カスタマーサクセスの進め方、実践編② 組織づくりとカスタマーサクセスツール活用法
カスタマーサクセス導入に向けて実践編として、前回は複数の会社でカスタマーサクセスのアドバイザリーを勤める内海京寛さんに、課題と目標設定の見つけ方をお聞きしました。続編となる今回はカスタマーサクセスを進める上でポイントとなる組織づくりとオンボーディングの進行、そしてカスタマーサクセスツールの活用法をお聞きしました。
▼前回の記事はこちらからご覧ください
1.カスタマーサクセスに必要な組織づくり
内木場:カスタマーサクセスを始めるにあたって「専門部署は必要ですか?」とよく聞かれます。カスタマーサクセスを成功に導くためには専門部署が必ず必要だと思っていますが、内海さんはどうアドバイスをしていますか?
内海:私もカスタマーサクセス専門の部署は必要だと思います。全社的にカスタマーサクセスへの投資をするという意思決定があるのであれば、最初からある程度の人数を集めチームを作って進める方が時間をぐっと短縮できます。ただし、部門を作ったからと言って、その中で完結できるものではありません。最も重要なのは顧客解像度を高めること。そのためには他部署との連携が必要です。
お客さまが商品やサービスを導入するのは、解決したい課題があるからです。その期待にすべて応えられればいいのですが、それはなかなかできません。当然、期待と現実の間にはギャップが生まれます。このギャップが少なければ少ないほどツールを使って良かったと思ってもらえるし、継続利用にもつながるわけです。
お客さまが最初にどういう期待を持って導入したのかは、セールス担当者が持っている情報です。
その情報をカスタマーサクセス部門と共有することで、サポート部門が必要なアドバイスをしたり、プロダクト部門が必要な機能を追加したりと、ギャップを埋めることができるようになります。
このように連携ができる組織にするにはセールス、マーケティング、プロダクトそれぞれの部署にいる人を流動的に異動させながらカスタマーサクセスを経験してもらうのがベストです。半年もすればお互いに理解が深まり、部署を超えてコミュニケーションが円滑になります。実際にカスタマーサクセスで成功している会社は、流動的な人事をしている会社が多いですね。
内木場:スタートアップ企業がカスタマーサクセスに積極的に取り組むことができているのも、規模がそれほど大きくないので組織をミックスしやすいからですよね。部署が違っても社員同士が同じ部屋にいたりするので、すぐにフィードバックができたりと、部署の垣根を超えて情報交換ができるというのもカスタマーサクセスを進める上で大きなメリットです。でも、それなりに規模が大きな会社が同じことができるかというと、現実問題としてなかなか難しいですよね。
内海:その場合は強い発言力のある人をカスタマーサクセス部門に入れるといいと思います。経営層クラスの人がカスタマーサクセス担当となり、号令をかけることで動きが活発になります。
カスタマーサクセスを成功させるためには、全社を挙げて取り組む必要があります。どの本にもカスタマーサクセスはトップダウンが大切と書いてあります。それは正解で、カスタマーサクセスは会社にとって事業戦略や経営戦略上の最重要課題であって、それをやらないと自分たちのビジネスには未来がないという強いメッセージをトップが伝える。そして、そこに投資をしていく強い意思表示をすることが大切です。
内海:私もカスタマーサクセス専門の部署は必要だと思います。全社的にカスタマーサクセスへの投資をするという意思決定があるのであれば、最初からある程度の人数を集めチームを作って進める方が時間をぐっと短縮できます。ただし、部門を作ったからと言って、その中で完結できるものではありません。最も重要なのは顧客解像度を高めること。そのためには他部署との連携が必要です。
お客さまが商品やサービスを導入するのは、解決したい課題があるからです。その期待にすべて応えられればいいのですが、それはなかなかできません。当然、期待と現実の間にはギャップが生まれます。このギャップが少なければ少ないほどツールを使って良かったと思ってもらえるし、継続利用にもつながるわけです。
お客さまが最初にどういう期待を持って導入したのかは、セールス担当者が持っている情報です。
