
コールセンター関係者のための【最新ボイスボット大全】(BIZTEL大学 第12回 講義レポート)
BIZTEL大学は、コールセンター(コンタクトセンター)従事者の方へ「学びの機会」と「悩みの解決」を提供するために開校したオンラインセミナーです。累計1,500名以上の入学者へ「センター運営の持続的な成長」に役立つ情報をお伝えしています。本記事は、ボイスボット業界のリーダー3社をお招きして開催した 『BIZTEL大学 第12回 コールセンター関係者のための【最新ボイスボット大全】』 の講義レポートです。近年注目を集めている「AIによる電話応対の自動化」の実用性について、さまざまな角度から解説していただきました。
講師

株式会社リンク
取締役 BIZTEL事業部長 坂元 剛
インターネットシステムに関する開発業務からキャリアをスタート。監視システムや多数のWebシステム等の構築の知見を活かして、今までだれもトライしてこなかったPBXをインターネットサーバに載せるという「BIZTEL」サービスを立ち上げ。データ通信および音声通信のソリューション提供まで幅広い経験をもとに「BIZTEL」の成長を支える。

株式会社AI Shift
AIコールセンター事業部 事業責任者 田島 努
商社にて営業を経験後、サイバーエージェントへ入社し、チャットボットのシナリオ設計・カスタマーサクセスを経て、同サービスの事業会社である株式会社AI Shiftへ参画。
2020年よりボイスボットプロダクトを立ち上げ、AIコールセンター事業の責任者に就任。
現在は、各プロダクトへの生成AI連携を積極的に検討しながら、各企業におけるコールセンター業務の課題解決に従事。

株式会社ソフトフロントジャパン
セールス&マーケティンググループ マネージャー 前田 兼孝
ゼネコン・教育ベンチャー・翻訳サービス業等でBtoB/BtoC問わず営業職に従事。
2019年より株式会社ソフトフロントジャパンへ入社し、ボイスボットcommubo(コミュボ)の事業立ち上げ時から営業統括を担当して事業拡大に貢献。コールセンター業界を熟知し、電話応対自動化やボイスボット導入の支援など、お客さまの課題解決に従事。

株式会社PKSHA Communication
Voicebot事業部長兼Voicebotプロダクトオーナー 宮崎 純一
エンジニアやコンサルタントといったキャリアを経て、2021年にPKSHAへ入社。
生命保険・損害保険・信販会社・メガバンクを中心に、幅広い業界でコンタクトセンター領域のAI SaaS導入関連プロジェクトをマネジメントし、現在はPKSHA Voicebotのプロジェクト責任者を務める。
第一部:これからのコールセンターに「ボイスボットが必要」な理由 旧来の“電話自動応対”の課題を解決した「BIZTEL×ボイスボット連携」とは?
クラウドPBX/CTI「BIZTEL」とは
代表的な機能は次の通りです。
・稼働状況モニタリング機能
・レポート機能
・シートビュー機能
・音声認識機能
・ChatGPTによる要約・通話分析機能 など
また、オペレーターの重要事項説明が漏れていないか、きちんとした敬語を使えているかといった通話評価に活用できる点も魅力です。
コールセンター業界はAI活用に向いている
BIZTELはさまざまなシステムと連携するためのAPI群を用意しているので、ChatGPT・ボイスボットはもちろん、企業の独自システムとの連携にも対応できるサービスとなっています。「こんなことができないか?」といったことがあれば、ぜひ仰っていただけたらと思っています。
BIZTELのボイスボット連携
シンプルな仕組みですが、いくつかの課題がありました。
ボイスボットシステムのこれまでの課題

