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見落としがちなクラウドサービス(IaaS)選定時のチェックポイント

見落としがちなクラウドサービス(IaaS)選定時のチェックポイント

見落としがちなクラウドサービス選定のチェックポイント

クラウドサービス選びのポイントは多数存在し、ある項目を見落としたことで後々大きな問題に発展する可能性もあります。そこでグローバルベンダーと日本国内のベンダーのそれぞれにおける、見落とされがちなクラウドサービス(IaaS)選びのチェックポイントを解説していきます。

 

幅広いサービスを展開するグローバルベンダー

グローバル規模でサービスを展開し、さらに仮想サーバだけでなくさまざまなサービスを展開しているのが Amazon Web Service(AWS)やMicrosoft Azure、Google Cloud Platform(GCP)といったクラウドベンダーです。さらに昨今では、データベースで高いシェアを誇るOracleもクラウドサービスを積極的に展開しています。

これらのグローバルベンダーが提供するクラウドサービスにおいて、昨今のトレンドとなっているのがビッグデータやIoT、AIといったテクノロジーを活用したサービスの提供です。たとえばAmazon Web Service(AWS)ではAmazon EMRやAmazon Kinesisといったビッグデータ分析のためのサービスを提供しているほか、ビッグデータを蓄積できるストレージとしてもAmazon Auroraなど複数のサービスを展開しています。データウェアハウスであるAmazon Redshiftを活用している企業も少なくありません。

SaaS領域のサービスも拡充されつつあります。特にOracleは基幹系と呼ばれるシステムをクラウド化するOracle ERP CloudやOracle SCM Cloudを提供しているほか、人事システムであるOracle HR Cloud、マーケティングに活用できるOracle Customer Experience Cloudを提供しています。

ただ現時点では、これらのPaaSやSaaSだけで社内IT環境を充足させるのは現実的に厳しく、IaaSを使ったシステムの運用も必要でしょう。この際、PaaSやSaaSを提供するクラウドベンダーが提供するIaaSを利用し、同一ベンダー内のネットワークに集約することで、遅延を最小化してパフォーマンスを向上できる可能性が生まれます。またクラウド利用の状況を一元的に把握できること、問い合わせ窓口などを一元化できることも見逃せないメリットでしょう。

 

グローバルベンダーのクラウドを使うリスク

このようにメリットがある一方、海外ベンダーのクラウド利用においてはいくつか注意すべき点もあります。まずチェックしたいのは実際にクラウド環境が稼働しているデータセンターの場所で、海外のデータセンターでは日本からのアクセスにおいて大きな遅延が発生します。システムによっては、遅延がシステム利用における大きな支障になるケースもあるため、十分に注意しなければなりません。

SaaS、PaaS、IaaSの仕組み

ただグローバルベンダーのクラウドサービスでも、最近は日本のデータセンターを選択できるケースも増えています。たとえばAmazon Web Service(AWS)やMicrosoft Azure、Google Cloud Platform(GCP)は日本リージョンを開設しており、これを利用することで遅延を抑えて利用することが可能です。ただ海外リージョンに比べて価格が上昇することもあり、具体的にどの程度価格が変化するのかを見極めておくべきです。

見落とされがちですが、法的な問題が発生したときにどの法律を元に判断が行われるのか、そして管轄裁判所がどこになるのかも意識しておきたいポイントです。法的な問題が発生したとき、日本以外の国の法律で判断が行われ、さらに管轄裁判所も海外となれば、システム運用におけるリスクとなりかねません。このような観点でもサービス内容を確認すべきではないでしょうか。クラウドサービスの選定においては、コストやサービスのバリエーション、あるいは安定性やセキュリティといった側面に注目が集まりがちですが、それ以外にもさまざまなチェックポイントが存在します。1度クラウドサービスを選定して使い始めれば、別のクラウドに移行するのは大がかりなプロジェクトになる可能性もあるだけに、十分にチェックしたいところです。

PaaSやSaaSに力を入れ始めた海外ベンダーに対し、国内ベンダーはIaaSに注力し続けています。このような状況でクラウドサービスを選ぶ際、どのようなポイントに注意すべきか。具体的に解説していきます。

 

海外ベンダーと国内ベンダー、その方向性の違い

Amazon Web ServicesやGoogle Cloud Platform、Microsoft Azure、そしてOracle Cloudといったグローバルで展開されているクラウドサービスでは、PaaSやSaaS領域におけるサービス拡充が目に付きます。