その情報をカスタマーサクセス部門と共有することで、サポート部門が必要なアドバイスをしたり、プロダクト部門が必要な機能を追加したりと、ギャップを埋めることができるようになります。
このように連携ができる組織にするにはセールス、マーケティング、プロダクトそれぞれの部署にいる人を流動的に異動させながらカスタマーサクセスを経験してもらうのがベストです。半年もすればお互いに理解が深まり、部署を超えてコミュニケーションが円滑になります。実際にカスタマーサクセスで成功している会社は、流動的な人事をしている会社が多いですね。
内木場:スタートアップ企業がカスタマーサクセスに積極的に取り組むことができているのも、規模がそれほど大きくないので組織をミックスしやすいからですよね。部署が違っても社員同士が同じ部屋にいたりするので、すぐにフィードバックができたりと、部署の垣根を超えて情報交換ができるというのもカスタマーサクセスを進める上で大きなメリットです。でも、それなりに規模が大きな会社が同じことができるかというと、現実問題としてなかなか難しいですよね。
内海:その場合は強い発言力のある人をカスタマーサクセス部門に入れるといいと思います。経営層クラスの人がカスタマーサクセス担当となり、号令をかけることで動きが活発になります。
カスタマーサクセスを成功させるためには、全社を挙げて取り組む必要があります。どの本にもカスタマーサクセスはトップダウンが大切と書いてあります。それは正解で、カスタマーサクセスは会社にとって事業戦略や経営戦略上の最重要課題であって、それをやらないと自分たちのビジネスには未来がないという強いメッセージをトップが伝える。そして、そこに投資をしていく強い意思表示をすることが大切です。
2.オンボーディングをいかにクリアするか
内木場:カスタマーサクセスには大きく分けて、「オンボーディング」「アダプション」「エクスパッション」「プロダクトフィードバック」の4つの役割があります。ところが、多くの方が一番最初の「オンボーディング」でつまずいてます。オンボーディングを成功させるにはどうしたらいいのでしょうか。
内海:さきほどお客さまが商品やサービスを導入するのは解決したい課題があるからだという話をしましたが、お客さまによってそのニーズはバラバラです。商品やサービスを売るためには、お客さまのニーズに合わせてサービス設計をする必要があります。ところが、その設計自体がうまくいっていないために、お客さまのニーズと乖離しているケースが多く見受けられます。
オンボーディングのゴールをどこに設定するかも重要なポイントです。例えばツールの使い方だけが分かればいいというお客さまもいれば、成果を上げるためにはどういう使い方をしたらいいのかまで教えてほしいというお客さまもいます。後者のお客さまに対して、「一通り機能ができるようになったのでここでオンボーディング終了です」と言ってもおそらく納得してもらえませんよね。オンボーディングを成功に導くには、しっかりとお客さまと向き合いニーズに合わせた対応をしていくしかありません。
オンボーディングの場合、お客さまがその商品やサービスを使ってやりたいことはある程度限られているので、実はパターン化しやすいフェーズです。再現性のある型を見つけることさえできれば、あとはそれを繰り返していけばOKです。それが見つかるまでは、ほかのフェーズのことは考えず、オンボーディングに注力してほしいと思います。
内海:さきほどお客さまが商品やサービスを導入するのは解決したい課題があるからだという話をしましたが、お客さまによってそのニーズはバラバラです。商品やサービスを売るためには、お客さまのニーズに合わせてサービス設計をする必要があります。ところが、その設計自体がうまくいっていないために、お客さまのニーズと乖離しているケースが多く見受けられます。
オンボーディングのゴールをどこに設定するかも重要なポイントです。例えばツールの使い方だけが分かればいいというお客さまもいれば、成果を上げるためにはどういう使い方をしたらいいのかまで教えてほしいというお客さまもいます。後者のお客さまに対して、「一通り機能ができるようになったのでここでオンボーディング終了です」と言ってもおそらく納得してもらえませんよね。オンボーディングを成功に導くには、しっかりとお客さまと向き合いニーズに合わせた対応をしていくしかありません。
