icon

「最適なサービスで一歩先行く組織へ」ビジネスに伴走する課題解決メディアCHECK!

オンボーディング完了率はSaaS型サービスでなぜ重要なのか?オンボーディングを成功させるポイントを徹底解説!

オンボーディング完了率はSaaS型サービスでなぜ重要なのか?オンボーディングを成功させるポイントを徹底解説!

サブスクリプション型のサービスでは、継続利用率を高めるために注目すべき重要なKPIが存在します。別記事で紹介したチャーンレート(解約率)がKPIに入ることは想像に難くないと思いますが、オンボーディング完了率も同様に重要な指標です。
この記事では、オンボーディング完了率についてその意味と重要性、オンボーディングを成功につなげるポイントについて解説します。

目次

  1. オンボーディング完了率とは?なぜ重要なのか?
  2. オンボーディング成功のポイントは
  3. オンボーディングのプロセス
  4. まとめ

1. オンボーディング完了率とは?なぜ重要なのか?

まず、オンボーディング完了率の定義と重要性を解説します。

オンボーディング完了率とは

サービスにおけるオンボーディングとは、顧客がサービスを導入してから実際に運用を開始し、定着した状態になるまでの期間を指します。具体的にどのような状態をオンボーディング完了とするかの定義やそれを測る指標は、提供するサービスの特徴によって異なりますが、代表的な定義として「初期設定が完了していること」「顧客内での利用率が何%以上であること」などがあげられます。オンボーディング完了率は、この定義に基づき、以下の計算式で算出します。

計算式

オンボーディング完了率 = オンボーディングが完了した企業数 ÷ オンボーディング期間の全企業数

オンボーディング完了率はなぜ重要なのか?

オンボーディング完了率をKPIとして設定する理由は明確で、オンボーディングが完了していない顧客は完了した顧客と比較して、解約(チャーン)のリスクが高いためです。
提供するサービスがどれだけ優れていても、実際に顧客の業務プロセスに取り入れてもらい、活用して貰うことができなければ使われないサービスとして解約の一途を辿ります。これを防ぐための最初の重要なポイントがオンボーディングです。

日々業務に追われている担当者にとっては、導入したサービスを使って新しいプロセスを構築し、それを社内に説明・展開・定着させるには非常に高い労力がかかります。導入した担当者が最も熱量が高いのは契約をした当初であるため、この熱量が高い期間内にオンボーディングを完了できるかが鍵です。

また、オンボーディングは、今後顧客と長期的に良好な関係を築くためにも重要なポイントです。顧客にとって、社内への導入・展開という最も労力を必要とする際にどれだけ担当者が顧客企業の課題や業務を理解し、適切で丁寧なサポートをしてくれたかはその後の信頼関係の基盤になります。また、自社にとっても顧客を深く知る機会となるため、将来的なアップセルの可能性を掴むことができます。

2. オンボーディング成功のポイントは

ここでは、オンボーディングを完了させるためのポイントを紹介します。

ポイント1
自社のオンボーディング完了の定義を明確化する

オンボーディング完了の定義は会社によって異なります。自社サービスの導入から活用に至るまでのプロセスの中で、どこを押さえられていれば解約のリスクが低減するのかを定義し、関係部署間で共通認識を持つようにしましょう。社内でオンボーディング完了について共通の認識が持てなければ、個々の活動が目的から逸れたものになりかねないため、社内での認識を一致させることが重要です。

ポイント2
顧客の課題を正確に理解・把握する

顧客の業務プロセスや課題、サービス導入の目的を正確に把握し、どのようなサポートができるのか検討しておくことが大切です。これらの情報は、営業担当者が営業活動を進める中で把握しているはずですが、顧客との間に認識の齟齬が生じている可能性もあります。そこで、カスタマーサクセスの担当者がオンボーディングを進める前に改めて確認し、認識を一致させるようにしましょう。

また、目標を設定する際には、可能な限り顧客側の責任者を含めた形で行うようにしましょう。責任者は、顧客の組織の中で決済権限を持ち、今後の契約更新やアップセル・クロスセルの鍵を握ります。担当者は顧客側の窓口として課題や目的を説明する役割を持つはずですが、顧客の組織の中で情報共有が不十分であったり、共通認識が持てていなかったりする場合もあります。オンボーディングの最初に責任者との認識をすり合わせると同時に、自社とサービスが顧客の目的に即した、価値のあるものであることを認識してもらうことが重要です。

ポイント3
複数の関係者を巻き込む

顧客側の担当者は、利用の途中で異動となる可能性があります。そのような場合でも、引き続き顧客企業内で活用してもらうためには、自社側から直接の説明ができる場面でなるべく複数の関係者を巻き込んでおくことが理想的です。そこで、顧客企業内での説明を行う際、特に実際の業務プロセスの中での使い方を説明する際には、複数の利用者にも直接説明するようにしましょう。顧客の組織内で、自社サービスを利用する効果や価値を迅速に認識してもらえるような進め方を行うことが重要です。

