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ECサイトのプロフェッショナルに聞いた|メールなんてもう古いは、大間違い。成功するECサイトのメール活用術とは

ECサイトのプロフェッショナルに聞いた|メールなんてもう古いは、大間違い。成功するECサイトのメール活用術とは

ここ数年、ECサイトの売上アップや集客に、Twitter、Instagram、LINEなど、様々なツールが活用されるようになりました。それと同時に「メールはもう古い」とか「メールはもう効果がない」といった声も聞こえてきます。果たして本当にメールはもう役に立たないツールになってしまったのか。これまで大手ECサイト運営に関わってきたネクトラス株式会社 代表取締役中島郁さんへ、ECサイトにおけるメール事情についてお聞きしました。

1. メールはまだまだ圧倒的に効果の高いツール

―ここ数年、SNSが普及して、メール以外のツールを活用するECサイトも増えてきました。中島さんはECサイトにおけるメールについてどのように感じていますか?

 7、8年くらい前からECサイトの販促で、LINEやTwitterをはじめとするSNSが使われるようになり、メルマガはもう古いとか、効果がないという声を耳にするようになりました。確かに、今はECサイトに限らず、ありとあらゆる業者からメールが届くようになったために、メルマガが埋もれてしまったり、読まずにゴミ箱に捨ててしまう人も増えました。ただ、それを差し引いても他のツールと比較して、圧倒的に効果が高い事実は変わりません。
 メルマガは、ECサイトや広告と同様にとても強力なタッチポイント(顧客との接点)です。それもSNSや広告などと違い、ローコストで発信でき、自社でコントロールできる「自前のメディア」です。正しく活用すればまだまだ有効なツールであることは間違いありません。
 メルマガの話をすると「お客さまに嫌がられるからなるべく送らないようにしています」というEC事業者もいるようですが、もしメルマガが迷惑になるのであれば、そのECサイトの情報自体がお客さまに必要とされていないことになります。メルマガは送り付けるものではなくて、そのECサイトの情報がほしいと、わざわざ登録してくれたお客さまにお届けしなくてはいけないものです。
 それなのにお客さまが迷惑だと感じるようになってしまったのは、メールというツールが古いとか、効果が低いのではなく、送っているメルマガに問題があるからです。

―メールというツールではなく、送っているメルマガがダメということですね。お客さまに読んでもらえるメルマガにするためにはどこに気をつければいいのでしょうか?

 メルマガの基本は、“送るべき内容”を“送るべきタイミング“で“送るべき人”に送ることです。
 “送るべき内容”とは、ECサイトのコンテンツ更新や商品の入荷のお知らせ、セールやキャンペーンなどのお得な情報といった、お客さまのためになる内容です。メルマガを月に20回送るなど回数を決めてしまうと、送ることが目的になってしまい、お客さまの役に立たないものになってしまいます。“お客さまのために役立つ情報を届ける”という視点を忘れないようにしましょう。
 次の“送るべきタイミング”ですが、いつ送られてくるか分からない状態よりも、何曜日の何時と定例化した方が実は読まれる率が高くなります。では“送るべきタイミング“をいつに設定するのか、それは「ビジネスの周期」と「読まれやすい時間帯を狙う」のがポイントとなります。
 週末に売上をとるために新商品の更新やキャンペーン情報は必ず金曜日に更新するなど、各ECサイトによって「ビジネスの周期」は決まっているはずです。ECサイトの情報を送るメルマガも、当然このビジネスの周期に合わせて送ります。
 そして「読まれやすい時間帯を狙う」は、メルマガの基本である“送るべき人”と深く関係します。EC担当者に「いつメルマガを送っているの?」と聞くと、大体「朝にメルマガを送るほうが読まれやすいと聞いたので、そうしています」という答えが返ってきます。確かに朝送ると読まれる率は高いですが、それは通勤の移動時間やオフィスに着いてすぐのタイミングでメールをチェックする人が多いからですね。しかし、自社のお客さまはどうでしょうか? 本来は自社のターゲットであるお客さまにとって一番見やすい時間帯を考えて送るのが正解です。他の会社がやっているからではなく、本当にこの時間で正しいのか。午前中、午後、帰宅途中、帰宅後など、お客さまがどういう動きをしているかを想像し、それに合わせて時間帯を決めるべきです。

―メルマガの内容で気をつけなくてはいけないポイントはありますか?