二つ目は、PBXからボイスボットへ外線転送によって通話の受け渡しがされることで、不要な通話料が発生してしまっていたという点です。
BIZTELでは、これらの課題を解決した「ボイスボット連携」が可能です。
BIZTELと今日ご登壇する3社のボイスボットとの連携では、通話を内線転送でやりとりするため、お客さまの発信番号をボイスボット・オペレーターへ連携したり、通話料を削減したりすることができます。
第二部:業界のリーダー3人が語り尽くす!ボイスボットの基本機能・仕組み・運用方法・成果事例など“最新情報”ディスカッション
パネリスト
- 株式会社AI Shift 田島 努さま(以下、AI Shift 田島)
- 株式会社ソフトフロントジャパン 前田 兼孝さま(以下、ソフトフロント 前田)
- 株式会社PKSHA Communication 宮崎 純一さま(以下、PKSHA 宮崎)
ボイスボットの代表的なサービス比較
まず顧客体験(使い心地)についてですが、電話はいわば「企業の窓口」なので、ボイスボットによってお客さまの体験を損なうことがないようにする必要があると考えています。そのために、会話中の間のコントロールや、雑音・言い淀みといった実環境ならではの障壁への対策を行っています。
また、外部システム連携は、自動化の度合いを決める大きな要素であり、より広い範囲を自動化するために重要だと考えています。AI Messenger Voicebotでは、作り込んだ個別開発によって、完全自動化を実現することを重要視しています。
いずれも電話応対業務の自動化をする際に非常に重要な要素で、AIが進化したとしても必ず求められる部分です。
どのような担当者さまに導入いただいているかですが、自分たちでさまざまな設定ができるような「自走型が良い」、とはいえベンダーには環境だけ渡して終わりということではなく「伴走してほしい」、いろいろな業務に使えるような「拡張性が大切」といったご要望のある方に評価していただいています。
言わずもがなですが、PKSHA Voicebotは電話対応をオペレーターに代わって「24時間365日」できるようにする仕組みです。
「用件」「顧客」「対象商材」「お客さまが問い合わせた背景」など、ヒアリングする項目を組み合わせることによって、住所変更や解約手続き、作業完了報告といった幅広い業務を自動化するワークフローが構築できます。
最新のボイスボット、ここがすごい!
例えば、「一次受付業務」といっても、日中のあふれ呼対応なのか、夜間の営業時間外の対応なのか。他にも、利用するのは通販事業者なのか、サービス系のサポート部署なのか、自治体なのかなどによって、個社ごとで大事にしたいポイントが異なります。ボイスボットはそういった幅広いシーンをシナリオに落とし込むことができます。
また、PDCAを自社で回せるのも特長です。弊社のcommuboの場合は、マニュアルや伴走体制の整備といった導入した企業が自立するまでのサポートを行っています。慣れてくると自社でオリジナルのシナリオをどんどん作成できるようになります。

例えば、生命保険会社さまの事例ですと、月3,500件を超える住所変更の受付を自動化し、全体の問い合わせの約7割をボイスボットで完結できるようになりました。
他にも通販会社さまでは、あふれ呼をボイスボットでカバーし、広告のROI(投資利益率)を最大化した事例があります。テレビCMの直後は入電が増えるため、オペレーターが待ち構えている必要があり、CMを流すタイミングを慎重に選ばなければなりませんでしたが、ボイスボットがそこを補うことで人員に縛られることがなくなり、効果が最も高いタイミングで広告が打てるようになりました。また、放棄率も約2割改善できました。
しかし、現在は生成AIをシステムに組み込むことで、お客さまの質問の意図を理解し、マッチした回答を出せるようになっています。
他にも、製品型番などの数字やアルファベットの羅列は音声認識が難しく、従来の解決策は音声認識エンジンの性能をあげる方法が主流でしたが、生成AIの活用により、誤った音声認識があっても、認識した発話に近い型番の製品を検索するといったことが実現できるようになっています。