たとえば初期のクラウド利用では、IaaSで提供される仮想サーバにデータベースをインストールし、そこでデータを管理するといった運用は珍しくありませんでした。しかし現在ではAmazon Web Servicesであれば「Amazon RDS」や「Amazon DynamoDB」など、Google Cloud Platformなら「Cloud Bigtable」や「Cloud Spanner」と、それぞれのサービスがデータベースサービスを提供しているため、独自にデータベースを構築することなく利用できます。このようにPaaSやSaaS領域でのサービス拡充に力を注ぐ海外ベンダーに対し、日本のベンダーはどのような戦略でクラウドサービスを展開しているのでしょうか。主な国内ベンダーである、さくらインターネットとIDCフロンティア、リンクのサービスラインナップを見てみましょう。

さくらインターネットでは「さくらのレンタルサーバー」や「さくらのVPS」、あるいは「さくらのクラウド」などといったサービスをラインナップしています。単に独自ドメインでメールサーバやWebサーバを使いたいユーザはレンタルサーバー、高い自由度を求めるユーザにはクラウドと、ニーズに応じてサービスを分けているのが特徴です。

IDCフロンティアが提供しているIaaSは「IDCFクラウド」で、仮想サーバだけでなく物理サーバを占有する「ハードウェア占有マシン」といったプランを提供しているほか、最近ではRDBであるMySQL環境をサービスとして提供する「IDCFクラウド RDB」や、データ分析に利用できるビッグデータ分析サービスなどを展開しています。IaaSを軸としつつ、PaaSも提供することで用途の幅を拡げているといった形です。

一方リンクは「ベアメタルクラウド」というサービス名称からも分かるとおり、物理サーバの提供に重点を置いてサービスを展開しています。サービスの特徴としてはサポートサービスの幅広さが挙げられ、運用業務をアウトソースできる「マネージドサービス」やサービスの操作やパラメータの設定変更などを代行する「運用アシストサービス」、既存環境からベアメタルクラウドへの移行作業を代行する「サーバ移行支援サービス」などを用意しています。運用負荷を軽減したい、あるいはクラウドの利用が初めてで積極的に協力を仰ぎたいといったケースでは、これらのサービスは魅力的でしょう。

 

システムの特性に応じてクラウドを選ぶ「マルチクラウド」の考え方

それでは、クラウドを利用してシステムを構築したいといった場合、どのようなサービスを利用すべきでしょうか。単純にサービスの種類だけを比較した場合、IaaSに加えてPaaSやSaaSもラインナップする海外ベンダーに分があるでしょう。しかしクラウドの利用方法によっては、国内ベンダーのクラウドサービスのほうが使いやすいといったケースが少なくありません。

その代表的な例として挙げられるのが、独自に構築した業務システムをクラウドに移行するなど、IaaSのみを利用する場面です。この際、たとえばデータベース部分をPaaSに置き換えるといった改修も考えられますが、移行コストに加えて改修コストも上積みされることになるため、現実的な選択肢とはならないケースがほとんどでしょう。また改修のための時間も必要となるため、クラウド移行が遅れてしまうこともデメリットです。

オンプレミスからの移行

 

もちろん、Amazon Web ServicesやGoogle Cloud PlatformなどでもIaaSは提供されています。ただ単純に価格面だけで比較すると、国内ベンダーのクラウドサービスと大きな差はない、あるいはそれよりも高いケースがあります。また国内ベンダーのようにきめ細かなサービスが受けられないケースが多いこともデメリットでしょう。

国内ベンダーによっては、単なるIaaSにとどまらず、独自性の高いサービスを打ち出していることにも注目すべきです。たとえば物理サーバを提供するリンクのベアメタルクラウドであれば、IaaSで提供される仮想サーバのようにオーバーヘッドがないため、価格対性能比が高いメリットがあるほか、物理サーバ上で複数の仮想サーバを運用するといったことも可能です。このメリットを生かし、これまで使っていたIaaS上の仮想サーバをベアメタルクラウドに集約、さらにオーバーヘッドの解消によって仮想サーバ台数を削減し、コスト削減を図るといったことを実現できます。

クラウドサービスが多様化している昨今では、すべてのシステムで同一のクラウドサービスを使うのではなく、システムの特性に合わせてクラウドサービスを使い分ける「マルチクラウド」の考え方が主流になっています。クラウドの利用を考えているのであれば、そのシステムの特性を見極め、ここで紹介したポイントなども踏まえて最適なクラウドサービスを選ぶべきではないでしょうか。