DXとは何か?定義やIT化との違い、コールセンターにおける取り組みも解説
近年、DXという言葉が普及し、多くの企業が推進していますが、そもそもどのような取り組みなのでしょうか。DXを進めるためには、定義や目指すものについて理解し、正しく目標を設定することが大切です。
この記事では、DXの定義やIT化との違い、導入が進んでいる業界に加え、とくにコールセンターにおける取り組みについて解説します。
1. DXとは
DXの定義
経済産業省では、DX(デジタルトランスフォーメーション)について以下のように定義しています。
「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること。」
DX推進ガイドライン※1 より引用
この定義にあるとおり、単にデータとデジタル技術を用いただけではDXを実践したとはいえず、それによって顧客や社会が求める形にビジネスと企業のあり方を変え、競争力を高めることがポイントになっています。
DXとIT化の違い
DXは、従来からあった「IT化」の延長であると誤解されがちです。
さまざまな場面でIT化が叫ばれていた当時、その目的は一般的に事務作業を中心とした既存業務の効率化にありました。一方でDXは上記の定義のとおり、企業の文化やビジネスモデルの変革、競争優位性の向上を含んだ包括的な取り組みとなっており、業務効率という範囲にとどまっていない点が大きく異なります。
DXが注目されている背景
現在、DXという言葉は一般化しましたが、その背景には経済産業省が2018年に発表した「DXレポート」※2の影響があります。
同レポートでは、DXを阻む課題として
● 既存システムが事業部門ごとに構築されており、全社で横断的なデータ活用ができず、また、過剰なカスタマイズによって複雑化・ブラックボックス化している
● 上記のような既存システムの問題解決にあたり、業務自体の見直しも求められるため、現場サイドの抵抗が大きくなる
といった点を挙げています。
また、これらの課題が克服できない場合、DXが実現できないだけでなく、2025年以降、国内で年間最大12兆円(現在の約3倍)の経済損失が生じる可能性があるとしており、「2025年の崖」と称して日本企業に対し危機感を共有する内容を伝えています。
このレポートにより、成長が停滞したり、外資系企業などの新規参入で市場が脅かされたりしている企業を中心に、DXの必要性が認識されるようになりました。
このほか、AI技術の発展や、データ分析を高度化・一般化する新しいテクノロジーの登場なども、DXが注目されるようになった一因といえるでしょう。
※1 経済産業省「デジタルトランスフォーメーションを推進するためのガイドライン(DX推進ガイドライン)」
※2 経済産業省「DXレポート ~ITシステム「2025年の崖」克服とDXの本格的な展開~」
2.【業界別】DXの取り組み例
ここでは、業界別にDXの取り組み事例について紹介します。
製造業
製造業では、AIを活用した画像認識により、検査プロセスの改善や商品仕分けの自動化などが実現しています。
例えば、検査プロセスの改善では、製造ライン上にカメラを設置し、予め良品・不良品の違いを学習させたAIに商品画像を読み込ませることで、自動的に不良品を判定します。
小売業
小売業においては、顧客接点やマーケティング活動でのDXの事例が数多く存在します。例えば、チャットボットによる問い合わせ対応の自動化、CDP(カスタマーデータプラットフォーム)・DMP(データマネジメントプラットフォーム)などの顧客データベースを用いたターゲットの詳細分析、相手ごとの趣向に応じたアプローチの実施など、デジタル技術を使った顧客との関係強化が進んでいます。
金融業
金融業では、紙の資料が大量に存在することから、AI-OCR(AIによる文字認識の技術)を用いた文書のデジタル化が行われています。また、読み取ったデータを元にRPA (ロボティック・プロセス・オートメーション)を使って後続処理を自動化するといった取り組みも普及してきました。こうした仕組みの活用により、これまで事務作業に必要だった人的リソースの大幅削減に成功しています。
3. コールセンターにおいてDXに取り組むべき理由
人件費が多く発生するコールセンターにおいても、他業界と同様にDXの取り組みが有効です。
人件費の削減効果はもちろん、業務の効率化や高度化、従業員の負担軽減、顧客満足度の向上などの効果を得ることができます。
さらに、AIを活用した音声認識に代表される技術の進歩によって、新しいオペレーションが実現できるようになってきています。今後、検討すべき施策といえるでしょう。
4. コールセンターにおける3つのDX
ここでは、コールセンター運営において効果的な3つのDXの取り組みについて解説します。
顧客対応
チャットボットやIVRなどを活用し、顧客対応をデジタル化することで、オペレーションの負担軽減や人件費の削減が期待できます。
とくに効果が出やすいのが、定型的なやり取りの自動化です。チャットボットやIVRには人手を介さずに対応ができるというメリットがありますが、複雑な問い合わせや要望に応えることが難しいという技術的な限界が存在します。一方で、顧客側は知りたい情報が得られれば自動対応でも問題ないと考えるケースも多いため、こうした仕組みを使って可能な範囲で自動化することは、顧客・企業双方にとって有益であるといえるでしょう。
オペレーション改善
センター内でのオペレーションを改善するにあたってもDXは有効です。
近年では、AI技術の発展によりコールセンターを対象とした音声認識サービスが普及しつつあります。音声認識サービスでは、通話をテキスト化して自由に検索・確認することが可能です。事後はもちろんリアルタイムで顧客とオペレーターの会話内容が表示できるほか、終話後に行う応対記録の入力を自動化・簡略化したり、会話中にNGワードがあった場合にアラートを上げたりすることができます。
データ分析
対応履歴や処理時間など、業務に関わるデータを蓄積し、ツールを使って分析することで、さまざまな業務改善が可能となります。例えば、上述した音声認識サービスを利用して通話内容をテキストで保存し、VOC(顧客の声)の抽出・分析を行い、商品・サービスの改善に役立てるといった取り組みが挙げられます。
また、過去のデータから将来のコール件数を予測し、必要な人員を割り出してシフトを組むといったことも実現できるでしょう。
5.まとめ
この記事では、DXの定義やIT化との違い、導入が進んでいる業界の例を紹介し、とくにコールセンターにおける取り組みについて解説しました。
DXにより、業務の高度化や品質向上を実現し、企業の競争力を強化することができます。中でもチャットボットや音声認識サービスなどの新技術は、コールセンターにおいて大きな効果が期待できるといえるでしょう。ぜひ活用を検討してみてください。