 件名は一目で分かりやすくするとか、文章はなるべく短く、読みやすくするなど、細かい点はありますが、一番注意してほしいのがリンク切れです。リンク切れを誤字脱字レベルで軽く考えている人が多いですが、これは大きな間違いです。届いたメルマガのリンクをクリックしたら、商品が見つかりませんと画面で表示されるというのは、実店舗では商品の棚が倒れているのと同じです。こんなお店で誰も買い物しないですよね。こんなメルマガは当然誰も読まなくなりますし、解除の嵐となります。リンク切れはミスだけではなく、商品やコンテンツのタイミングを合わせるという運用にかかわります。
 こう話していくと、実はどれもすごく基本的なことですが、この基本をできていないEC事業者が本当に多いです。この基本を徹底するだけでも、効果は上がってくると思います。

2.実は「届かない」が頻発しているメール

―メールというツール自体を上手に活用するために、中島さんがEC事業者さんに普段からアドバイスしていることがあったら教えてください。

 最近便利になりすぎていて、みなさんメールは送信したらすぐに届くものと思っていますが、インターネットの特性上、厳密にはリアルタイムで届くわけではありません。また、大量のメールを一気に送ると、プロバイダやメールサービスがスパムメールと判断し、迷惑メールフォルダに振り分けられたり、受信をブロックされたりしてしまいます。メルマガ配信ツールを活用しているECサイトは多いと思いますが、スパムと判定されないように、ほとんどのツールは大量のメールを分割してわざとゆっくり送っているのです。さきほど話したメールを送るタイミングにも関係しますが、メールは何時何分とまでピンポイントでお客さまに届けることはできません。ある程度のタイムラグが発生することを覚えておいてほしいですね。
 あともう一つメールで知っておいてほしいのは、これも意外とみなさん気がついていないのですが、送信したメールが必ず届くとは限らないということです。商品を注文していただいたお客さまに対して、システムから自動で送信する「注文確認メール」や「出荷メール」などの、いわゆる「トランザクションメール」でも「メールが届かない」というトラブルは多く発生しています
 ECサイトのお客さま相談室へのお問い合わせで一番多いのは、商品情報についてですが、実はその次に多いのが配送状況の確認です。どうしてわざわざ問い合わせるのかというと、配送ステータスのメールが届いていないことがあるからです。お客さまに届けなくてはいけない情報が未達になっていれば、トラブルになるのは当たり前ですよね。
―トランザクションメールはお客さまにとって重要なメールなのに、どうして届かないトラブルが起きているのでしょうか。

 EC事業者の多くは、メルマガについては外部のメルマガ配信ツールを使って送信しています。ところがトランザクションメールは、ECサイトのシステムに組み込まれているメールサーバーから送っているケースが多いです。以前はそれで問題はなかったのですが、ECサイトでの買い物が当たり前になり、会員登録や商品の購入者が大幅に増えました。そうなると送信されるメールの量も増え、スパムメールと判断されて受信側サーバーでブロックされたり、迷惑メールフォルダに振り分けられたりする可能性が上がってきてしまうのです。
 また、プロバイダやメールサービス側の迷惑メール対策も、どんどん厳しくなっているので、以前は届いたのに突然メールが届かなくなるということもあります。最近はエラーメッセージを返さない仕組みになっているプロバイダや携帯キャリアも増えているので、その場合、メールが届いていないことを送信側では把握できません。

―EC事業者はメールが届かないことに気がついていないのでしょうか。分かっていたら、当然対策をするはずですよね。

 どれくらい届いているかを示す「到達率」についてはチェックできるので、担当者は当然知っているはずです。そこでシステム部門に相談すると「メールはこのくらいの割合でエラーが起こるのが当たり前です。お金をかければできますけど、それでもやりますか?」と言われて、とりあえずそのまま放置していることが多いのではないでしょうか。実はメールサーバーを作ること自体は技術的には難しくありません。でも、メールが届かない原因を突き止めてメールを届くようにするのはまったく別物で、メールに詳しい専門の事業者にしかできないと思います。
 EC事業者はどうしても新しい技術に目がいきがちで、そちらの優先順位を高く考える傾向があります。ですが、それだけではダメで、私はいつもコンサルティング先で「今やっているベースをしっかり底上げしていきましょう」という話をしています。トランザクションメールはまさにECサイトにとってベースとなる機能ですので、当然対策をするべきだと思います。
 例えばリンクさんのベアメールの「迷惑メールスコアリング」を使えば、メールが届かない原因を調べられますし、「メールリレー」は高い到達率でメールを届けられるようになります。「メールリレー」は1時間あたり、500万通のメールを送ることができるという話を聞いて、あまりのパフォーマンスの高さに驚いたんですけど、メールのプロに任せることで改善できるのであれば、どんどん活用すべきだと思いますね。
 こういう話をすると、メールの到達率を改善しても売上には関係ないよねという人が出てくることがあります。それは大きな間違いで、トランザクションメールは売上にも深く関係しています
 例えばECサイトの会員登録は、まずサイト上でメールアドレスを登録してもらい、そのアドレスにメールで本登録のURLを知らせるシステムになっているケースが多いと思います。このメールもトランザクションメールです。会員登録というのは、そのECサイトで買いたい物があるとか、すでに購入する商品を選んで買い物カゴに入れているときにしかしないものです。それなのに肝心の本会員登録メールが届くのが遅かったり、来なかったりしたら、もうそのECサイトで買い物しようとは思わないですよね。確実に会員登録メールが届くようにするだけで、これまで逃していたお客さまを取り込めるようになります。
 あとは「カゴ落ちメール」と言われるような、買い物カゴに入れたのに購入まで進まなかったお客さまへのフォローメールや、在庫が少なくなったことをお知らせするアラートメールなども効果的です。注文確認や発送通知なども含め、こうしたトランザクションメールは基本的にメルマガよりも開封率が高いので、プロモーションの内容も加えるようにすると非常に効果が高いです。
 また、重要なトランザクションメールが届かないことが頻発すると、当然お客さま相談室への問い合わせは増えてしまいます。その対応費用を考えると、対策に多少のお金をかけてもトータルで考えるとコスト削減につながる会社もあると思います。

