カスタマーサクセスの進め方、実践編① カスタマーサクセスの課題、目標設定の見つけ方。
カスタマーサクセスを導入したいと思って調べたものの成功事例が見つからない、何をどうしたらいいのか分からない。そんなカスタマーサクセス初心者に向けて、お届けするカスタマーサクセス実践編。複数の会社でカスタマーサクセスのアドバイザリーを勤める内海京寛さんに、カスタマーサクセスの進め方を教えていただきます。第1回は、課題と目標設定の見つけ方をお聞きしました。
▼カスタマーサクセス基礎の記事はこちらからご覧ください
1. 間違ったKPIがカスタマーサクセスを失敗に導く
内木場 内海さんはこれまでさまざまな企業の新規事業開発に携わりながら、カスタマーサクセスにも関わっていらっしゃいます。最初にカスタマーサクセスに関わるようになったのは何がきっかけですか?
内海 以前所属していた会社で、事業開発部門として新規事業の立ち上げに関わっていました。その頃はカスタマーサクセスについてまったく知らない状態で、新規事業開発の一環として立ち上げたサービスを自らセールスし、売れた後はお客さまの活用支援をし、さらにはお客さまからの意見を吸い上げプロダクトの改善をするという業務を回していました。そこから転職して次に入った会社でカスタマーサクセス部門に配属されたのですが、そのときに初めてこれまで自分がやっていたことがカスタマーサクセスだったのだと気がつきました(笑)。今はちょうど自分の会社を立ち上げているところではあるのですが、カスタマーサクセスの専門家というよりも、SaaSのビジネスモデルを扱っている企業の立ち上げを一緒にやりながら、その中でカスタマーサクセスのお手伝いをしているという感じです。
内木場 内海さんには私たちで提供しているカスタマーサクセスツール「CustomerCore」の導入を検討されているお客さまの相談にも対応していただいて、本当に助かっています。実際のところカスタマーサクセスを導入したいという相談は多いですか?
内海 本当に多いですね。特にカスタマーサクセス部門を組織として立ち上げたのはいいものの、何をしたらいいのかが分からないという相談がよくあります。
現場の担当者から相談がある場合は、具体的なアクションを求められる粒度の細かいものが多いです。「既存顧客に対してカスタマーサクセスをどう組み立てていけばいいのか」という戦略の立て方や、戦略を進めて行く中で具体的な目標設定、マイルストーンを置いて動かしてほしいという要望が多いですね。
逆に経営層からの場合は、「会社として事業コンセプトや目的に沿った事業計画や事業戦略というものがすでにある状態で、カスタマーサクセス部門を置いて運用していきたいのだけどどうしたらいいのか」という相談になってきます。本当は事業計画や事業戦略を考えるときに相談をいただけると、それに紐付く形でカスタマーサクセスの組織作りや運営ができるのですが、ほとんどはどちらかというとすでに決まった後になります。そうなってくると、現場にとっては無理難題だらけの事業計画や事業戦略に基づいて目標を達成していかなくてはいけないという状況になります。
現場の立場から見ると「経営層はまったく分かっていない」となりますし、経営層は「現場は全然動かないじゃないか」と対立構造になって結局上手くいかない。私がアドバイザリーとして入っている場合は、経営層と相談して事業計画や事業戦略を現実的なものにすり合わせることが、最初の仕事になります。
内海 以前所属していた会社で、事業開発部門として新規事業の立ち上げに関わっていました。その頃はカスタマーサクセスについてまったく知らない状態で、新規事業開発の一環として立ち上げたサービスを自らセールスし、売れた後はお客さまの活用支援をし、さらにはお客さまからの意見を吸い上げプロダクトの改善をするという業務を回していました。そこから転職して次に入った会社でカスタマーサクセス部門に配属されたのですが、そのときに初めてこれまで自分がやっていたことがカスタマーサクセスだったのだと気がつきました(笑)。今はちょうど自分の会社を立ち上げているところではあるのですが、カスタマーサクセスの専門家というよりも、SaaSのビジネスモデルを扱っている企業の立ち上げを一緒にやりながら、その中でカスタマーサクセスのお手伝いをしているという感じです。
内木場 内海さんには私たちで提供しているカスタマーサクセスツール「CustomerCore」の導入を検討されているお客さまの相談にも対応していただいて、本当に助かっています。実際のところカスタマーサクセスを導入したいという相談は多いですか?