ポイント4
まずは必要な機能だけを説明する

オンボーディングを最短で完了させ、顧客内での利用を浸透させるためには、機能をいち早く使いこなせるようになってもらうことが大切です。自社のサービスは複数の顧客を想定して作られているでしょうから、顧客によっては不要な機能もあるかもしれません。
そのような場合に、すべての機能を説明することは、顧客側に「使いこなせないかもしれない」という不安を与える恐れがあります。

顧客の課題や目的に即して、必要な機能だけに絞り、簡潔に説明するといった配慮も重要です。顧客側で利用が浸透するにつれ、他の機能も必要になるかもしれません。実際に必要となった際に改めて説明する方が、機能の活用の面でも効果的です。

ポイント5
顧客と一緒にスケジュールを明確化する

オンボーディングを速やかに完了させるためには、顧客側の作業にも締め切りを設けることが必要です。日々の業務に追われる中で、期限のない作業に対しては優先順位が下がる恐れがあります。そして、対応の遅れは導入や定着の遅れに繋がります。導入や定着の遅れが解約のリスクを高めることは先に述べた通りです。
そこで、顧客側の作業もステップにわけ、顧客と一緒にスケジュールを作成するようにしましょう。そして、それぞれの期限が近付いた場合には、リマインドの意味も込めて顧客側とコンタクトを取り、進捗を確認してください。これにより、担当者が作業を忘れたり、後回しにしたりすることを避けられます。

ポイント6
オンボーディングを効率化する

サービススタート直後であれば、自社にノウハウを蓄積するためにも可能な限り多くの顧客に寄り添い、丁寧なオンボーディングを行うことが望ましいですが、顧客数が増加している場合には、効率性を求めることも必要です。そこで、以下のような方法を取り入れることで、効率化できないか検討しましょう。

●カスタマーサクセスツールを活用する

カスタマーサクセスツールとは、カスタマーサクセスを支援することを目的に作られたITツールで、ヘルススコアなどで顧客の利用状況を可視化するだけでなく、顧客とのコミュニケーション履歴やタスク管理などが行えます。カスタマーサクセスツールを活用することでオンボーディングを効率化することができます。

●成功事例や活用事例をテンプレート化する

自社サービスの成功事例や活用事例をテンプレート化することで、スムーズにオンボーディングにつなげることができます。ナレッジデータベースのような仕組みを活用して、情報を蓄積・共有していくと良いでしょう。

●顧客の重要度に応じてサポートの程度を決める

顧客の契約内容や今後のアップセルの見込み等を考慮し、顧客ごとにサポート対応の重要度を設定しましょう。それに応じて、どの程度のサポートを行うか、特に訪問などの人的リソースが発生するサポートまで行うかどうかを決めることでオンボーディングに必要なリソースを最適化することができます。

●オンボーディングプロセスのひな型を作成する

オンボーディングのノウハウが溜まってきた場合には、おおよそどのようなプロセスが望ましいかが分かり、プロセスをひな型化し、横展開することが可能になっているはずです。プロセスをひな型化することができれば、顧客ごとにプロセスを一から作り上げる手間を省くことが可能です。

●動画やWebセミナーなどのツールを拡充する

製品やサービスの概要説明や、よく問い合わせのある内容については、動画やWebセミナーのコンテンツを制作しておくことで、顧客に自ら学習して貰うことができます。ITツールなどを活用して、顧客のサポートにおいても「レバレッジ」が働くように設計すると良いでしょう。

セルフオンボーディングの割合を増やす

自社がサービス提供を開始してから期間が経過しており、社内にノウハウが溜まってきているならば、セルフオンボーディングの割合を増やすことを目指しましょう。セルフオンボーディングとは、上記にあげた動画やWebセミナーなどのツールを用い、顧客自身でオンボーディングを完了することを指します。特に、テックタッチと呼ばれる層は、数が多く、個別に対応することが困難なため、セルフオンボーディングの推進が重要です。

また、セルフオンボーディングは、自社内のどの担当者が担当しても同じアプローチができるため、属人化を防ぐことにも繋がります。ただし、セルフオンボーディングにより、定着や浸透の精度が下がることは避けなくてはなりません。社内に蓄積されたノウハウを元に、定着や浸透という結果が伴う形となるように、試行錯誤しながら魅力的なツールの内容を検討してください。
なお、セルフオンボーディング実現のためには、ツールの拡充だけではなく、サービスの使いやすさ、操作性も重要です。

ポイント7
オンボーディング完了後も定期的に変化を確認する

定義したオンボーディングが成功したとしても、顧客の課題が変化することで、利用率が低下する場合があります。オンボーディングの完了は重要なポイントですが、自社にとっても顧客にとってもスタートポイントとして位置づけ、定期的に利用率を確認する、ヒアリングを行うなどすることで運用方法の変更やサポートの必要性を確認するようにしましょう。

