「聞こえにくい」で疲労度増⁉︎電話の音声品質低下が引き起こす、深刻な影響とは【音声の専門家が解説】
在宅需要や電話業務の効率化などをきっかけに、さまざまな企業で導入が加速する「クラウドPBXサービス」。しかし、サービス自体の品質や利用環境などが要因で、「聞こえにくい」「声が途切れる」といった事象が発生し、業務に支障をきたすケースもあるそうです。 今回は、音声品質の低下がビジネス現場で、顧客・従業員・オペレーターにどのような影響を与えるのかを、株式会社リンク BIZTEL 事業部の三浦 康平と佐藤 優輝の2人が、音声の専門家である一般社団法人「声・脳・教育研究所」代表の山﨑 広子さんに詳しく伺いました。
1. 電話だからこそ音声品質に注意するべき理由
クラウドPBX市場の課題
リンクでは、クラウドPBXの黎明期にあたる2006年から「BIZTEL」というサービスを提供してきました。近年の需要増を背景に、クラウドPBX市場は多様化が進み、多くのサービスが登場しています。各社、さまざまな機能実装で差別化を図る一方で、電話として最も重要な「音声品質」への配慮が十分でないことから、声が遅れて聞こえたり、途切れてしまうサービスも存在します。
電話の音声品質が安定しない状況は、都度聞き返しが発生することから、働いている従業員・オペレーターの方々にとって、本来の業務以外の大きな負担になっているのではないかと懸念しています。実際、音声品質の低下がお客さまや従業員・オペレーターにどのような影響を与えているのか、そのメカニズムをいろいろと教えていただきたいです。
音声品質の低下が引き起こす「認知負荷」と「不信感」
というのも、人間は「視覚」が優位な生き物なので、話を理解する時も、耳から入ってくる音だけで判断しているのではなく、目から入る情報にも大きな影響を受けています。
人間は、視覚と聴覚で補い合って相手を理解しようとしているんです。
しかし、電話のように音声だけという限られた情報から認知(理解)をしようとする場面で、聞こえない、聞き取ってもらえない状況が発生すると、「認知負荷(※1)」が増大してしまいます。その結果、脳のエネルギー消費が高まり、疲労やストレスを招く恐れがあります。
※1 脳のワーキングメモリ(作業記憶)が、情報を処理する時にかかる負担のこと。情報が多すぎたり、複雑すぎたりすると、認知負荷が高まります。認知負荷が高まると、本来集中すべき作業に使える脳のリソースが奪われ、作業の効率が下がる場合があります。
また、人間は音声だけで信頼できる人間かどうかを瞬間的に判断しています。それも、わずか1〜2秒でできることが研究から分かっています。
1〜2秒で相手への信頼感が決まってしまう場面で、電話の音声が聞こえづらい、何度も用件を聞き返しているなんてことがあったら、当然信頼を得ることはできません。
他にも、コールセンターで働いているオペレーターの場合であれば、その会社の信頼を背負って仕事しているのに、電話の音声品質が悪く、話が伝わらず、お客さまに不便をかけてしまったということが起こると、心理的な負担につながってしまう可能性もあります。また、不便を感じたお客さまが、会社に対して不信感を抱く可能性もあるので、やはり電話の音声品質は気を配るべきポイントだと考えられます。
2.ビジネスの現場に与える深刻な影響
聞き取りづらい不安が生む「悪循環」
他にも、音声品質が悪く相手に自分の声を聞き取ってもらえない場合、無意識に声を張り上げてしまうこともあるかと思います。この時出す声は、聞いている側が非常に不快だと感じる、高めで圧の強い声になってしまいます。これにより、相手をイライラさせてしまう可能性もあるので、オペレーターの話す環境を整えることは最低条件だと思います。
音声品質が疲労度に影響するメカニズム
耳から入った音声は、まず側頭葉の一次聴覚野で処理され、言語として分析されたのち、前頭前野に送られて文脈や記憶、思考と結び付けられます。前頭前野には情報を一時的に保持し、操作するワーキングメモリがあり、通常は業務判断や会話内容の理解などに使われています。
