カスタマーサクセスのすべて 〜ステップ別に基本から応用まで学べる〜
この数年の間に、SaaS型 / サブスクリプション型のサービスが急激に増加しました。ソフトウェアサービスの提供会社だけではなく、製造業をはじめとするさまざまな業界でもサブスクリプション型のサービスを導入し始めています。
このような多くの競合他社が存在するサブスクリプション型サービス市場において、ビジネスを成功に導くためには、ユーザーに継続的に利用してもらうことが極めて重要になります。
このサービス継続利用率の向上に欠かせない活動の1つが「カスタマーサクセス」です。アメリカを中心に広まった「カスタマーサクセス」という概念は、日本でも浸透し始めており、成功しているサービス提供会社の多くが積極的に取り入れて仕組みを確立しています。
カスタマーサクセスへの取り組みを成功させることによって、以下のような効果を得ることができ、結果として収益の拡大につながります。
- LTV(Life Time Value: 顧客生涯価値)の最大化
- サービス解約率の低減
- 顧客の満足度向上
- アップセル・クロスセルによる売上増加
- 顧客の理解と製品への反映
このページでは、カスタマーサクセスを成功させるためのステップをすべて紹介しています。ぜひ参考にして実践してみてください。
目次
- ステップ1:カスタマーサクセスの概念を理解しよう!
- ステップ2:カスタマーサクセスを導入しよう!
- ステップ3:カスタマーサクセスを実践しよう!
- まとめ
ステップ1:カスタマーサクセスの概念を理解しよう!
まずは、カスタマーサクセスとはどのような取り組みのことを指すのか、その概念やメリットをしっかりと理解することから始めましょう。
カスタマーサクセスは、自社の収益を増加させる経営戦略のひとつとして近年注目されている概念です。国内ではタニタや丸井グループなどがカスタマーサクセス部門を作るなど、大企業からスタートアップまで、この取り組みが広がっています。
ステップ1では、カスタマーサクセスの基礎を学びたい人向けに、その概念やメリット、営業との違い、参考となる書籍などを解説します。
カスタマーサクセスとは
カスタマーサクセスとは、企業側から能動的な働きかけを行い、顧客と長期的に関係を構築していく活動のことです。特にサブスクリプション型のサービスにおいては、顧客の要望や課題をしっかりと理解することで継続的な契約を維持し、解約率の低減に努めなければなりません。また、解約の兆候が出た場合には、迅速な対応を取って解約を未然に防ぐ必要があります。そのためにも、顧客の成功を目的とした能動的なアプローチを行うカスタマーサクセスが欠かせないのです。
カスタマーサクセスの組織・営業との違い
カスタマーサクセスと言葉が似ていることから混同されやすいのが、カスタマーサポートです。しかし、この2つは顧客に対する姿勢において大きく異なります。カスタマーサポートは顧客からの要望を受けてから対応する受動的な姿勢であるのに対し、企業から能動的にアプローチして顧客の課題を解決するのがカスタマーサクセスです。
また、顧客に対して自らアクションを取るという点では従来の営業と混同しがちですが、契約獲得を目標とする営業と、契約後の活用をサポートしていくカスタマーサクセスでは、役割が異なります。
カスタマーサクセスの取り組みを成功させるためには、このような既存の組織が持つ機能との違いを押さえ、なぜそれらでの対応では不十分なのかを正しく理解しておくことが重要です。
カスタマーサクセスに取り組む人の必読書10選
カスタマーサクセスを深く理解するには、関連書籍の活用が手軽で効果的です。特に、通称青本と呼ばれる「カスタマーサクセス」と、赤本と呼ばれる「カスタマーサクセスとは何か」は教科書的な存在の必読書です。赤本は日本企業向けの内容なので、初心者でも理解しやすいでしょう。
また、周辺知識としてマーケティングや営業についての知識も押さえておく必要があります。「デジタル時代の基礎知識」は市場リサーチやPR、ブランディング、BtoBマーケティングなど、デジタル時代に求められるマーケティングに関する8つの領域についてわかりやすく解説している良書です。カスタマーサクセスに初めて取り組む人はもちろん、既に取り組んでいる人が改めて自分の知識・理解度を確認するのにも役立ちます。
ステップ2:カスタマーサクセスを導入しよう!