内海 本当に多いですね。特にカスタマーサクセス部門を組織として立ち上げたのはいいものの、何をしたらいいのかが分からないという相談がよくあります。
現場の担当者から相談がある場合は、具体的なアクションを求められる粒度の細かいものが多いです。「既存顧客に対してカスタマーサクセスをどう組み立てていけばいいのか」という戦略の立て方や、戦略を進めて行く中で具体的な目標設定、マイルストーンを置いて動かしてほしいという要望が多いですね。
逆に経営層からの場合は、「会社として事業コンセプトや目的に沿った事業計画や事業戦略というものがすでにある状態で、カスタマーサクセス部門を置いて運用していきたいのだけどどうしたらいいのか」という相談になってきます。本当は事業計画や事業戦略を考えるときに相談をいただけると、それに紐付く形でカスタマーサクセスの組織作りや運営ができるのですが、ほとんどはどちらかというとすでに決まった後になります。そうなってくると、現場にとっては無理難題だらけの事業計画や事業戦略に基づいて目標を達成していかなくてはいけないという状況になります。
現場の立場から見ると「経営層はまったく分かっていない」となりますし、経営層は「現場は全然動かないじゃないか」と対立構造になって結局上手くいかない。私がアドバイザリーとして入っている場合は、経営層と相談して事業計画や事業戦略を現実的なものにすり合わせることが、最初の仕事になります。
内木場 なるほど。やはり、事業全体としてカスタマーサクセスを組み立てていくことが大切ということですね。一方で、実際にはそういった、きれいな立ち上げ方ではなく、カスタマーサクセスは大切なことは間違いないから、とにかく立ち上げようと始まるケースも少なくないと思います。その場合、みなさん何から始めたらいいのか分からず最初の段階でつまずくことがあるんじゃないでしょうか。
内海 そうですね。何となく流行っているからとか、なんかよさそうだからという理由でカスタマーサクセスをやり始めるとうまくいきません。あとよくあるのはカスタマーサクセス関連の本や、いろいろなナレッジを調べてその通りにやってみたものの、調べた事例がそもそも自分たちのビジネスモデルや事業体と合っていないケースです。
内木場 カスタマーサクセスの事例というのは本当に調べても分からないことが多くて、頼りになるのは一昔前に書かれた本しかない。そこには必ずカスタマーサクセスでLTVを高めるためにKPIやKGIを決めなさいと書かれています。
内海 皆さん一応決めてはいます。でも「そのKPIは何のために設定していて、達成された先には何があるんですか」と聞いても答えられないケースがほとんどです。これではKPIとは言えません。
カスタマーサクセスの目的はLTVを最大化することですと言われています。これは間違いではないのですが、このLTVをさらに細かくしていくと、継続率を高めましょう、売り上げを高めましょう、単価を上げましょう、利益率を高めましょうという具合に分かれていきます。その優先順位や何をどう組み合わせるのかは、自社の規模やビジネスモデルで変わるはずです。
例えば、初めて立ち上げたサービスでその事業自体を成長させなきゃいけない会社と、もう既に収益モデルがあって安定している中で新規事業としてやっている会社では目指すべき方向が違うのに、それが分からずに間違ったKPIを設定しているケースも見られます。
とても極端な例ですが、カスタマーサクセスで成功している会社の事例を見て、あの会社は解約率が1%以下なので、自分たちもそれを目標としていますというケースです。ところが、同じようなサービスを提供している競合他社を見ると解約率が50%を越えている。この事業領域ではお客さまの半数が解約するというのが平均なわけです。その状況で解約率1%以下という目標設定は現実的ではないですし、あきらかに間違っていますよね。
カスタマーサクセスにはいろいろな指標があります。それを自分たちの課題や目標に合わせて取捨選択し組み合わせていくのは、知識がない方にとってはともて難しいことだと思います。私がアドバイザリーを務めている会社でも自分たちで判断しきれないので、内海さんの方で設定して導いてほしいという話が少なくありません。
これとは逆に、カスタマーサクセス導入の計画や自分たちがやろうとしていることを、すごくきれいにまとめてくれている会社もあります。この場合によくあるケースなのですが、慎重に計画を立てることに一生懸命になりすぎるあまり時間がかかりすぎてしまうパターンです。結局、計画を立てている間にチャンスを逃すことになってしまいます。
