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サブスクリプションマガジン 杉山拓也編集長に聞く 導入を考えている事業者必見! 知っておきたいサブスクビジネス最新事情

サブスクリプションマガジン 杉山拓也編集長に聞く 導入を考えている事業者必見! 知っておきたいサブスクビジネス最新事情

今では当たり前に聞かれるようになった“サブスク”。音楽や動画配信などのコンテンツサービスから、今では洋服や家具などさまざまな分野に広がっています。これからサブスクビジネスをスタートしようと考えている事業者に向けて、サブスクの最新事情や変化する消費者ニーズについて、サブスクリプションマガジン編集長・杉山拓也さんにうかがいました。

1.サブスクが生活に定着するまで

―いまや誰もが利用するまでになったサブスクリプション(以下サブスク)が、これほど定着したのはどうしてでしょうか?

 もともとサブスクは、英語で「定期購読」や「予約購読」を指す言葉です。以前は多くの家庭で購読していた新聞も、サブスクになります。新聞以外にも有料メルマガやオンラインサロンのような、コンテンツに対する定額課金を利用されていた方は多いのではないでしょうか。そういう意味ではサブスクというのは昔から利用されてはいたのですが、誰もが使っていたかというほど現在ほど一般的ではありませんでした。その状況を大きく変えたのが、音楽のストリーミング配信です。それまで音楽はデジタル化されてはいたものの、アルバムや曲単位で購入するものでした。それが2015年に登場した「AppleMusic」や「Spotify」によって、月額数百円で聞き放題のサービスへとがらりと変わりました。それに追随するように「Amazonプライムビデオ」や「Netflix」などの動画コンテンツのサブスクも登場したことで、若者を中心に一気に広まり、サブスクが定着しました。

さらにアメリカでは、スタートアップ企業がサブスク型のサービスを次々と始めました。その影響を受けた日本でも、従来のコンテンツを対象としたサービスだけではなく、物を対象にしたサブスクが広がりました。今では洋服や家具、家電、自家用車などあらゆる分野のビジネスが成立しています。

―確かに、音楽のサブスクを利用するようになった以降、サブスクが一気に生活に入ってきた感覚があります。今はどんなサブスクが伸びていますか?

 サブスクと言いきると異論があるかもしれませんが、化粧品や健康食品の定期便は売上がかなり伸びています。ニッチなところでは、家具のサブスクも好調です。コロナ禍で在宅ワークに切り替わったものの、家庭には仕事をする環境はない。そこでリモートワーク用のデスクやオフィスチェアーを一式揃えるとなると結構な出費がかかる。そこで情報感度の高い人を中心に「subsclife(サブスクライフ)」「CLAS(クラス)」といった家具のサブスクが爆発的な人気を呼びました。

家具と同じくコロナ禍で急激に伸びたのが、プロシェフや栄養士が自宅に料理を作りに来てくれる「SHAREDINE(シェアダイン)」です。定額コースだと月1万5,000円ほどで、2回料理を作ってくれ、しかもその日食べる料理だけでなく作り置きまでしてくれる。シェフを呼びたいという契約者だけではなく、コロナ禍で自分のお店の営業ができないシェフの登録者も増えたそうです。なかなか外食ができない中、ささやかな楽しみとして普段家庭では作らないような料理を味わえる。毎日忙しい人とっては料理の負担が減る。世の中のニーズとぴったりマッチした、とてもいいサービスだと思います。

2.サブスクで重要なのは「ONB」を考えること

―これからサブスクを始めたいと思っている会社やお店は何から始めればいいでしょうか。

 サブスク商品を考えるときに意識してほしいのが「ONB(おんぶ)」です。これは「お得=Otoku」「悩み解決=Nayami-Kaiketsu」「便利=Benri」の頭文字をとったものです。「お得」は単に値段が安いということではなく、ユーザーにお得感があるかどうかが大切です。毎月購入してくれるユーザーはお店にとっていわばVIP顧客です。ちょっとしたおまけをつける、手書きの手紙を入れるなど特別感を演出することでお客さまにお得を感じてもらいます。

