電話対応のプロが教える オフィス・在宅勤務の両方で役立つ「ビジネス電話マナー」
電話はどこの会社でも当たり前のように備え付けてありますが、「正しいマナーで電話対応ができている」と自信を持って言える人はそう多くありません。特に新入社員の方や、新しい環境で仕事が始まった方は、「この受け答えで本当にいいのか?」と不安を感じることもあるのでは。 さらに、近頃では在宅勤務が普及したため、周囲の人をマネすることも難しくなりました。自己流から脱却し、クライアントに好印象を与える電話対応を学べる機会がますます減ってきています。 そこで今回は、コンタクトセンターのコンサルタントとして多くの企業のオペレーターを指導してまわる池田浩一さんに、初心者にもベテランにもぜひ押さえてほしい「ビジネス電話マナー」のポイントについてうかがいました。
1.電話対応が苦手なのは当たり前
外国で暮らすと、最初は聞き取れなかった言葉が、慣れるに従って徐々に分かるようになるといいますよね。人間は意識しなくても、生まれながらに備わっている感覚によってコミュニケーションが上達していくそうです。電話もコミュニケーションですから、場数をふむことで自然とうまくなっていきます。最初のうちは「失敗しても当たり前」くらいに気楽に構えていいと思います。ぜひ今回の記事で基本を身につけて、電話対応を楽しめるようになってほしいと思います。
2.電話対応のきほんの「き」
会社の電話に出るということは、会社のブランドを担っているのと同じです。気楽にとは言いながらも、丁寧な対応を心がけましょう。
電話は、声だけの会話になります。明るく、言葉ははっきりと、活舌良く話すようにします。活舌は顔の筋トレをしている意識で、口や顔全体の筋肉をしっかり使うと、声音(こわね)が格段に良くなります。
姿勢も重要です。うつむいた状態だと喉(気道)を圧迫し、声が出しにくくなります。顔と顎を気持ち上向きに話すと声の通りが良くなります。在宅勤務の場合、ソファーなどで仕事をしている人もいると思いますが、姿勢が悪いと声の通りも悪くなります。電話の際はちゃんとしたイスに座るというのもお勧めです。
会話のスピードは相手と同じテンポにすることが基本です。もし、お客さまが急いでいる気配を感じた場合は、お客さまの話すスピードより少し速めにします。そして、話す内容は簡潔にわかりやすく、短く表現します。だらだらと話すのではなく、一文を短くするように心がけてください。
それから、電話での会話は「間」も大切になります。相手の発言に被せないように話すことは最も重要です。特に、相手の話が終わらないうちに、こちらから話しかけるのはNGです。ただし、「はい」「ええ」といった相槌や共感の声音は被っていても支障はありません。
また、不快感を与えたり、誤解されたりするような言葉を使うのは避けましょう。
通話中は、声のトーンや話し方から相手の気持ちや立場、状況を察するようにします。用件を伝えるだけの場合でも、相手の立場や状況を察することは好感度アップにつながります。ぜひ意識してみてください。
3.電話のかけ方&受け方の基本
ビジネス電話のかけ方
①電話がつながったら、社名と自分の名前を名乗ります
「○○○○(会社名)の○○(自分の名前)と申します。いつもお世話になっております。
△△部(相手の所属部署名)の△△さま(相手の氏名や肩書)はいらっしゃいますか」
「いらっしゃいますでしょうか」は二重敬語なので使用しません。「〇〇様はいらっしゃいますか?」「〇〇様へお取り次ぎ願えますか?」が一般的です。
②電話に相手がでたら、もう一度社名・名前を名乗り、用件を簡潔に伝えます
「(相手が電話に出たら)いつもお世話になっております。○○○○(会社名)の○○(自分の名前)と申します。□□の件でご連絡いたしました。(ただいまお時間)○分ほどよろしいでしょうか?」
会ったことのない方に電話をかける場合は「はじめまして、私〇〇株式会社の〇〇と申します。□□の件でご連絡いたしました。……」と頭に「はじめまして」をつけるといいでしょう。
③ 相手が不在の時は戻り時間を尋ね、改めて自身の会社名・名前(少しゆっくりめに)と、電話をかけ直すことを伝えます
「そうでしたか、△△さまは何時頃お戻りになりますか?」
「○○○○株式会社の○○と申しますが、その時間に改めてご連絡差し上げます」
④ 電話を終えたら、「失礼いたします」と言い、少し間を置いてからゆっくり電話を切ります。
ここは大変重要で、電話が終わったつもりで「あ~疲れた」と言ってため息をついたり、すぐに「今の会社さぁ……」といった悪口を言ってしまったりと、失敗例がよくあります。悪態をつかないことはもちろん、社内での発言を相手に聞かれないように注意しましょう。相手の音声が切断されたことを必ず確認してから電話を終了します。
ビジネス電話の受け方
① 電話がかかってきたら3コール以内に取ります