内海 そうですね。何となく流行っているからとか、なんかよさそうだからという理由でカスタマーサクセスをやり始めるとうまくいきません。あとよくあるのはカスタマーサクセス関連の本や、いろいろなナレッジを調べてその通りにやってみたものの、調べた事例がそもそも自分たちのビジネスモデルや事業体と合っていないケースです。
内木場 カスタマーサクセスの事例というのは本当に調べても分からないことが多くて、頼りになるのは一昔前に書かれた本しかない。そこには必ずカスタマーサクセスでLTVを高めるためにKPIやKGIを決めなさいと書かれています。
内海 皆さん一応決めてはいます。でも「そのKPIは何のために設定していて、達成された先には何があるんですか」と聞いても答えられないケースがほとんどです。これではKPIとは言えません。
カスタマーサクセスの目的はLTVを最大化することですと言われています。これは間違いではないのですが、このLTVをさらに細かくしていくと、継続率を高めましょう、売り上げを高めましょう、単価を上げましょう、利益率を高めましょうという具合に分かれていきます。その優先順位や何をどう組み合わせるのかは、自社の規模やビジネスモデルで変わるはずです。
例えば、初めて立ち上げたサービスでその事業自体を成長させなきゃいけない会社と、もう既に収益モデルがあって安定している中で新規事業としてやっている会社では目指すべき方向が違うのに、それが分からずに間違ったKPIを設定しているケースも見られます。
とても極端な例ですが、カスタマーサクセスで成功している会社の事例を見て、あの会社は解約率が1%以下なので、自分たちもそれを目標としていますというケースです。ところが、同じようなサービスを提供している競合他社を見ると解約率が50%を越えている。この事業領域ではお客さまの半数が解約するというのが平均なわけです。その状況で解約率1%以下という目標設定は現実的ではないですし、あきらかに間違っていますよね。
カスタマーサクセスにはいろいろな指標があります。それを自分たちの課題や目標に合わせて取捨選択し組み合わせていくのは、知識がない方にとってはともて難しいことだと思います。私がアドバイザリーを務めている会社でも自分たちで判断しきれないので、内海さんの方で設定して導いてほしいという話が少なくありません。
これとは逆に、カスタマーサクセス導入の計画や自分たちがやろうとしていることを、すごくきれいにまとめてくれている会社もあります。この場合によくあるケースなのですが、慎重に計画を立てることに一生懸命になりすぎるあまり時間がかかりすぎてしまうパターンです。結局、計画を立てている間にチャンスを逃すことになってしまいます。
内木場 カスタマーサクセスというと、目標をしっかりと立てて進めなければいけないというイメージが強すぎるのかもしれません。
内海 KPIを決めた上で、進捗状況を測るために段階を区切って達成目標を設定するというのは、カスタマーサクセスを成功させる第一歩であることは間違いありません。
ただし、それはカスタマーサクセスという経験者がいる場合の話です。もしそのKPI設定が適切なものでなければ運用ルールはできてもいい成果につながらず、チームが疲弊していくといったこともあるかもしれません。そこに時間をかけるくらいなら目の前のお客さまと向き合って、お客さまが困っていることを解決する方がはるかに成果は上がります。
内木場 やはりカスタマーサクセスを導入して、回していくためには経験者が入らないと難しい。
内海 そうですね、結局はそれが一番大切です。カスタマーサクセスの経験者が社内にいないのであれば、コンサルタントのような知見がある人や実績を残した方を頼るのが近道だと思います。ただしカスタマーサクセスは幅が広く、事業モデルが違うと見るべきKPIや重要性が違うので、解像度が粗くなってしまいます。カスタマーサクセスに知見のある人がまだまだ数少ない日本では難しいところではあるのです。自社の事業領域でカスタマーサクセスに詳しい人を探して相談をする、一緒に運用に入ってもらうというのがカスタマーサクセスを成功に導くベストな方法だと思います。
内海 KPIを決めた上で、進捗状況を測るために段階を区切って達成目標を設定するというのは、カスタマーサクセスを成功させる第一歩であることは間違いありません。
ただし、それはカスタマーサクセスという経験者がいる場合の話です。もしそのKPI設定が適切なものでなければ運用ルールはできてもいい成果につながらず、チームが疲弊していくといったこともあるかもしれません。そこに時間をかけるくらいなら目の前のお客さまと向き合って、お客さまが困っていることを解決する方がはるかに成果は上がります。