「便利」については自宅に届くというだけでなく、+αが必要です。重い家具を自宅まで運搬し、組み立てまでしてくれる。しかも使わなくなったら引き取りに来てくれるとなれば、自分で購入するよりも便利だから使ってみようかとなりますよね。

そして「ONB」の中で一番重要なのが「悩みの解決」です。人がお財布を開くのは、困っていることを解決したいときです。どういう人が、どういう悩みを持っていて、その解決のためにお金をいくらまでなら出してもいいと思うかを考えることが大切です。しかも悩みというのは時流によって変わります。家具のサブスクの例で言えば、コロナ禍にダイニングテーブルが月1,000円と宣伝してもお客さまは増えなかったと思います。「テレワーク用の環境を揃えませんか」と打ち出すことで時流のニーズに合わせたからこそ売上が伸びました。

このように「ONB」の条件を満たしているかどうかが、サブスクの成功の鍵を握っています。逆に気をつけないといけないのは、安定収益だけを考えてサブスクを始めてしまうことです。単に毎月お金を吸い取られるだけになってしまうと、お客さまは財布を閉じてしまいます。自社の商品で提供できる「ONB」は何かを考え、その結果、「サブスクというビジネス形態がいいよね」という結論に至るのであれば、やってみましょうというのが基本的な考え方になります。

サブスクに必要なのはONB(オンブ)

O=お得(Otoku) / N=悩み解決(Nayami-Kaiketsu) / B=便利(Benri )

杉山さんは、オンラインで参加しました

―自社の商品がサブスクという形態にあっているかを、きちんと考え抜いて取り組むことが大事ですね。その中でも、サブスク化しやすいのはどんなビジネスでしょうか。

 サブスク化できるビジネスは、実はみなさんが思っている以上にあります。コロナ禍で時短営業を強いられた飲食店は、打開策としてUber EATSやテイクアウトのサービスを始めましたが、北九州では誰もが知っている「資さんうどん」チェーンは、毎月お店のうどんが届く定期便を始めました。地元でしか食べることができないあの味が自宅で食べられると話題になり、みるみるうちに売上を伸ばしました。

物販やコンテンツ以外の分野で今成長しているサブスクは美容室のシャンプー、ブローを何度でも利用できる「MEZON(メゾン)」です。美容室に行くことで、きれいな自分になれるという“体験”を売っている。中でも小さなお子さんがいらっしゃる女性の場合、お家に帰っても自分の髪の毛をゆっくり洗う暇さえない。でも、会社帰りに美容室に寄れば、あとは子供だけお風呂に入れればいい。そういう悩みの解決にもなっている。これだったら月2、3万円出しても惜しくないという女性はある程度の人数がいますよね。アイディア次第で、まだまだ新しいサブスクが生まれてくると思います。

―いま、お支払いの話が出てきたように、サブスクでは毎月の決済があるので、事業者としては適切な決済サービスを選定する必要があります。どんな決済サービスを導入すればいいのでしょうか?

 クレジットカードもあれば、口座振替、後払い…と決済手段は多様化しています。実際にどれが一番使われているかを調べてみても、均等な割合で利用されています。お客さんが選びたい決済方法には、すべて対応できるようにしておくのがとても重要です。クレジットカードを持っていないからその時点で諦めるとか、銀行振込が使えるなら利用しようと考えていたシニア層が離脱してしまうというのは非常にもったいないと思います。

また、これは本質的ではないですが、「継続決済を利用してもらうと継続率が高くなる」ということはあります。例えば、音楽サービスの月間利用料を携帯料金と一緒に支払っていると、ユーザーとしては音楽サービスに支払っている感覚はあまりないですよね。それと同じで、クレジットカードで継続決済にしておくような、毎月支払っている感覚があまり強くない方法というのは、継続率向上に大きい影響がありますね。今は、このメディアを運営されているリンクさんの『SmartTG』のような、店舗での支払い時にクレジットカードの継続決済に対応したサービスもあるので、継続決済のメリットを考えると、サブスク事業者はこういったサービスの導入を考えてもいいと思います。

3.未来のサブスクはどう進化するのか

―今や私達の生活にすっかり根付いたサブスクですが、今後どこまで広がっていくのでしょうか?