「(朝11時まで)おはようございます。/(通常)お電話ありがとうございます。
○○○○株式会社の○○でございます」と言って電話に出ます。
3コール以上鳴ってしまった時には、「お待たせいたしました。○○○○株式会社の○○でございます」と出ます。
会社によっては朝10時まで「おはようございます」を使うこともあるので、そこは会社のルールに合わせてください。
② 先方の社名・お名前を復唱します
「株式会社△△の△△さまでいらっしゃいますね。」
馴染みのお客さまやクライアントの場合は、より丁寧に「△△会社の△△さま、いつも大変お世話になっております。」と加えるといいでしょう。
③ 先方が名乗らない、聞きとりづらい場合は聞き直します
「私、○○と申します、恐れ入りますがお名前を教えていただけますか?(伺えますか?)」
自分から名乗って、相手の名前を伺うのがマナーです。「お名前をお聞かせください」「お名前を伺えますか」「お名前をお聞きしてもよろしいでしょうか」もOKです。よく「お名前を頂戴できますか?」という人がいますが、名前は人にあげられません。「頂戴」は絶対に使ってはいけません。
④自分で対応できない場合は、一度確認する旨を伝えます
「〇〇の件ですね。私では判断できかねますので、担当(上司など)に確認して折り返しご連絡差し上げます」
仕事の内容によっては、自分ひとりで解決・判断できない場合もあります。だれかに相談して確認をとりたい場合は、折り返しご連絡することを伝えます。
⑤会話を終えたら、先方が電話を切ったのを確認してから、電話を切ります。
電話を取り次ぐ場合
必ず相手の名前を確認した上で、電話を取り次ぎます。
「恐れ入りますが、お名前を教えていただけますか?(伺えますか?)△△さまですね。少々お待ちください」
取り次ぐ社員が不在であれば、そのことを伝え、要件が急ぎの場合はすぐに折り返し電話をする旨を伝えます。
「申し訳ございません、本日○○は外出して戻らない予定です。今から携帯に連絡を取り、折り返し△△さまにご連絡するよう伝えます。念のため△△さまの連絡先を伺えますか?」
急ぎでない場合も念のためご連絡先を確認してメモに残しておきましょう。
「かしこまりました。株式会社△△の△△さまから電話をいただいた旨、私から伝えます。念のため△△さまの連絡先を伺えますか?」
4.ワンランク上を目指すなら先輩のマネを
自分がこの人のしゃべり方がきれいだなとか、電話対応が上手いなという先輩が、電話のときにどのような言葉をつかっているのかを意識して聴くようにしましょう。
実はコンタクトセンターでも、お客さまの対応が上手なオペレーターさんの音声を録音し、研修の場でみんなで聴くということをよくやります。人の音声を聴くことはとても勉強になります。
また、自分の電話を録音しておいて、後から客観的に聴いて、自分の癖を知るということもとても重要です。 電話対応だけではなく、普段の言葉遣いも私にとっては身だしなみの一つです。鏡を見てゴミがついていないか、シワがよっていないかを鏡を見てチェックするように、録音を聴いて自分の話し方をチェックするという意識を持っておく必要があると思います。
『BIZTEL shouin』では、電話対応のマナーや言葉遣い、クレーム対応などの研修動画が視聴できるのですが、そちらでも私が講師を務めています。もともとコンタクトセンターのオペレーター育成のためにつくったものですが、電話対応だけではなく社会人として必要なビジネスマナーについても学べるようになっています。
しかも、ただ知識を学べるだけではなく、良い対応だった電話の録音データをアップロードして、関係する人にだけ共有できる機能や、新入社員の方に音声をアップしてもらい、管理者がそれを聴きながら効率良くフィードバックできる機能などが使えます。大勢を集めて研修するのが難しいコロナ禍にあって、新入社員研修の代わりに活用いただいています。こういうツールを使うのも、一つの手段だと思いますね。
『BIZTEL shouin』は録音データをアップロードできます
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「誰でもみな、最初は初心者」なので、言葉選びやマナー、コミュニケーション全体の学びを始めてみてください。きっと後々勉強して良かったと思えることがあります。正しい言葉遣いは人生を豊かにしてくれますよ。この記事を読んでくださったみなさんを、陰ながらですが、心より応援しております。
株式会社ブランニューデイ
代表取締役
池田 浩一
コンタクトセンター専門のコンサルタントとして、100社以上のセンターの立ち上げや業務改善を支援。数多くの電話応対の現場に携わった経験から「実践で役立つ」ことに重きを置いた研修を行い、好評を博している。ラジオやニュースサイトなど多数のメディアにも出演する。