内木場 やはりカスタマーサクセスを導入して、回していくためには経験者が入らないと難しい。
内海 そうですね、結局はそれが一番大切です。カスタマーサクセスの経験者が社内にいないのであれば、コンサルタントのような知見がある人や実績を残した方を頼るのが近道だと思います。ただしカスタマーサクセスは幅が広く、事業モデルが違うと見るべきKPIや重要性が違うので、解像度が粗くなってしまいます。カスタマーサクセスに知見のある人がまだまだ数少ない日本では難しいところではあるのです。自社の事業領域でカスタマーサクセスに詳しい人を探して相談をする、一緒に運用に入ってもらうというのがカスタマーサクセスを成功に導くベストな方法だと思います。
2.課題と目標設定に有効なジャーニーマップ
内木場 私たちが提供しているカスタマーサクセスツール「CustomerCore」を導入したいというお問い合わせをいただいてお話を伺うと、お客さまは具体的な検討段階に入っていて、どんな機能がありますか、こういうことを実現できますかと質問をされます。ところが、詳しくお話を伺っていると、どうカスタマーサクセスを組み立てたらいいかわからないといった方も少なくありません。
そこで、現状を伺うと、皆さん熱心に情報収集をされて、指標はどういうところを見ていくべきか、組織の構造はどうあるべきなのかと、いろいろ試行錯誤している。本当にみなさん情報がなくて苦労されています。どれが正解なのか分からないし、誰もそれに対して回答を出してくれない。自分なりにここまでやってきて、カスタマーサクセスに詳しい人と話すのは今日が初めてですというケースが実はほとんどです。
カスタマーサクセス=ツール活用という意識をお持ちの方が多いですし、これは一側面としては正しいのですが、結局何のためにツールを入れるのか、ツールで何を効率化したいのかが不明瞭だとツールを導入しても使いこなせないですし、いい成果があがりません。結局はツールを導入する前に一旦ちょっと活動を振り返って、根本的な目的をどう設定するか、経営層も含めて改めて練り直してもらった方がいいということで、内海さんを紹介することになります(笑)。
内海 本当にそのケースがすごく多いですよね。みなさんいろいろ調べてやってきているけれども、これまでの活動を聞いてみると、ツールを使うフェーズというのはもう少し先にして運用の相談にのった方がよかったりしますね。
そこで、現状を伺うと、皆さん熱心に情報収集をされて、指標はどういうところを見ていくべきか、組織の構造はどうあるべきなのかと、いろいろ試行錯誤している。本当にみなさん情報がなくて苦労されています。どれが正解なのか分からないし、誰もそれに対して回答を出してくれない。自分なりにここまでやってきて、カスタマーサクセスに詳しい人と話すのは今日が初めてですというケースが実はほとんどです。
カスタマーサクセス=ツール活用という意識をお持ちの方が多いですし、これは一側面としては正しいのですが、結局何のためにツールを入れるのか、ツールで何を効率化したいのかが不明瞭だとツールを導入しても使いこなせないですし、いい成果があがりません。結局はツールを導入する前に一旦ちょっと活動を振り返って、根本的な目的をどう設定するか、経営層も含めて改めて練り直してもらった方がいいということで、内海さんを紹介することになります(笑)。
内海 本当にそのケースがすごく多いですよね。みなさんいろいろ調べてやってきているけれども、これまでの活動を聞いてみると、ツールを使うフェーズというのはもう少し先にして運用の相談にのった方がよかったりしますね。
内木場 そういったお客さまには、もう一度現状のフローを見直してみましょうというお話をさせていただきます。受注から契約更新までの流れでどんな活動をしているのか、お客さまとどんなコミュニケーションをとっているのか、その時見ている指標は何か、そういう視点で業務を振り返って整理をしてみると、自然とカスタマージャーニーマップみたいなものができてきます。業務を整理して俯瞰で見るためには、最初のステップとして、カスタマージャーニーマップを作るというのは効果的だと思います。
内海 カスタマージャーニーマップを作ると今やっている活動を可視化できるので、業務が整理しやすいだけではなく、それに対して、本来お客さまに届けたい価値やサービスをゴールとして考えたときに生まれるギャップが課題となります。課題を見つけるという意味でもカスタマージャーニーマップは最適です。
