リテンション率とは?SaaSビジネスの成功に重要な理由から高めるポイントまで解説!
あらゆるビジネスにおいて、安定して利益を得るためには、継続的に利用してくれる顧客の数を増やすことが重要なポイントです。特に、解約のハードルの低いサブスクリプション型サービス、SaaSビジネスにおいては、継続利用率が利益に大きく影響します。そのため、アプリやWebサービスを提供する企業にとって、顧客の継続的な利用割合(または定着割合)を表す「リテンション率」は重要な指標のひとつです。この記事では、リテンション率の概要や計算式、重要性、向上のポイントについて解説します。
目次
- リテンション率とは?
- なぜリテンション率が重要なのか?利益とどのように関係する?
- リテンション率向上のポイントと施策
- まとめ
リテンション率とは?
リテンションとはマーケティング施策の一つで、既存顧客との関係を維持し、継続的に製品・サービスを利用してもらうことを意味します。定着率や継続率とも呼ばれ、SaaSビジネスにおいて重要な指標の一つです。リテンション率は以下の計算式から算出します。
リテンション率(%) = 継続顧客数 ÷ 新規顧客数× 100
たとえば、ある月の新規顧客数が100人、その翌月の継続顧客数が60人の場合、
60÷100×100=60% が1ヵ月後のリテンション率となります。
どの程度のリテンション率を目指すべきか
理想的なリテンション率は、サービス内容や売上規模、サービス開始からの経過年数やどの期間を確認するかによっても異なります。たとえば、立ち上げから間もない企業であれば、売上規模は少なく、顧客の大半は新規顧客となります。そのため、高水準でのリテンション率を目指すべきですし、サービスが成長するにつれて目標に到達しやすい環境下にあります。
一方で、売上・顧客数ともに一定規模に到達している企業においては、リテンション率も同様に一定の割合に落ち着くことが多く、伸び率としては立ち上げて間もない企業より低くなりがちです。また、大きな数値のブレがなくなったフェーズでのリテンション率は、そのサービスの実力値を表すひとつの指標としても捉えられます。ひとつの参考情報として、2017年のMixpanel Benchmark Reportによると、2ヵ月後のリテンション率が既存顧客・新規顧客ともに25%以上を維持できている場合には平均を上回っているとされています。
なぜリテンション率が重要なのか?利益とどのように関係する?
SaaSビジネスにおいて、リテンション率は利益への影響面で非常に重要な意味を持ちます。その理由について説明します。
新規顧客の獲得は、既存顧客の再購入よりもコストがかかる
一般的に、新規顧客を獲得するためには、既存顧客の再購入よりもコストがかかると言われています(1:5の法則)。そのため、既に自社サービスを利用している顧客に対して、継続利用を促すことはマーケティング上・営業上ROIの高い施策となります。また、離脱率を5%改善すると、25%の利益改善が見込めるとも言われています(5:25の法則)。特に、月単位での解約が可能なSaaSビジネスにとっては、リテンション率の向上は安定した収益の獲得のために必要不可欠です。
リテンション率の向上はロイヤルカスタマーの育成に繋がる
リテンション率向上のための施策は、自ずとロイヤルカスタマーの育成に繋がります。ロイヤルカスタマーは、アップセルやクロスセルなどにより、売り上げに大きく貢献してくれる存在です。また、良い口コミや活用事例の紹介を顧客視点で行い、より多くの新規顧客を獲得するための宣伝役を果たしてくれます。口コミはBtoCだけではなく、BtoBにおいても効果があるでしょう。カスタマーロイヤルティの重要性については、こちらの記事も参考にしてみてください。
アップセルやクロスセルに繋がる
リテンション率が高いということは、それだけ自社サービスの利用が社内で浸透しているということです。そのため、ロイヤルカスタマーはもちろんのこと、カスタマーロイヤルティが十分に高まっていない場合であっても、活用提案のチャンスは多くなります。また、自社にとっても利用期間が長いほど、顧客やその利用についての情報を多く持つことが可能です。すなわち、アップセルやクロスセルのチャンスも掴みやすく、長期的な利益拡大に貢献します。アップセルやクロスセルの効果については、ネガティブチャーンについて説明したこちらの記事も参考にしてみてください。
リテンション率向上のポイントと施策
リテンション率の向上が利益に大きく貢献することは前項で述べた通りです。しかし、リテンション率の向上は決して簡単なものではありません。顧客との過剰な接触により、顧客に悪い印象を与えてしまうと、逆に離脱率の増加に繋がりかねません。ここでは、リテンション率向上のために押さえておくべきポイントについて解説します。
顧客を理解する
まずは、顧客を理解することが出発点です。そのためには、利用データを含めた顧客のデータを蓄積し、分析することが必要です。CRMシステムやカスタマーサクセスツールの導入、定常的なアンケートの実施などにより、必要なデータを常に収集できる仕組みを構築しましょう。データを収集したら、顧客をセグメントに分け、最適なアプローチを検討するように心がけてください。
ロイヤルティを高める施策を行う
先にも述べた通り、顧客ロイヤルティとリテンション率には深い関連性があります。また、ロイヤルカスタマーのリテンション率の維持は利益に大きく影響するため、非常に重要です。ロイヤルティプログラムの導入や、One to Oneマーケティングの実施が効果的です。
CX向上の施策を取り入れる
顧客体験を向上させるCXの向上も、リテンション率に強く関連しています。また、Webサービスやアプリにおいては、CXやUXは切り離すことのできない関係性にあります。良好なCXを提供するために、常に顧客からの声を適切に拾い上げ、継続的にユーザビリティ改善を行えるような仕組みづくりが必要です。CXについては、こちらの記事も参考にしてみてください。
顧客への提供価値を定義し、カスタマーサクセスを行う
「自社サービスが顧客に提供する価値は何か」「顧客の目的にどのように貢献できるのか」を定義し、カスタマーサクセスを実施することも必要な施策の一つです。カスタマーサクセスでは、顧客が必要とするサポートや情報の提供を能動的に行うことで、顧客との関係性を維持します。顧客の理解を深めると同時に、顧客の離脱を防ぐ役割を持ちます。
また、オンボーディングと呼ばれる顧客のサービス利用定着までのプロセスは、顧客にサービスを深く理解してもらい、早期の離脱を防ぐためにも非常に重要です。カスタマーサクセスは、カスタマーサクセスツールを用いることで効果的に実施することができます。
カスタマーサポート部門のサポート力も向上させる
顧客に対して能動的な働きかけを行うカスタマーサクセスと同時に、顧客からの問い合わせに対応するサポート部門の対応も充実させる必要があります。顧客が自ら問い合わせをするのは、顧客にとって迅速に解決したい重大なトラブルに見舞われた場合です。この時、必要な対応を迅速に、かつ共感性を持って行うことは、顧客満足度に大きく影響します。
まとめ
リテンション率の向上は、複数の視点から企業の利益に影響を与える重要な課題の一つです。特に、SaaSビジネスにおいては、事業の安定性に直結します。リテンション率の向上は、ロイヤルティの向上やCXの改善と関係性が深く、必要な施策を行うことで、多くの課題の解決にも繋がるでしょう。そのためにも、CRMシステムやカスタマーサクセスツールなどをうまく活用し、ポイントを押さえた施策を検討してください。