しかし、音声が聞き取りにくかったり、途切れて届いたりすると、聞き取ることに多くのリソースを割かれてしまい、本来集中すべき業務処理が後回しになります。つまり、音声品質の悪い環境では、脳が本来の仕事に使える余力を失ってしまうのです。
最近、発表された論文によると、海外のコールセンターにおける実験で、音声品質の悪い環境は従業員の聴取努力(※2)を30%増加させるという結果が報告されています。これは、疲労度の増加にもつながるものです。
※2 音声が聞き取りにくい状況下で、集中して内容を理解しようとする際に生じる負荷のこと。
クラウドPBXサービスを提供する側として、この課題を少しでも解決に近づけられるよう、オペレーターが余計なストレスを感じることなく、仕事ができる環境を整えていきたいと改めて感じました。
3. AI時代の今こそ価値になる「人の声」
実は、電話で話すときの声は少し高めな、いわゆる“よそ行きの声”が良いという風潮がありますが、低めの声の方が相手に信頼感を与えるという研究結果が出ているんです。機械音声もやや高めな声のケースが多いですが、高い声は相手に安心感よりも不快感を与えることが報告されています。ビジネスにおいては「この会社は信用できないな」という印象にもつながってしまうのです。
今後は、定型的な案内のように誰が話しても問題ない内容はAIに任せて、お客さまに寄り添い信頼感を与えたい場面では人の声が大事にされる。そういう時代になっていくと思います。
おわりに
音声品質の良い電話システムを使うことが、オペレーターとお客さまの負担を軽減し、円滑なコミュニケーションによる信頼感の創出もできると思います。電話の音声品質は、私たち音声の専門家から見てもすごく重要なポイントです。今後、BIZTELを広めていくうえで、音声品質の重要性はしっかりとアピールしてほしいです。
次回予告
妥協なき「音声品質」へのこだわり。インフラチームが語るBIZTELの裏側
では、その理想的な音声品質を、BIZTELはどのようにして実現しているのでしょうか。その核心に迫るべく、システムの心臓部を支えるインフラチームへの取材を実施しました。
技術者たちが語る、安定稼働と高品質を両立させるための徹底したこだわり。次回は、その「裏側」を詳しくお届けします。どうぞお楽しみに!
一般社団法人「声・脳・教育研究所」代表
山﨑広子
国立音楽大学卒業後、複数の大学にて心理学および音声学を学ぶ。音楽ジャーナリスト・ライターとして音の現場を取材するとともに、音声が心身に与える影響を認知心理学をベースに研究。脳と声の関わりから導き出した「オーセンティック・ヴォイス」を提唱。2017年NHKラジオ「人生を変える『声』の力」の講師を務める。主な著書に『
8割の人は自分の声が嫌い』(角川新書)、『声のサイエンス』(NHK出版新書)がある。
https://www.yamazakihiroko.com/
株式会社リンク
BIZTEL事業部 マーケティングチーム サブマネージャー
三浦康平
銀行のコールセンターでSV、出版社が運営するビジネススクールでカスタマーサポートを担当。現在は、リンクでクラウド型PBX「BIZTEL」、コールセンター特化のeラーニング・教育管理サービス「BIZTEL shouin」のマーケティングに従事。また、2,000名以上のコールセンター関係者が学習するオンラインスクール「BIZTEL大学」を企画・運営。
株式会社リンク
BIZTEL事業部 営業チーム サブマネージャー
佐藤 優輝
クラウド型PBX「BIZTEL 」の営業活動を通じ、大手通信事業者のコンタクトセンター開設や、200席超の大規模センターを構築するプロジェクトの遂行など、100社以上の電話応対業務を支援。2021年からはその経験を活かして「BIZTEL shouin」のサービス立ち上げを担い、教育面でも電話応対の現場をサポートしている。
