオペレーションの時間が短縮でき、また、スタッフによる入力ミスも激減します。
レジ締め作業が軽減できる
POSレジであれば、その日の売上の合計金額も一瞬で表示してくれるので、レジ締め作業にかかる時間が短縮されます。現金を数えて、POSレジが表示する金額と一致していればレジ締め作業は終わりです。また、キャッシュレス決済が100%になれば、現金を数える必要もなく、レジ締め作業は金額を確認するだけで終わります。経営分析ができる
POSシステムの最大のメリットが、手軽に経営分析ができることです。高度なものでなくても、売上金額を商品別にグラフ化するだけでも大きな意味があります。POSレジのデータはリアルタイムで取得されているので、最新の可視化グラフをスマートフォンからいつでもどこからでも見られるようにしていることも少なくありません。単純な売上グラフでも図形は記憶に残りやすく、経営者はさまざまな発見をすることができます。複数店舗に対応できる
現在、POSレジの集計システムはクラウド化されていることが多くなっています。そのため、複数のPOSレジ、複数の店舗の売上データを一覧できるようにしているシステムも少なくありません。個人商店であっても、支店を出した場合、移動店舗を運営している場合、イベントなどで出店を出した場合なども、瞬時に合計あるいは店舗別のデータを見ることができます。キャッシュレス決済対応など拡張が可能
POSレジはUSBポートやWi-Fiに対応しているものが多く、レシートプリンターやバーコードースキャナーなどの周辺機器を有線/無線で後付けできます。また、消費税の料率が変更になる、対応するキャッシュレス決済が増えるなどの変更があった場合も、POSレジに内蔵しているソフトウェアをアップデートしたり、周辺機器を交換/追加することで対応が可能です。POSレジの3つのタイプ
POSレジには、3つのタイプがあります。用途、目的によって適切なタイプのものを選ぶ必要があります。レジスター型POSレジ
従来から使っていたレジスターとほぼ同じ外見をしているため、店内レイアウト、使い方などの面で違和感がありません。金額入力には物理キーがあるため、レジ操作が素早く行えます。難点は初期費用、月額利用料が高額になりがちなことです。客数の多い店舗に向いています。PC型POSレジ
PCソフトウェアとして提供されるPOSレジです。条件を満たしていれば、手持ちのPCを利用することができます。金額の入力は、PCのテンキーを使って、画面をマウス操作するという形になるので、PCの操作に慣れていないと戸惑うこともあるかもしれません。PCタイプのPOSレジでは、金額を入力するのではなく、あらかじめ商品と金額の対応表を作っておき、バーコードスキャナーで商品バーコードをスキャンして自動入力するのが基本になります。PCはレジ以外にも、ごく普通のPCとして利用することができるので、独自に経営分析ソフトを使ったり、Excelで売上分析をしたい店舗経営者に向いています。また、ノートPCであればレジカウンター周りがすっきりするので、店舗の雰囲気を大事にしたい飲食店、美容室、服飾小売店などに向いています。
タブレット型POSレジ
近年、普及が目覚ましいのがタブレット型のPOSレジです。アプリを利用することで、タブレットがPOSレジになります。Wi-Fiを利用することで、店内のどこにでも持っていけるレジになります。飲食店ではテーブル会計、美容室などではソファでお待ちのお客様のところで会計をするなど、質の高い接客ができるようになります。携帯電話会社と契約しSIMを装着することで、携帯電話ネットワークを利用すれば、出店や移動販売車などでもレジが利用できるようになります。また、人気が高まっていることもありレジアプリの競争も激しく、無料で使えるものもあり、有料のものでも月額数百円台のものもたくさんあり、コストをかけずにPOSレジを導入することができます。
ただし、注意しなければならない点もあります。タッチ入力が基本になるため、レジオペレーション時間は長くなり、来店客の多い店舗には向いていません。また、レシートプリンター、スキャナー、カードリーダーなどの周辺機器は、有線/無線で接続しますが、タブレットは拡張性に限界があるため、利用できる周辺機器には制限があります。事前に、どの程度の拡張ができるのかを確かめてから導入する必要があります。
POSレジの周辺機器
POSレジはPOSソフトウェアとレジスターというハードウェアから構成されていますが、それに加えて、レシートプリンターやバーコードスキャナー、カードリーダーなどの機器が必要になります。従来のレジスターはこのような周辺機器も組み込まれた一体型が主流でした。しかし、このような一体型POSレジを使っていて、例えば新しいキャッシュレス決済に対応したい場合は、レジそのものを交換しなければならなくなります。そのため、最近では周辺機器が後付けできるPOSレジが増えてきています。例えば、最近普及をし始めているクレジットカードのコンタクトレス決済に対応するには、NFC非接触決済に対応したカードリーダーが必要となります。周辺機器が後付けできるレジスター型POSレジ、PC型POSレジ、タブレット型POSレジであれば周辺機器を交換するだけで対応ができます。
特に、キャッシュレス決済はまだまだ発展中で、これからも新しい形式のキャッシュレス決済や決済方式が登場してくることが考えられます。POSレジであれば、そのような新しいトレンドにも素早く対応していくことができます。
国や地方自治体の補助金が活用できる
POSレジは、店舗のDX(デジタルトランスフォーメーション)の要となるもので、国や自治体も積極的にPOSレジ導入を支援しています。消費税率が10%に変更になる際に、軽減税率対策補助金制度が実施されたことをご記憶の方もいらっしゃると思います。POSレジを導入、買い替えをするときはこのような制度を積極的に活用すべきです。消費税率だけではなく、「IT導入」「キャッシュレス決済対応」などの項目で、地方自治体が支援制度を実施していることがあります。POSレジ提供業者では、このような情報を常に把握をし、勧めてくれますし、面倒な申請の代行サービスを提供していることもあります。導入を考えるときは、まずはインターネットなどでPOSレジ業者を探して資料請求をし、担当者と話をしてみることをお勧めします。また、家電量販店などでも、POSレジ提供業者が展示コーナーや相談会を開催していることもあります。
まとめ
POSレジは、売上などの店舗データをリアルタイムで見ることができるPOSシステムです。従来は大型店舗、チェーン店舗でなければ導入できないほど高価でしたが、現在では個人経営の店舗でも導入できる価格になっています。POSレジには、レジスター型、PC型、タブレット型の3タイプがあり、店舗の実情に合わせて選択することができます。特にタブレット型は、POSレジ業者の競争が激しいため、無料のPOSレジアプリもあり、有償の場合でも月額数百円からと非常に低コストで導入できるようになっています。(執筆:牧野 武文氏)
図1:従来型の単体レジスターとPOSレジの違い。POSレジは大幅に機能が拡張されている。導入費用はかかるが、タブレット型POSレジでは低価格のものも増えている。
図2:POSレジの3つのタイプの違い。レジスター型は大型店舗、チェーン店舗向き。個人商店ではPC型かタブレット型を選ぶのが現実的。ただし、PC型、タブレット型を導入する場合、現金を入れるキャッシュドロワーを用意する必要がある。なお、比較内容はあくまでも一般的なもので、各社工夫をしているため、詳しくは資料を請求するなどして確認する必要がある。