オンボーディングの場合、お客さまがその商品やサービスを使ってやりたいことはある程度限られているので、実はパターン化しやすいフェーズです。再現性のある型を見つけることさえできれば、あとはそれを繰り返していけばOKです。それが見つかるまでは、ほかのフェーズのことは考えず、オンボーディングに注力してほしいと思います。
3.初期段階からツールの検討を始める
内海:オンボーディングが終わると次はアダプションのフェーズに入ります。ある程度ゴールが見えているオンボーディングとは違って、アダプションでは、お客さまによって解決したいこと、期待しているものが変わってくるので、再現性を持たせるのはかなり難しくなります。そこで必要になるのがデータです。データからお客さまの状況を分析し、変化を読み解く。根拠となるデータに基づいてお客さまを成功へと導くアダプションはカスタマーサクセスの本質とも言えます。
お客さまに電話をして「ちょっと打ち合わせのお時間をいただいてもいいですか」と言うよりも、「先月のアクセスデータを見ていたら大きく変わっていたので、何か運用でお困りのことがありますか?」と伝えると「実は困ったことがあって、ちょうど相談しようと思っていたんだ……」となっていくわけです。
ただ、顧客が増えればそれだけデータも膨大になってきます。そこで活用したいのがカスタマーサクセスツールです。
内木場:これまでスプレッドシートで管理していたけど管理がしきれなくなった、作業があまりに増えて人手が足りなくなった。これがカスタマーサクセスツール導入きっかけの第一歩です。あとは、ツールを使うことで作業を効率化したいという要望もよくあります。実際に『CustomerCore』を導入されたお客さまから、「月に1回しかできなかったお客さまへのアプローチが、3日に1回できるようになりました」というような業務の質が上がったという声をいただくことも少なくありません。
内海:それが通常のツールの使い方なのですが、もう一つお勧めの活用方法があります。それは、会社としてカスタマーサクセスの方向性が決まった初期段階で、どんなツールがあるのかを比較検討することです。というのもツールというのは、カスタマーサクセスの課題を解決するためのものですから、実際にツールを使ってみると、自分たちの未来、この先に起こりうる課題や問題を知ることができます。これってすごく大きなメリットなんですけど、ほとんどの人ができていません。私としては本を読むよりも、カスタマーサクセスツールをいろいろ見た方がはるかに有益だと思っています。この機会を逃すのは本当にもったいないです!
お客さまに電話をして「ちょっと打ち合わせのお時間をいただいてもいいですか」と言うよりも、「先月のアクセスデータを見ていたら大きく変わっていたので、何か運用でお困りのことがありますか?」と伝えると「実は困ったことがあって、ちょうど相談しようと思っていたんだ……」となっていくわけです。
ただ、顧客が増えればそれだけデータも膨大になってきます。そこで活用したいのがカスタマーサクセスツールです。
内木場:これまでスプレッドシートで管理していたけど管理がしきれなくなった、作業があまりに増えて人手が足りなくなった。これがカスタマーサクセスツール導入きっかけの第一歩です。あとは、ツールを使うことで作業を効率化したいという要望もよくあります。実際に『CustomerCore』を導入されたお客さまから、「月に1回しかできなかったお客さまへのアプローチが、3日に1回できるようになりました」というような業務の質が上がったという声をいただくことも少なくありません。
内海:それが通常のツールの使い方なのですが、もう一つお勧めの活用方法があります。それは、会社としてカスタマーサクセスの方向性が決まった初期段階で、どんなツールがあるのかを比較検討することです。というのもツールというのは、カスタマーサクセスの課題を解決するためのものですから、実際にツールを使ってみると、自分たちの未来、この先に起こりうる課題や問題を知ることができます。これってすごく大きなメリットなんですけど、ほとんどの人ができていません。私としては本を読むよりも、カスタマーサクセスツールをいろいろ見た方がはるかに有益だと思っています。この機会を逃すのは本当にもったいないです!
