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アフターコロナで変わるメールマーケティングのポイントとは? デジタルマーケ×メール配信技術のプロが語る2022年予測

アフターコロナで変わるメールマーケティングのポイントとは? デジタルマーケ×メール配信技術のプロが語る2022年予測

コロナ禍以降、企業のマーケティング活動がより一層デジタルに集中する中で、ますますメールマーケティングの重要性が高まっています。 メールを確実に届けるための支援サービスの企画・開発を担当する株式会社リンクの菱沼憲司と、デジタルマーケティング全般のコンサルを行い、契約・売上獲得につなげるメール活用術に詳しい、株式会社ウィルゲートのCOO 吉岡諒さんに2021年のメール事情と2022年のメールマーケティングのポイントについて語ってもらいます。

1.コロナ禍でメールマーケティングの重要性が高まった2021年

菱沼 吉岡さんはウィルゲートのCOOとして、WebやSNSを活用するデジタルマーケティングに力を入れていらっしゃいます。今日はその中でも、メールマーケティングについていろいろとお話をお伺いできればと思っています。2021年はコロナ禍で世の中の動きが大きく変わった1年でした。ウィルゲートさんにとってはどんな年だったでしょうか。

吉岡 ウィルゲートはコロナ禍以降、従来のアナログ営業からオンライン営業にシフトするためにSNS・SEMINAR(セミナー)・SEOの3つの「S」に注力してきました。この1年間のセールスリードの数が右肩上がりになっていますので、オンライン営業にシフトするという目標は達成できたと考えています。

 この3つの「S」の中で、メールマーケティングは主にセミナーの参加者を募集するのに活用しています。当社の場合、セミナーはSQL(※)を獲得する大切な入口となっています。コロナ禍前はリアルイベントとしてウィルゲートオフィスにて月3回開催し、約100人の方に参加いただいていました。それが昨年3月の緊急事態宣言発令後、集客ができなくなりオンラインセミナーに切り替えたところ、初月から867人の集客ができました。それ以降はだいたい毎月1,400人前後、年間約1万6,000人に参加してもらっています。

 この集客の内訳ですが、メールマーケティングが59%、私個人のFacebookやTwitterといったSNSが13%、プレスリリースが6%、SEOでたどり着いた人が22%という結果なので、メールマーケティングが非常に上手くいっているなという実感があります。その中からどれくらいが受注につながっているのかというと、参加者の70人に1人がSQL化しています。

※SQL:Sales Qualified Lead。マーケティング活動の中でインサイドセールスや営業がフォローし、案件化の見極めを行う見込み客のこと。

吉岡さんは、オンラインで参加しました

菱沼 メールからの集客が半分以上を占めているのですね。開封率というのはどれくらいになるのでしょうか。

吉岡 開封率は大体50%くらいになります。過去の参加者獲得の最高記録は3,000人にメールを送付して、50%なので1,500通の開封。そこから200名の参加申し込みという脅威のコンバージョンレートを達成したこともあります。

菱沼 開封率がとても高いですね。さらに、計算すると、開封した人の内13%が参加申し込みをしているというのはすごい数字だと思います。これだけの成果を上げるためにどんな取り組みをしていますか?

吉岡 一番大切にしているのは送り先を絞り込むことです。ウィルゲートには約8万件のハウスリストがあります。お客さまの業種、社員数、役職などを考慮した上で毎回セミナー毎に送る相手を定めています。たとえば、BtoBのメールマーケティングに関する見込み顧客を獲得したいのであれば、「マーケティングオートメーション系のタグをウェブサイトに設置している企業で、少なくとも営業マンが5人以上いてほしいので、社員数30人以上の会社にしよう。その中でも決裁権を持っている人に届けたいので、役職のある人に限定する」といった具合に、ハウスリストの中からその都度ターゲットを抽出して、メールを送っています。