この際、顧客ごとのオンボーディング完了の定義を元に、どの指標を用いて変化を確認するかも予め決定しておいてください。

3. オンボーディングのプロセス

最後にオンボーディングのプロセスを紹介します。オンボーディングに必要なプロセスは、提供するサービスや企業のリソースによって異なります。プロセスの一例を以下にあげますので、参考にしてください。

ステップ1
キックオフ

キックオフは、サービス導入の目的を自社と顧客との間で共通認識をするために非常に重要です。また、オンボーディングのゴールもすり合わせるため、その後の活用に影響を及ぼします。責任者やその他の利用者からも直接話を聞き、導入後のつまずきを最低限に抑えられるようにしましょう。

  • 顧客と共に課題を整理し、サービスの利用場面やKPIを設定する。場合によっては、顧客の契約担当者だけではなく、責任者にもヒアリングを行い、課題を整理する。
  • 責任者やその他の利用者から実際の業務フローやその中で発生している課題を直接ヒアリングすることにより、新たな課題を発見することもある。場合によっては、自社の他のサービスとのクロスセルのチャンスが埋もれている場合もあるので、しっかりとヒアリングを行うことが大切。
  • 顧客と共にオンボーディング活動のゴールをすり合わせ、TODOリストとスケジュールを作成する。活動のゴールを決定する際には、顧客企業内でどのような状態になればサービスを使いこなせていると判断できるか、価値を提供できたと判断できるかを明確化する。

ステップ2
導入トレーニング

  • 顧客企業内の利用ユーザーに対して、基本機能や操作方法を実際の画面を使いながら、直接説明する。この際、実際の顧客企業内での業務フローに落とし込み、作業ステップごとに詳細まで丁寧に説明する。
  • スムーズな業務、成功に繋がる利用方法やポイントを説明する。
  • 質疑応答を行い、実利用における疑問点を予め解消し、導入後の活用の浸透やサポート負荷の低減につなげる。
  • 補足として、社内教育用のコンテンツを提供する。
  • 特に、ロータッチやテックタッチ層に対しては、MAツールによる活用方法の通知やアプリ内での誘導を行うなど、セルフトレーニングを行ってもらえる仕組みを作る。ただし、オンボーディングの完了までは、ロータッチやテックタッチ層に対してもハイタッチと同様に自社や顧客企業の状態に応じて、Web会議や電話を通じて、丁寧な対応をすることも心がける。

ステップ3
進捗確認・クロージング

  • キックオフ時に設定した期間、頻度で進捗状況を確認する。
  • ロータッチやテックタッチ層に対しては、設定用のアシストをサービスに組み込み、活用する方法もある。具体的には、ステップに従って初期設定の入力を行うと設定が完了する、プログレスバーを表示して進捗状況を顧客自身が認識できるように可視化するなど。
  • 課題が出てきた場合には、原因を確認し、必要なサポートを行う。
  • 期間の終了時には、振り返りと今後の要望を確認する。運用の開始から1〜3ヵ月程度を目安に、Web会議や電話等で運用状況についてのヒアリングを実施する。実運用の中で、課題が出てきている場合には解決を行う。今後のサービスへの要望は、次回以降のアップデート等で解決できるものは反映していき、サービスの改善に役立てる。

ステップ4
オンボーディング完了後の活用フォロー

オンボーディングが完了した後も、顧客企業内で活用を継続的に行ってもらうために、フォローを心がけるようにしましょう。

  • 自社で設定している導入後の活用を測る指標の確認。活用が進んでいない場合や指標だけでは把握できない部分がある場合には、電話や訪問でのサポートによってその後の課題の解決に努める。
  • 指標の定点観測はシステムを利用することで自動化・効率化がしやすい領域。カスタマーサクセスツールをうまく活用することで「適切なタイミングで適切なサポート」を提供することを心がける。
  • キックオフ時に顧客企業と、サービス導入の目的と目指す成果のすり合わせが正しく出来ている場合には、顧客にとってもサービスの活用度は重要と認識されている。そのため、顧客企業自身にも指標を理解して確認してもらうことも効果的。
  • セミナーの受講状況や機能の利用度を確認し、必要な情報を提供するなどのフォローを行う。
  • NPS®️や顧客満足度など、サービスへの満足度や改善点を洗い出すためのアンケートへの回答を依頼する。

4. まとめ

この記事では、カスタマーサクセスの重要なKPI指標の一つである、オンボーディング完了率についてその定義や重要性、成功のためのポイントを紹介しました。
オンボーディングの成功は、初期の解約率の低下に繋がるだけではなく、顧客と今後長期的な関係性を築く上でも重要です。顧客の課題を理解し、適切なオンボーディングプロセスを作り上げていくことで、解約率の減少と良好な関係性の構築につなげましょう。