3. ECサイトを成長させるためにメールをどう使う?

―今回はいろいろとメールについて教えていただきましたが、メールを活用する上で一番大切なことは何ですか。

 私はアパレル関係に関わることが多いのでその経験で言うと、新しい店長が異動してきたらお店の雰囲気がよくなって、売上が伸びることが本当によくあるんです。何が変わったのかとお店に見にいくと、その店長がこまめに商品を並べ替えたり、ちょっと時間があると掃除をしたり、スタッフにちゃんと「いらっしゃいませ」と言うように指導していたりとか、基本を徹底している。実はそういうことが大事なんです。
 最初にECサイトやメルマガはお客さまとのタッチポイントという話をしましたけど、お店と同じように、ちょっとしたこと、ちゃんと考えられたコンテンツや文章というのはお客さまに伝わるんですよね。逆に適当にやっていると見透かされます。    
 メルマガであれば、“送るべき内容”を“送るべきタイミング“で“送るべき人”に送るという、基本を徹底することが大切ですし、せっかく商品を購入していただいたお客さまに不快な思いをさせないためにも、トランザクションメールを確実に届けるといったベースの部分をしっかりしてほしいと思います。

―最後に今、ECサイトでメールを担当している方にメッセージをお願いします。

 ECサイトにとってメールというのは非常に重要ですし、正しく活用すればもっと効果が上がるツールであることは間違いありません。メールに不達があってもそのままの状態にしているのは、メールが役に立たないとか、別に届かなくてもいいやと考えているからだと思うんです。本当にお客さまに読んでほしいと思える、お客さまが必要とするようなメルマガを作っていたら、メールが届かなかったり、迷惑メール扱いになっている状態をもったいないと感じるはずです。ぜひ、そういう気持ちになるようにがんばって取り組んでほしいです。

メールリレー | メールの到達率を改善するメールリレーサービス ベアメール

メールリレー | メールの到達率を改善するメールリレーサービス ベアメール

「ベアメール」は、株式会社リンクが提供するクラウド型メールリレーサービスです。独自の配信技術で届きにくい携帯キャリアに対してメールの到達率を改善します。メール配信に必要となるIPレピュテーション管理もベアメール側で行いますので、利用者はメール配信の運用を意識することなく利用することができます。

ネクトラス株式会社 代表取締役<br>
中島 郁(なかしま かおる)

ネクトラス株式会社 代表取締役
中島 郁(なかしま かおる)

これまでにベンチャー、外資、老舗にて、事業立上げ、急成長ビジネスの責任者を歴任。小売、EC、インターネット、メディア、デジタルを含むサービス業などさまざまな事業に関わる。トイザらスではマーケティング部門立上げ、EC専業法人を設立。ジュピターショップチャンネル執行役員(EC、テレビ編成及びマーケティング)本部長を経て、世界最大のECサービス企業GSI Commerce(eBay Enterprise)アジア太平洋担当副社長兼日本法人社長に就任する。三越伊勢丹では役員兼WEB事業部長として、EC・情報メディア等の構築、オムニチャンネル導入を担当した。現在はネクトラス株式会社 代表取締役として、ベンチャーから大企業までの戦略、マーケティング、EC/オムニチャネル、デジタルなどのコンサルティング、アドバイス、顧問、業務支援に携わっている。