プライベートクラウドを構築するもう1つの選択肢
多くの企業がパブリッククラウドから“脱出”する理由
オンプレミスで運用していたシステムをパブリッククラウドに移行したが、思ったようなコスト削減効果が得られなかったというケースは決して珍しくありません。その理由として大きいのが、表記されているスペックから判断した事前のサイジングよりもパフォーマンスが出なかったというものです。特に共用型のIaaSで提供されている仮想サーバは、ほかのユーザと物理サーバのリソースを共有するため、サービスプランで定義されたスペックほどパフォーマンスが出ないということが起こりえます。その結果、当初の予定よりも仮想サーバの台数が増えたり、あるいは高スペックの仮想サーバを借りる必要が生じ、それがコスト増加につながるというわけです。
このような背景から、パブリッククラウドで運用していたシステムをオンプレミスに戻すという動きが広まっています。ただ個々のシステムに物理サーバを直接割り当てると、CPUやメモリといったサーバリソースを効率よく利用できないでしょう。そこでVMware vSphere、あるいはOpenStackといった仮想化基盤を利用し、プライベートクラウド環境を構築して仮想サーバ上でシステムを運用することが一般的です。
パブリッククラウドとオンプレミスのプライベートクラウドでは、仮想サーバを使うという点ではどちらも変わりません。ただ想定したパフォーマンスが得られない可能性がある共用型のパブリッククラウドとは異なり、プライベートクラウドでは物理サーバから仮想サーバまでをすべてコントロールできるため、パフォーマンスを把握しやすいメリットがあります。
オンプレミスのメリット・デメリット
ただオンプレミスの場合、物理サーバやネットワーク機器などは自社で購入し運用する必要があるため、リソースを追加する必要が生じたときに迅速に対応できない、物理サーバの故障や老朽化への対応など運用の手間がかかるといったデメリットがあるのも事実です。特にリソースの追加に迅速できてない点は、用途によっては大きなデメリットとなります。
たとえばデータ量の増加から、夜間のバッチ処理が規定時間内に終了せず、日中のオンライン処理が始められないなどといったケースです。このような事態に陥れば当然業務に影響が生じるため、早急に何らかの対策を講じなければなりません。ただ物理サーバを購入し、それをプライベートクラウドで利用できるようにセットアップするには数週間を要するため、即座に対応することは困難です。
オンプレミスとクラウドのそれぞれのメリットを両立する選択肢してのベアメタルクラウド
このようなオンプレミス環境に構築したプライベートクラウドの課題の解決策として、検討したいのがクラウド上で物理サーバを提供するサービスの活用です。こうしたサーバはベアメタルクラウドと呼ばれ、1台のサーバを専有して利用することが可能です。これに仮想化基盤ソフトウェアを組み合わせれば、自社だけのプライベートクラウド基盤として利用することができます。
オンプレミスではなく、ベアメタルクラウドを使ってプライベートクラウドを構築する最大のメリットは、物理サーバを必要なときに必要な分だけ利用できることでしょう。サービスによっても異なりますが、申し込みから数十分から数時間で物理サーバを利用可能となるため、早急にリソースを増強したいといった場面にも対応できます。また事業者によっては時間単位の課金もできるため、無駄なコストを抑制できるほか、物理サーバを資産として保有せずに使えるのも大きな利点となっています。