 ウィルゲートの場合、メール配信の頻度がかなり高くて、20営業日に直すと、中には2日に1回メールが届く方もいます。こう言うと、ウィルゲートっておかしな会社なんじゃないかと思われるかもしれませんが、ターゲットを絞った上で興味を持ってもらえる内容かを見極めた上でメールを送っているので、頻度が高くても嫌がられることはありません。

 コロナ禍でリモートワークが多くなり、テレアポが通じない。法人は生きるか死ぬかの戦いなので、送り手側はかつてないくらいアクティブにメールを送るようになっています。ところが多くの企業は、僕の体感では90%以上がターゲットを絞らずにハウスリストのユーザにただ一斉送信して終わっている。これではメールマーケティングが上手くいかないだろうなと思っています。

菱沼 そうですね。特にコロナ禍になって、企業からのメール送信が増えている傾向があります。私どもで提供しているメールリレーサービス「ベアメール」もコロナ前と後で案件数が約1.5倍に増えており、メール送信のニーズが増えている実感があります。また、契約していただいているお客さまからも配信数を増やすのでプランアップをしたいというお問い合わせが増えました。

吉岡 企業側は必死にメールを送っているその一方で、受け取る側はというと、実は私自身もそうですが、FacebookメッセンジャーやLINEなど他のコミュニケーションツールを使う時間が増えた分、メールに割く時間は一昔前よりは大きく減ってきています。2021年は企業が送るメールが増える一方で、読んでもらえるメールは減った。メールマーケティングの成果という面で今まで以上に大きく明暗が分かれた1年だったのではないかと思っています。

2.注目すべき「到達率」という指標

菱沼 コロナ禍でメールマーケティングの重要性が高まっているなかで、実は多くの人が気づいていないことがあります。それはメールが受け取り手にちゃんと届いているかを表す「到達率」の重要性です。

吉岡 え、そうなんですか? 私自身は到達率をあまり気にしたことがなくて、メールというのは送れば届くものだと思っていました。

菱沼 吉岡さんのように、多くの方がメールは届くのが当たり前だと思っています。ただ実際のところは、送っているのに届かないメールもあります。メールは誰にでも送れるので便利な反面、フィッシング詐欺などの迷惑メールを送る業者も引き続き増えています。

 メールを受信するプロバイダや携帯電話のキャリアは、悪意のあるメールの可能性があるものはユーザーに届かないようにするのが責務でもあるので、日々迷惑メールに対するセキュリティを強化しています。すると、迷惑メールでもない普通のメールがブロックされてしまったり、受信者まで届いてはいるものの迷惑メールフォルダーに振り分けられたりしているケースが発生します。
吉岡 確かに自分宛のメールでも、普通の返信メールが迷惑メールフォルダーに入っていることがあります。だから必ず迷惑メールフォルダーもチェックしています。でも、自分のメールの送信先のことは今まで考えていませんでした。

 たとえば今、自社で使用しているメール送信システムを見ると約6,000件送信したうちの約400件が配信エラーとなっています。これはどういう理由でエラーになっているのか分かるのでしょうか。

菱沼 どこまでエラーの内容をチェックできるのかは、利用しているメール配信の仕組みによりますね。MAなどメール配信サービスを利用している場合は、サービスによってはエラー内容まで確認できない場合もあるかもしれません。我々の「ベアメール」の場合は、管理画面から誰でも簡単に配信結果とエラーの内容を確認できるようになっています。エラーの理由はさまざまで、例えば宛先のメールアドレスが存在しないのが原因であれば、今後は送信しないように送信リストから削除すべきですし、受信側メールサーバのトラブルなど一時的な原因によるエラーであれば、日を改めて送ることで届くことがあります。

 エラーになっていなければ受信側のプロバイダや携帯電話キャリアのメールサーバまでメールが届いたということなのですが、問題はそこから受信者のメールボックスまでちゃんと届いているかが実はわからないということです。同じく当社が提供している「迷惑メールスコアリング」というサービスでは、テストメールを送信することで、迷惑メールとして判定される可能性がチェックできます。迷惑メールスコアリングでは、docomo・au・Softbank・Gmail・iCloud・Yahoo!など、それぞれのサービスでメールボックスまで到達するか、実際に送信した結果を確認できるんです。もし迷惑メールとして判定される可能性が高そうな場合は、その原因はどこにあるのかというところまでチェックできるので、ぜひ皆さんに自分の送信しているメールは問題ないのか一度試してみて欲しいですね。

