コールセンターのSV・管理者の負担を減らす、研修の動画化 想像以上に簡単に始められる「動画制作のコツ」とは
コールセンターでは、在宅勤務の実施やeラーニングの普及を背景に、動画を活用した社内研修が当たり前になりつつあります。応対マナーなどの基礎的な内容についてはコールセンター専門の教育・研修事業者が動画コンテンツを提供していることもありますが、商品知識や自社ならではのオペレーションについてはSVや管理者が自ら制作しなければならず、「作り方がよくわからない」「撮影・編集が負担で、なかなか動画研修に踏み切れない」といった声がよく聞かれます。そこで今回はコールセンターのコンサルタントである池田浩一さんに、オリジナル研修動画が簡単に作れる動画制作のコツを教えてもらいます。
1. 研修動画を制作・活用するのは今や当たり前に
2020年2月に大手テレマーケティング会社に問い合わせたところ、10社中8社はすでに動画研修の導入・運用を進めていました。この流れは大手に留まらず、例えば中小規模のメーカーなどにおいても、医療機器やカーナビといった機械の操作手順を案内するテクニカルサポート系のコールセンター向けにオリジナル研修動画が活用されていました。
これだけ研修動画の活用が広がっているのは、研修を受けるオペレーターさんたちが日常からYouTubeやTikTokなどで動画に慣れ親しんでいること、そしてスキルや機材がなくても動画制作がスマホやPCで簡単にできるようになったことが要因として挙げられます。
今後、オリジナル研修動画を制作し活用する流れは、ますます勢いを増していくことに間違いありません。おそらく3年後にはeラーニングや動画管理システムは、規模の大小を問わず、多くのコールセンターで標準装備のツールになっているのではないでしょうか。
動画研修を制作するメリット
1. 講師間での説明・表現のブレが無くなる⇒基本研修の統一
2. 現場を交えて内容を事前に検討し、管理できる⇒研修講師と現場SV間で指導内容の共有ができる
3. 物や形状・色など視覚的な情報を伝えることができ、オペレーターの理解が促進できる
4. 実際の顧客応対音声をコンテンツに入れて「あるべき姿」を示すことができる⇒応対品質UPにつながる
5. 講師(インストラクター)の負担を軽減できる⇒その分、研修の質が向上する
2. 動画コンテンツは“簡単につくる”を心がける
まずは現状の研修項目の一覧を整理し、研修内容・所要時間・資料などを確認します。動画にしたい内容と構成を検討し、説明が簡単なものから始めましょう。どんな内容のものを作ったら良いか分からないという場合は次の項目を参考にしてください。
【オリジナル研修動画のコンテンツ例】
◎大きな変更が少ない基本的な内容
・会社やセンターの概要・ルール
・商品・サービス概要
・基本スクリプト(オープニング/クロージング)の電話応対
◎業務内容
・問い合わせが多い項目の上位3~5つ
・複雑な操作や説明が必要なもの
※動画の理解しやすさや改善POINTを受講者にアンケートし、徐々に改善する。動画制作への慣れや必要性に応じてコンテンツを順次追加。
以前は、研修動画の撮影を専門の業者に頼んだり、自分たちで撮影する場合はカメラをはじめとする機材を揃えてセッティングしたりと、とにかく手間がかかっていました。でも、それは一昔前の話。今やパソコンやスマホがあれば十分です。
多くのコールセンターではZoomやGoogle Meet、Microsoft TeamsといったWeb会議ツールを使って、研修動画を制作しています。作り方はいたって簡単で、Web会議ツール上で資料を画面共有しながら研修を行い、それを録画するだけです。社内で見る動画ですから、あまり難しく考える必要はありません。普段の研修と同じように、自然体で気楽に臨んでいただければ大丈夫です。研修の資料もわざわざ作り直す必要はありません。普段の講習で使っているエクセルやパワーポイントで十分です。これなら誰でも簡単にできますよね。唯一こだわってほしいのは、照明の明るさくらいです。講師の方の顔が暗いと表情が分かりません。もしどうしても暗くなってしまうようでしたら、顔に当てる照明を用意しましょう。
1本の動画の長さはちょっとした隙間時間で見られるように、項目ごとに分割して5〜10分以内に納めるのが理想です。それ以上長くなると見ている方が疲れたり、集中力を切らしたりしてしまいます。内容的にどうしても長くなる場合は数回に分けるといった工夫が必要です。
撮影が終わったら最後に編集作業が待っています。今は動画編集アプリを使えばパソコンやスマホで簡単に編集作業ができます。ただしあくまで編集は必要であれば、という程度で考えてください。
普段の講習と同じように、多少の言い間違えなどがあっても訂正して言い直せば問題はありません。クオリティの高いものを目指して編集に凝ってしまうと動画制作自体が大変な作業になってしまい長続きしなくなります。最初はとにかく手間をかけないことを心がけましょう。