カスタマーサクセスの機能・役割を理解した後は、実際に自社の中にカスタマーサクセスの仕組みを作っていきましょう。ここでは、立ち上げステップやカスタマーサクセス組織に必要な人材、カスタマーサクセス業務を支援するツールについて詳しく解説します。
「仕組みの作り方」を学んだ上で、自社に適用してみてください。
カスタマーサクセスの立ち上げステップ
カスタマーサクセスに全社で取り組むにあたり、まずはカスタマーサクセスの役割と、営業部門やサポート部門などの関連部門との役割分担をそれぞれ明確化しましょう。社内の取り組みにおける課題が変化した際や、組織のフェーズが変わった場合にはその都度見直しが必要ですが、スタート時点でもきちんと定義をしておくことは非常に重要です。
またカスタマーサクセスでは、刻々と変わる状況や課題に対して迅速に対応をするために、より多くのPDCAを回して調整することが重要です。そして、そのために求められるのが正しいKPIの設定と可視化です。カスタマーサクセスのKPIは一般的に用いられる枠組みが存在しています。これらの指標を取り入れることは成功に直結する重要な部分ですので、適切なKPIを設定し、月次で確認するようにしましょう。
カスタマーサクセスに必要な人材
仕組みを構築した後は、最適な人材を配置しましょう。人材配置は組織の成功を左右する重要な要素です。
カスタマーサクセスの業務では、顧客と長期的な関係を構築するために、能動的なアプローチが必要です。そのため、人と関わることが好きで、高いコミュニケーション能力がある人が向いています。営業やサポート業務の経験や、顧客の課題を把握・特定し、解決策を提案するコンサルティング経験があるとさらに良いでしょう。また、データを多く扱うため、データやそのために利用するツールの取り扱いが得意な人材も必要です。
さらに、カスタマーサクセスでは自ら考えて動くことが重要になるため、新しいことに一から挑戦し、目標を持って取り組むマインドがある人は活躍が期待できます。また、カスタマーサクセスの重要性と人材の需要が高まっている中で、カスタマーサクセス業務の経験を積むことは、その後のスキルアップやキャリアアップにも有利に働きます。適任者がいる場合には、この点についても説明し、本人のモチベーションを高めることも重要です。
カスタマーサクセスの成功確率を飛躍的に高めるツール
カスタマーサクセスに初めて取り組む企業や、現在の取り組みがうまくいっていない企業におすすめなのが、カスタマーサクセスツールの活用です。
カスタマーサクセス成功のためには、顧客の状態を把握し、適切な対応で解約率を減少させることが重要なポイントです。しかし、顧客に関する大量のデータを詳細に把握するのは非常に困難であり、人の手を介することでミスが発生する可能性もあります。確認するべき複数の指標やデータの算出に時間を要すれば、それだけ課題の認識に遅れが生じ、解約につながる恐れもあるでしょう。
カスタマーサクセスツールを用いることで、顧客に関するすべてのデータを一元管理して可視化することが可能です。ダッシュボード機能により、顧客ごとの最適なアクションを自動で提案してくれるため、迅速な対応にも繋がります。また、解約の兆候が見られた場合にはアラートを通知する機能もあり、解約を未然に防ぐためにも非常に有用です。
カスタマーサクセスツールは、カスタマーサクセスの成功に役立つさまざまな機能を備えています。一定の仕組みを簡単に作り上げることが可能ですので、ぜひ導入を検討してみてください。
ステップ3:カスタマーサクセスを実践しよう!
カスタマーサクセスの機能・役割を理解し、社内での仕組みづくりと人材配置を完了したらいよいよ実践です。ただし、最初から大成功を収めようとするのではなく、小さな成功を積み重ねていくことを念頭に置いて進めてください。理想を追いかけすぎて最初から多くのことに取り組もうとすると、軌道修正に時間がかかり、失敗に繋がりやすくなります。カスタマーサクセスに成功している企業の多くは、最初から成功を収めたわけではなく、スモールスタートで導入し、試行錯誤を繰り返すことによって仕組みを確立して成功につなげています。
ここでは、カスタマーサクセスの実施ステップや代表的な失敗パターン、成功のポイントを解説します。
カスタマーサクセスの実施ステップと失敗パターン
早期に成功体験を作りあげるために、ポイントを押さえて実践しましょう。ステップ1で組織上の課題が解決されている場合、次に重要になってくるのがデータの活用とそのためのツールの導入です。
客観的で合理的な判断をするためには担当者の経験則だけでなく、データの活用が成功の鍵になります。たとえば顧客の登録アカウント数やログイン回数などを参考にすれば、顧客の利用状況を把握することが可能です。また、同じ属性を持つその他の企業における契約状況やアップセル率などを確認することで、成功体験の横展開や失敗体験の回避を行うこともできます。
これらのデータの可視化とデータを活用したアクションは、カスタマーサクセスツールを利用すれば簡単に実施することができます。
カスタマーサクセスの実践における成功ポイント
カスタマーサクセスを実施する際には、特有のプロセスや考え方を理解して、取り入れるようにしましょう。
顧客企業をハイタッチ層・ロータッチ層・テックタッチ層の3つの顧客層に分ければ、重要な顧客への対応にリソースを充て、よりROIの高い対応が可能です。
また、オンボーディングも継続利用に大きく貢献します。顧客企業の担当者のみが活用方法を理解していても、その後の顧客企業内での活用が進まなければ、結果的に解約に繋がってしまいます。このようなリスクを避けるためにも、オンボーディングによって顧客の企業全体に効果や価値を実感してもらう必要があるのです。
解約率の中でも、利益が大きく増加していることを意味するネガティブチャーンについても理解をしておきましょう。
4. まとめ
カスタマーサクセスで成功を収めるために最も重要なのが、概念や目的への正しい理解です。特に、担当者だけではなく、上層部も含めてすべての社員が、カスタマーサクセスの取り組みによって自社の利益に大きく影響が出ることを理解する必要があります。この記事や紹介した書籍を参考に、まずはカスタマーサクセスについての正しい知識を社内全体に広めていきましょう。そうすることで、仕組みの構築がスムーズに進みます。仕組み作りにおいては、正しいKPIを設定すること、データとツールの活用、そしてPDCAを回して成功体験を積み重ねていくことが重要なポイントです。
カスタマーサクセスへの理解と取り組みは、顧客理解を深め、サービスの魅力度向上にも繋がります。カスタマーサクセスによるサポートは、営業時のアピールポイントにもなるでしょう。全社で一丸となって取り組むように心がけて、成果に繋げてください。
また、顧客の状態を一元管理し、有効なアクションを素早く行うことができるカスタマーサクセスツールの活用は、業務の効率化に非常に役立ちます。ぜひ、カスタマーサクセスツールの導入を併せて検討してみてください。