 もし、ウィルゲートさんが使っているサービスでエラーの理由が見られるとして、メールアドレスが存在していないものやお客さまの端末の方でメールを受け取らない設定をしているようであれば、そのアドレスには今後メールを送らないという対応をしないと、メール送信に利用しているIPアドレスやドメインの信頼性が下がり、今後送信するメールが迷惑メールと判断される原因にもなりかねません

吉岡 そうなのですね。そもそもブロックされたり迷惑メールと判断されたりする基準はどこにあるのでしょうか?

菱沼 一番の原因は、メールを送信しているサーバのIPアドレスが、大手メールプロバイダやISP、携帯電話キャリアなどが利用するメールの受け取り拒否リスト、いわゆるブラックリストに載ることです。ブラックリストに載ると、そのIPアドレスから送信したメールはブロックされる可能性が非常に高くなります。

 さきほど、吉岡さんはメールを送る際にリストを絞り込んでいるというお話がありましたが、リストを一切精査せず2、3万件の全員に毎日のようにメルマガを送っているというお客さまが結構多いんです。都度精査していないので、メールアドレスがすでに変わっていたり、お客さまの方でメールを拒否する設定をしていてもそのままメールを送っていたりするので、到達エラー率が10%を越えている場合もあります。これだけエラー率が高いと、メールが無駄になっているばかりか、IPアドレスの信頼度を表すレピュテーションスコアというものが下がってしまい、ブラックリストに載る原因になります。ターゲットを限定するためだけでなく、レピュテーションスコアを高く保つという意味でも、配信リストを精査し正しく運用することはとても大切なんです。

 ただ、メールを大量に配信している以上、ブラックリストに載ることを100%防ぐことはできません。もしブラックリストに載ってしまったら、申請して解除してもらうしか方法はありません。我々の「ベアメール」では、ブラックリストに自社のIPアドレスが載っていないかどうかを常に監視して、万が一ブラックリストに載った場合は一旦そのIPの利用を中止して解除申請をする、という運用を24時間365日行っています。当たり前のことですが、メールマーケティングではまずメールが届くことが一番大切ですから。

吉岡 本当にその通りですね。もし、到達率が10%上がれば全体のパフォーマンスが10%上がるということにつながりますよね。自社でも導入を検討したいと思います。

3.2022年に重要なのは受け取り手の立場を考え抜いたメール

菱沼 2021年はコロナ禍でメールマーケティングが再注目されましたが、2022年にはメールマーケティングでどういった点が重要になると考えていますか?

吉岡 より受け取り手のことを考えたメールが重要になると思っています。というのも、私は1万7,000枚名刺交換をしているので、毎日おびただしい量のメルマガとかメールが届いているんですよ。そこでいかにも一斉送信なものや送信者がよく分からないものは、ほとんど開封せずに捨てていっているんですね。受け取り手がメールに割く時間は年々減っています。いかにメールを開かせるか、その工夫が問われるのではないでしょうか。
菱沼 具体的にどういう工夫をすればいいか教えてもらえますか。

吉岡 まずは送信元の名前を見てこれ誰?と感じさせるものは論外です。info@が頭についたメールアドレスや、送信名が“セミナー運営事務局”のように一斉送信と一目で分かるものは、まず開きません。送信者が名前になっている場合でも、会社名が入っていないと誰か分からない。メールが届いたときに受け取り手からどう見えるかをまず考えるべきだと思います。

 タイトルも「大人気で参加者1,000人突破、今話題のDXセミナー」など、いかにもメルマガ風なものは無視されるので、「ご無沙汰しております。ちょっとご相談があります。ウィルゲート吉岡」のように、このメールを逃してはダメだと思われるように設定します。

 メールを開いてもらった後の本文も、もちろん大切です。特にファーストビューの5行がとても重要だと思っているので、私の場合は、冒頭で参加メリットを伝えます。「弊社が今まで有料販売していたSEOセミナーを無料で公開することにしました」と書くと「有料だったものが無料になるんですか?」と反応率が高まります。セミナー参加申し込みURLもぱっと目に付く場所、ファーストビューの上部とメールの下部に設置するとクリック数が上がります。

菱沼 送信元の名前などすぐに見直せるポイントですね。メールを送る時間帯は意識していますか?