サービス・商品の典型的なユーザー像であるペルソナを分かっているマーケター経験者は、ジャーニーマップを作り慣れているので、マップを作ってから運用までが機動的になりやすいです。ただ、初めてジャーニーマップを作る人が取り組むと、マップを作ることが目的になってしまって、きれいに作って終わりとなることがよくあります。ジャーニーマップ作りはやった方が絶対にいいのですが、知らなすぎるとそれはそれでまたツールに踊らされてしまいます。そういう場合はジャーニーマップをいきなり作り始めるのではなく、サービス提供の初期段階、オンボーディングのフェーズでお客さまに受注後どんな体験を届けることが理想的で、それに対して今がどんな状態なのかということを考えるだけでも課題が見えてくるはずです。
内木場 これをやるだけでも結構大変な作業ですよね。
内海 ジャーニーマップは課題と自分たちの立ち位置を理解するためのものですが、作成を進めていくと改めて考え直すことも多く、かなり時間がかると思います。
そこまでやった上でもう一回ジャーニーマップを見直すと、実はもう3分の1くらい到達していますとか、まだまだ全然進んでいないのでもう一度ジャーニーマップを見直しましょうという作業ができるようになります。
内木場 カスタマーサクセスは、こういった作業に時間が必要なだけでなく、会社全体としての認識合わせなども重要になってきますので、実際はすごく時間がかかるものですよね。
内海 本当にその通りで、大体皆さん実際にかかる時間の2分の1、3分の1くらいで考えています。「半年くらいで改善されるでしょうか」という質問をいただくのですが、「これをやるには大体1、2年くらいはかかりますよ」と最初にお伝えしています。経営層の方には、カスタマーサクセスは短期的なものではなく中長期的な視野で進めるものであることも、ぜひ知っておいてほしいと思います。
サービス・商品の典型的なユーザー像であるペルソナを分かっているマーケター経験者は、ジャーニーマップを作り慣れているので、マップを作ってから運用までが機動的になりやすいです。ただ、初めてジャーニーマップを作る人が取り組むと、マップを作ることが目的になってしまって、きれいに作って終わりとなることがよくあります。ジャーニーマップ作りはやった方が絶対にいいのですが、知らなすぎるとそれはそれでまたツールに踊らされてしまいます。そういう場合はジャーニーマップをいきなり作り始めるのではなく、サービス提供の初期段階、オンボーディングのフェーズでお客さまに受注後どんな体験を届けることが理想的で、それに対して今がどんな状態なのかということを考えるだけでも課題が見えてくるはずです。
内木場 これをやるだけでも結構大変な作業ですよね。
内海 ジャーニーマップは課題と自分たちの立ち位置を理解するためのものですが、作成を進めていくと改めて考え直すことも多く、かなり時間がかると思います。
そこまでやった上でもう一回ジャーニーマップを見直すと、実はもう3分の1くらい到達していますとか、まだまだ全然進んでいないのでもう一度ジャーニーマップを見直しましょうという作業ができるようになります。
内木場 カスタマーサクセスは、こういった作業に時間が必要なだけでなく、会社全体としての認識合わせなども重要になってきますので、実際はすごく時間がかかるものですよね。
内海 本当にその通りで、大体皆さん実際にかかる時間の2分の1、3分の1くらいで考えています。「半年くらいで改善されるでしょうか」という質問をいただくのですが、「これをやるには大体1、2年くらいはかかりますよ」と最初にお伝えしています。経営層の方には、カスタマーサクセスは短期的なものではなく中長期的な視野で進めるものであることも、ぜひ知っておいてほしいと思います。
▼この記事の続きはこちらからご覧ください
内海 京寛
千葉大学大学院修了後、計3社で人事→営業→事業開発→CS Strategy/PMMを経験する。2022年4月より独立し、研究者/研究機関向けの研究開発プラットフォームの創造に向けて起業準備中。並行して複数社に対しSaaS特化で事業開発/CSアドバイザリーの支援をする。
内木場 健太郎
株式会社リンク
CustomerCore 事業責任者
クリエイティブ業務からキャリアをスタート。広報宣伝部門、マーケティング部門の立ち上げ、ホスティング事業責任者を経て2019年よりカスタマーサクセス支援システム「CustomerCore」の事業開発を担当。サブスク型/ストック型ビジネスの20年以上の経験をもとに、さまざまなBtoB企業のカスタマーサクセス活動の効率化を支援している。