また、継続的に研修動画をアップするにあたり、動画制作チームを作るのもお勧めです。YouTubeなどで動画を編集・アップしたことがある人や、好奇心旺盛でやる気のある人に参加してもらうと、動画制作が活性化します。
オリジナル研修動画を制作できるようになると、活用シーンはさらに広がります。例えば、その日の注意事項や変更点などを説明する業務連絡動画を毎日アップすれば、朝礼の代わりになります。シフト制で全員が集まれる時間がなかなか取れないコールセンターであればそういう使い方もありだと思います。
どんな動画を撮るか、どんな使い方をするか、チームでアイデアを膨らませて楽しみながら作ってほしいですね。
動画制作のおすすめの手順
1.研修動画作成チーム(プロジェクト)を作る
※好奇心・やる気のある方が参加するとチームが活性化する
2.研修コンテンツ作成
・現状の研修項目の一覧を整理
・研修内容・所要時間・資料などを確認
・動画にしたい内容と構成を検討⇒説明が簡単なものから始める
※収録に必要な機材は、ノートパソコンに内蔵されているカメラや、一般的なマイク付きイヤホンなどで問題なし
※動画は基本的な研修内容を中心にし、応用やイレギュラーケースは講師が対面研修などで解説して質疑応答を受ける
3.撮影・編集
・練習で動画を撮影・編集し、チーム内外で確認
・慣れてきたら基本的な内容の研修動画を数本作成
※編集はあまりこだわりすぎないようにする
※確認クイズやテストを盛込むなどの工夫も有効
3.制作した動画を活用するeラーニングシステムを選ぶ
YouTubeに動画をアップして、URLを知っている人だけが見られる「限定公開」に設定して視聴しているコールセンターが多いのですが、セキュリティの観点からあまりお勧めできません。作った動画をフル活用するためには、安全かつ効果的な管理・運用ができる eラーニングシステムや動画管理システムの導入を考えるべきだと思います。
様々なeラーニングシステムがありますが、コールセンターで利用する場合にお勧めなのが、私も開発に携わった「BIZTEL shouin」です。BIZTEL shouinには電話応対の基礎や正しい言葉遣い、クレーム対応の方法といった、コールセンター業務の基本的な研修動画がプリセットされており、すぐにeラーニングを始めることができます。商品やサービスなどに関するオリジナル研修動画ももちろんアップロードできるので、必要な研修が網羅できます。
このBIZTEL shouinは研修する内容や順番を自由に組み合わせてコースを作成することができるので、オペレーターさんの入社時期やレベルに合わせた効率的な研修ができます。例えば、新人さん向けであればプリセットされている電話応対マナーの研修とオリジナルの会社案内動画を受講してもらうコースを作ったり、すでに新人研修を終えた人向けであれば商品やサービス紹介の動画を学習するコースを作ったりといったイメージです。一度コースを作っておけば、受講するコースを指示するだけで研修が進むので、育成の業務がとても楽になります。
オペレーターさんが楽しく学べるように、BIZTEL shouinではプリセット動画の最後にクイズが出題されます。もちろん、自社で制作した動画にもクイズを追加することができます。自社で作成・運用しているFAQなどがあれば、それをベースにするととても簡単にクイズが作れるので、ぜひ活用してみてほしいです。
研修動画の作り方も学べる
BIZTEL shouinは、オペレーターさんだけではなくSVさん向けのコンテンツも充実しています。その中には「研修コンテンツ作成ガイド」があり、研修動画制作のノウハウが学べるコースがプリセットされています。私が講師を務めた社内研修のサンプル動画も入っていますので、ぜひ見ていただきたいですね(笑)。
スマホの撮影機能も高性能になり、YouTubeやInstagram、TikTokなど、動画による表現が社会標準となっている今、動画研修の可能性について多くの方に知っていただきたいと思っています。特に管理者やインストラクターの方は研修実施にかかる負担が大きく減ります。
どの企業も、最初から研修動画の制作が完璧にできるなんてことはありません。試行錯誤をしながらPDCAを繰り返し、上達していきます。まずは楽な気持ちで助け合い、楽しみながら制作を始めてください。少しずつ上達すると段々面白くなっていきます。1年後には管理者や指導者が楽になり、必ず成果が出るはずです。
個人のスキルアップにつながることも期待できるので、もしかしたら将来人気のユーチューバーになっているかもしれませんよ(笑)。
株式会社ブランニューデイ
代表取締役
池田 浩一
コールセンター専門のコンサルタントとして、100社以上のセンターの立ち上げや業務改善を支援。数多くの電話対応の現場に携わった経験から「実践で役立つ」ことに重きを置いた研修を行い、好評を博している。ラジオやニュースサイトなど多数のメディアにも出演する。