内木場:確かにツールにはカスタマーサクセスの最新の情報が詰まっているので、大いに参考になると思います。初期段階でのツール検討に加え、私は「同時にぜひデータ管理の見直しを!」と声を大にして言いたいですね。
先ほど内海さんがおっしゃったように、カスタマーサクセスはデータ活用が肝になっています。通常は売上を見て大口のお客さま、いわゆるハイタッチ層を優先することになります。この層を守ることは間違っていないのですがハイタッチ層は期待値も高いので、それを上回る努力をするのはとても難しい。それよりも売上は低くても行動に変化のあったお客さまに「こういうデータの変化が起きているんですけどどうです?何か困っていませんか」と連絡をすると「こんなにやってくれるの! すごいサービスだね」とロイヤリティがぐっと上がる。結果、契約の継続だけでなく、BtoBマーケティングでとても重要な「口コミ」が広がり、それが新規のお客さまへとつながり、全体のLTVが上がっていきます。
カスタマーサクセスを成功に導くには、データがすべてといっても過言ではありません。多くお客さまは『CustomerCore』へのデータ投入をきっかけに、現在の社内の顧客データの状況を改めて確認するのですが、顧客の基本データは基幹システム、一部はCRMにあり、行動データは別の専用システムに入っているというように、多くの顧客データは複数のシステムで別々に管理されているケースが普通だと思います。
会社の規模にもよりますが、さまざまな事業データを整理し、一元化する基盤を構築しようと思ったら、数年のスパンが必要になるはずです。ということは今すぐカスタマーサクセスを導入しようとしても、データ管理の基盤づくりに数年待たなくてはいけないということになってしまいます。そうならないためにも、来るべき未来のために、ツールをうまく活用してカスタマーサクセスに必要なデータがすぐに取り出せる環境の整備、管理の見直しは、今すぐにでも始めてほしいと思います。
最後にカスタマーサクセスを導入しようと今、がんばっている方にメッセージをお願いします。
内海:カスタマーサクセスが今後ますます重要になってくることは間違いありません。実践編①でもお話しましたが、カスタマーサクセスは自分たちだけでがんばろうとしても限界があります。コンサルタントの方やカスタマーサクセスツールのベンダーさんにアドバイスを求めるのが一番の近道です。分からないことがあったら一度ぜひ相談してみてください。きっと新しい道が開けるはずです。
先ほど内海さんがおっしゃったように、カスタマーサクセスはデータ活用が肝になっています。通常は売上を見て大口のお客さま、いわゆるハイタッチ層を優先することになります。この層を守ることは間違っていないのですがハイタッチ層は期待値も高いので、それを上回る努力をするのはとても難しい。それよりも売上は低くても行動に変化のあったお客さまに「こういうデータの変化が起きているんですけどどうです?何か困っていませんか」と連絡をすると「こんなにやってくれるの! すごいサービスだね」とロイヤリティがぐっと上がる。結果、契約の継続だけでなく、BtoBマーケティングでとても重要な「口コミ」が広がり、それが新規のお客さまへとつながり、全体のLTVが上がっていきます。
カスタマーサクセスを成功に導くには、データがすべてといっても過言ではありません。多くお客さまは『CustomerCore』へのデータ投入をきっかけに、現在の社内の顧客データの状況を改めて確認するのですが、顧客の基本データは基幹システム、一部はCRMにあり、行動データは別の専用システムに入っているというように、多くの顧客データは複数のシステムで別々に管理されているケースが普通だと思います。
会社の規模にもよりますが、さまざまな事業データを整理し、一元化する基盤を構築しようと思ったら、数年のスパンが必要になるはずです。ということは今すぐカスタマーサクセスを導入しようとしても、データ管理の基盤づくりに数年待たなくてはいけないということになってしまいます。そうならないためにも、来るべき未来のために、ツールをうまく活用してカスタマーサクセスに必要なデータがすぐに取り出せる環境の整備、管理の見直しは、今すぐにでも始めてほしいと思います。
最後にカスタマーサクセスを導入しようと今、がんばっている方にメッセージをお願いします。
内海:カスタマーサクセスが今後ますます重要になってくることは間違いありません。実践編①でもお話しましたが、カスタマーサクセスは自分たちだけでがんばろうとしても限界があります。コンサルタントの方やカスタマーサクセスツールのベンダーさんにアドバイスを求めるのが一番の近道です。分からないことがあったら一度ぜひ相談してみてください。きっと新しい道が開けるはずです。
内海 京寛
千葉大学大学院修了後、計3社で人事→営業→事業開発→CS Strategy/PMMを経験する。2022年4月より独立し、研究者/研究機関向けの研究開発プラットフォームの創造に向けて起業準備中。並行して複数社に対しSaaS特化で事業開発/CSアドバイザリーの支援をする。
内木場 健太郎
株式会社リンク
CustomerCore 事業責任者
クリエイティブ業務からキャリアをスタート。広報宣伝部門、マーケティング部門の立ち上げ、ホスティング事業責任者を経て2019年よりカスタマーサクセス支援システム「CustomerCore」の事業開発を担当。サブスク型/ストック型ビジネスの20年以上の経験をもとに、さまざまなBtoB企業のカスタマーサクセス活動の効率化を支援している。