 2021年5月、東急電鉄が、定期券を持っているお客さまを対象に、駅レンタルサイクルや傘のシェアリングサービスが利用できるサブスクの実証実験を実施しました。この試みはすごく面白いと思っていて、今後はこういった地域や町ぐるみのサブスクが生まれるかもしれないという可能性を感じました。鉄道会社であればバスやタクシーといった乗り物だけではなく、駅ビルに入っているテナントや駅周辺の飲食店を丸ごとサブスク化できますし、大手不動産デベロッパーも町全体のサブスク化が可能かもしれません。

私も会社員なので月給は毎月一定です。ところが支出は、毎月変わる。これは不便といえば不便です。ユーザーメリットを考えると、生活の基本となる部分の支出も一定という方が生活しやすい。将来的には洋服も食費も仕事終わりに寄る飲み屋も、すべてサブスクという時代が来るかもしれません。

―ビジネスをしている側からするとサブスクのメリットはどこにありますか?

 毎月ある程度の売上が見込めるという経営的なメリットもありますが、それ以上にお客さまがVIP顧客・顔なじみになってくれるというメリットは大きいと思います。顔なじみのお客さまが毎月定額で払ってくれるというのは理想的なビジネスですよね。最近は髪を切るのにアプリから初回割引券をダウンロードして、美容室を渡り歩く人もいるそうですが、そういうお客さまは決してVIP顧客にはなりません。次の割引券が来たら、また別のお店に行ってしまう。そういう人に割引という「お得」を付けるのではなくて、本来は通い続けてくれるお客さまにこそ「お得」があるのが正しい商売ですよね。それを実現できるのがサブスクだと思います。
―やはりサブスクはビジネスに取り入れるべきなのでしょうか?

 そう思います。今回のコロナ禍でいろいろなお店が感じたと思いますが、その都度お金をいただくフロー型ビジネスは商売環境が変化するとあっという間に売上がなくなってしまう。一方、ECサイトで物を販売したり、サブスクを導入したりと、選択肢をいくつも持っていたお店の中には、コロナ禍にも関わらず売上を伸ばしたところもあります。今後も、様々な影響を受けて、不況に陥ることも有り得ます。そのときに安定収入を確保できる販売チャネルを複数持っておくというのは、大きなリスクヘッジになります。そういった面でも、来るべき時に備えてサブスクビジネスの準備は今から考えておいた方がいいと思います。

―企業を取り巻く環境の変化の見通しが難しいからこそ、サブスクビジネスの可能性やチャンスはありそうですね。最後にこれからサブスクを始めようと考えている読者の方にメッセージをお願いします。

 この記事を読んでサブスクを始めたいと思った事業者の皆さまは、自分達の会社がお客さまに提供できる「ONB」は何かを1回洗い出してほしいと思います。読んで終わりではなくて、読んでやってみる。実際にやってみると、大きな差が生まれるはずです。ぜひ、サブスク導入のポイントを押さえた取り組みを検討してみてください。

■編集部より:「SmartTG」とは
会費・月謝・サービス利用料など、店頭で行うサブスクリプション決済を行う事業者を支援するサービスです。「Smart TG」は、コールセンターで安心・安全にクレジットカード決済をおこなうことができる「Pay TG」を利用しているお客さまの声など、多くの要望を多く取り入れて開発しました。店頭でクレジットカードを登録すれば、指定した日付から継続課金が可能で、既存の会員管理システムとの連携もスムーズ。簡単操作でサブスクリプション決済を実現する、それが「Smart TG」です。

詳しくはこちら:https://pcireadycloud.com/smarttg/

サブスクリプションマガジン編集長<br>
杉山拓也

サブスクリプションマガジン編集長
杉山拓也

大学卒業後、日立システムズに入社。主に銀行系基幹システムの技術営業。入社後2年連続社長賞受賞。その後ベンチャー企業新規事業部長などを経て、スタートアップ設立。3年でバイアウトを経験し、テモナ株式会社へ入社。
現在はサブスクストア事業部 マーケティンググループ マネージャー兼サブスクリプションマガジン編集長を務める。主なメディア出演は、ワールドビジネスサテライト、フジテレビ「Live News it!」、日本商工会議所機関誌、各種業界誌等、その他特許庁など講演多数。