【2023年】「ハイタッチの型化」が重要なフェーズへ|カスタマーサクセスのこれからをツールベンダーが大胆予測!
年を追うごとに認知度が高まっているカスタマーサクセス。2023年は、カスタマーサクセスはどんな役割を求められ、どう成長していくのか。カスタマーサクセスツールベンダーであるopenpage社の代表取締役であり、『実践カスタマーサクセス BtoBサービス企業を舞台にした体験ストーリー』の著者でもある藤島誓也さんと株式会社リンクCustomerCore事業責任者の内木場健太郎が、2023年のカスタマーサクセスの動向を予測します!
変革期を迎えたSaaSのカスタマーサクセス
ところが2022年に入って、一気にリセッション(景気後退)が来ました。SaaS企業の時価総額は半分以下、ひどいところだと4分の1、5分の1にまで落ち込んでいます。そうなると資金調達ができないので、まずは売上を増やさなくていけない。その一方でコスト削減、分かりやすく言うと人件費を削らなくてはいけない。最近はセールスフォースもGAFAのような大企業も人員削減したというのが毎日のようにニュースになっていますよね。これは企業として当たり前の動きです。その影響はカスタマーサクセス部門にもすでに出ています。
カスタマーサクセス自体の役割も大きく変わりました。製品のプロダクトマネジメントでいうと、これまでは「契約を維持するためにこうした方が使い勝手がよくなる」といった要望を拾い上げていました。それが今は、「こうした方がもっと売れる、新規のお客さんはこういうものを求めている」といった売上に直接結び付くものを拾い上げるように変わりました。もう一つ大きな変化としては効率化のためにテックタッチの重要性が高まっています。会社の中のカスタマーサクセスにあてられる人件費が減っていますから、これまで人がやっていた業務をテックタッチでフォローするようになっています。これまでテックタッチというのは、会社にとってはどちらかと優先度が低いお客さまをカバーするためのものでした。その枠組みが変わって、テックタッチの重要性が高くなってきています。
こういった流れのなかでカスタマーサクセスにはハイタッチでコストを削減しながら、クロスセル、アップセルでNRRを伸ばすことが求められています。その背景には本音としてはリセッションによる人件費削減があるのですが、これを前向きに考えると、カスタマーサクセス部門が筋肉質な組織、動き方になる転換期が訪れたということだと思います。
SaaS以外の領域でも広がりを見せた2022年
その他にB to Cの領域でも、カスタマーサクセスが広がり始めています。これまでB toC企業は顧客との関係性の管理により利益の最大化を目指すCRM(Custmaer Relationship Managent)に取り組んでいました。これをカスタマーサクセスに置き換える企業が増えています。有名なところでは花王さんが「売って終わり」から「もう一度買ってもらう」を実現するために、カスタマーサクセス部をつくりました。私たちのところに相談いただくケースも増えていて、ビジネスパーソン向けの英会話やトレーニング系ジム、結婚相談といった月額サービス、サブスクリプションを提供している業種でカスタマーサクセスへの関心が高まってきました。
ずばり!2023年はカスタマーサクセスの普及元年に
2022年12月に「CSHERO」というイベントを開催して、カスタマーサクセスに取り組んでいるSaaS企業、大手企業とベンチャー企業を織り交ぜて講演をしてもらいました。各社のプレゼンを見て、カスタマーサクセス業務が合理的に設計され、言語化されているのを感じました。これからカスタマーサクセスを導入するときは、最初からこういったベストプラクティスがある状態で始めることができる。人材の面でもSaaSでカスタマーサクセスの流れを一巡した経験者が転職マーケットに出てきます。不況になりつつあるSaaSから大手企業にスカウトされてカスタマーサクセスを担当するという流れも十分に考えられます。
すでにカスタマーサクセスが広がる素地はできています。これまでカスタマーサクセス市場はSaaSが80%以上を占めていて、SIerが10%前後、その他が数%という割合でした。情報と人材が揃った2023年はカスタマーサクセスがSaaSから飛び出し一気に広がっていく、そんな年になるのではないでしょうか。
カスタマーサクセスの仕事をすべて自動化できれば嬉しいし、コストも削減できます。その鍵を握るのはAIだと考えていて、今カスタマーサクセスツールにAI機能を詰め込んでいます。カスタマーサクセスの案内内容をAIが自動要約して要点だけを伝える機能や、書いた内容をAIが音声で読み上げたり、それを1.5倍速で再生するとか、あとはカスタマーサクセスの案内内容を自動で他言語に変換する翻訳機能など、AIを活用した工数削減、人がやっていたことをAIに置き換える機能を導入しています。将来的にはAIがカスタマーサクセス業務を担ってくれる世界を目指しています。
その一方で人の価値も重要視していて、これからは人の希少性が高くなる。何に人のリソースを使うのかを真剣に考える時代になると思っています。人がやる価値のある仕事は人がやるべきだし、それ以外の業務はAIやITツール、DXツールで自動化するというのが方向に進んで行くことは間違いありません。それに対応できるツールをお届けしたいと思っています。
藤島誓也
ビズリーチにてCSM(カスタマーサクセスマネジメント)チームを立ち上げ後、2018年にopenpageを設立。
2021年に伊藤忠テクノロジーベンチャーズより1億円を資金調達。SaaSスタートアップから大手SI企業まで米国流のCS導入を支援。
CSの体制づくりのコンサルテーションから、SNSでの情報発信や大型オンラインイベントの企画・運営など、カスタマーサクセスを国内で広く啓蒙。
note:https://note.openpage.jp/
YouTube:「カスタマーサクセスTV」
Twitter:@seiya_fujishima
書籍:「実践カスタマーサクセス BtoBサービス企業を舞台にした体験ストーリー(日経BP)」
内木場健太郎
株式会社リンク
CustomerCore 事業責任者
CustomerCore 事業責任者
クリエイティブ業務からキャリアをスタート。広報宣伝部門、マーケティング部門の立ち上げ、ホスティング事業責任者を経て2019年よりカスタマーサクセス支援システム「CustomerCore」の事業開発を担当。サブスク型/ストック型ビジネスの20年以上の経験をもとに、さまざまなBtoB企業のカスタマーサクセス活動の効率化を支援している。