吉岡 これも受け取り手として考えてみたとき、朝出社してまずやることは何かというと、未読メールの一括処理ですよね。だから朝一に届くように送ると、一括で開封済みにされてゴミ箱行きになる可能性が高い。それを避けるために日中作業をしているときに、パソコンにメール受信がピコンと表示されるように、朝一は避けて10時30分~13、14時の間に送るように心がけています。

菱沼 あとはやはり送信リストをしっかりと絞り込むことですよね。

吉岡 そうですね。多くの会社がメールを送るのはだいたい週1回、月4回しかメール送信をしていないのは本当にもったいないなと思っています。ウィルゲートはターゲットを絞り込んだ月10回の送信で、お客さまから返信が来ます。この頻度で絞り込みもせずに送っていたら、きっと配信停止依頼ばかり来ると思います。そのことに気づかずにただ一斉送信している会社が多すぎるのがとても残念です。

菱沼 技術的な面でいうと、2022年も受信側の迷惑メール対策は日々強化されていくと思います。迷惑メール対策やフィルターは日々更新されていくので、今までは届いていたメールが突然ブロックされたり、迷惑メールフォルダーに振り分けられたりするということも実際起こっています。これがECサイトやWebサービスを運営している会社だったら、お客さまから「メールが届かない」とクレームが殺到することにもなりかねません。今問題なくメールが届いているとしても、今後届かなくなるかもしれないというリスクを意識して正しくメール運用をすることが重要ですね。
吉岡 私も今回メール到達率を考えていなかったことに気づきがありました。エラーの内容についても把握できていなかったので、マーケティング責任者としてもう一度メールの到達率について考える機会をもらいました。

菱沼 メールが届かない原因は一つではないので、原因を切り分けながら、改善できるものか諦めないといけないものかを潰していく、ノウハウがなければ大変難しい作業です。「ベアメール」や「迷惑メールスコアリング」というサービスは、その部分をシステム化していますが、それで終わりだとは思っていません。「メールを確実に届ける」ことにフォーカスしたサービスとして、お客さまの相談に乗ったりノウハウを提供したり、サポートを通じてメールが届かないと悩んでいる方の課題解決のお手伝いをしたいと思っています。今日は吉岡さんとお話させていただいて、改めてメールマーケティングの可能性を感じました。本当にありがとうございました。
株式会社ウィルゲート<br>
専務取締役COO    <br>
吉岡 諒

株式会社ウィルゲート
専務取締役COO    
吉岡 諒

1986年岡山生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業。代表取締役小島と共に2006年に株式会社ウィルゲートを設立。個人として累計で3,000社のWebマーケティングの課題解決提案を実施。2012年に記事作成「サグーワークス」、2014年にメディア「暮らしニスタ」、2018年にはSEOのAIツール「TACT SEO」、2019年にはオンラインで編集チームが作れる「エディトル」、M&A仲介支援サービス「Willgate M&A」をリリース。2021年はSNSを活用した営業支援「ソーシャルセリング」を開始。COOとして全サービスの管掌役員を務める。
Twitter: https://twitter.com/seoamigo

株式会社リンク <br>
クラウド・ホスティング事業部 技術部 部長<br>
菱沼 憲司

株式会社リンク 
クラウド・ホスティング事業部 技術部 部長
菱沼 憲司

株式会社リンクでエンジニアとしてベアメタルクラウドベアメールのサービス企画・開発、販売促進のためのプリセールスを担当する。