「コールセンターの現場はここが気になっている…」その疑問にお答えします!
さらに、今後はLLM(大規模言語モデル)との組み合わせで対応範囲が広がるため、すべての業界・業種で利用が拡大すると想定されます。
これまでのボイスボットは、数字や一部の項目の認識が得意とされていましたが、昨今は音声認識の精度が上がり、氏名や住所などの認識も可能になってきました。今後はLLMによって、一括の聞き取りや、より複雑な応対ができるようになり、高度化が進んでいくでしょう。
現在、主に利用されている領域としては、先ほど例として出した通販や、通信サービス/インフラのお問い合わせ受付・資料請求・契約・機器レンタルなどが挙げられます。金融業界でも、契約保全(顧客が保険に加入できるか審査する業務)などで活用が進んでいる状況です。メーカー・流通についても、定型的な業務での利用事例があります。

電話をする人の属性を意識し、「丁寧な対応をしようとしている」ということをボイスボットで表現する設計が大切です。
では、どういう観点で表現する必要があるかというと、次のポイントが挙げられます。
・話す速度
年齢層や活用シーンに配慮する(急いでいる場面なのか、など)
・テンポ
利用者のストレスが軽減できるように調整する
・答え方のガイド
ロボットとの会話に不慣れな人の不安を解消できるようにする(お客さまの氏名を聴取する際、『「〇〇です」のように名前をおっしゃってください』とガイダンスを流す、など)
実際、「お客さまはボイスボットに抵抗があると想定していたが、反応を見ていると意外となかった」というケースは多いです。
いわゆる「API連携」と呼ばれる仕組みが主軸となりますが、ケースによってはCSVファイル形式で別のシステムと連携し、ボイスボットが対応した情報を格納していきます。予約システムと連携し、空き枠を検索して登録できるほか、受注システムと連携して商品名・個数・送付先の住所などの情報を取り込み、受注を完結させるといったこともできるようになります。
また、完全に自動化はせず、ボイスボットが聞いた内容をオペレーターがチェックしてから手動で入力するといったフローを組まれる企業さまもいらっしゃり、どちらの運用方法にも対応できます。
セミナー参加者からの質問(一部ご紹介)
ステップとしては、「要件定義(どういった使い方をしたいのか)→シナリオのすり合わせ→設定→テスト→微調整」といった流れになります。
導入までの期間はソフトフロントでも大体同じくらいで、早ければ1ヵ月、もう少し時間がかかると2〜3ヵ月くらいです。対象業務のボリューム感や、どこまで設計が整理されているかによっても期間は変わります。
とはいえ、今日の話にもあった通り、生成AIを使うことでより柔軟な対応が可能になっていきますので、そうした技術を応用することで、オペレーターとお客さまの会話を読み込ませてシナリオ化することは、そう遠くない将来実現できると考えています。
コールセンターの改善に励む皆さまへのメッセージ
私たちAI Shiftや、PKSHAさん、ソフトフロントさんは色々な企業さまを支援し、経験を積んでいます。そうした経験をぜひ頼っていただき、皆さまのサポートができたらと思っています。
また、ボイスボットの未来に関しては、この1〜2年で、生成AIの能力を組み込むことによって一気に性能が上がると予測しています。ずっと昔から言われていた「コールセンターの業務を代替する」未来が、いよいよ近づいていると思っています。弊社もそうしたものが作れるよう、引き続き頑張っていきたいです。
ボイスボットを多くの企業が使うようになってから導入すると、その時点から慣れていない部分が色々と出てくるかと思います。過渡期である今のうちからスモールスタートして、運用に慣れておいたり、どこでボイスボットを活用したら効果的か考えたりするなど、感覚を養いながら進めるのがおすすめです。
一方で、ボイスボットが普及していくと、オペレーターさんの価値は上がっていくと思います。ボイスボットで自動化を進めることを通じて、オペレーターさんが人でなければできない業務にどんどん対応し、その価値を高めていけるよう私たちもサポートしていきたいと考えています。
BIZTEL大学への入学をお待ちしております!

セミナーで改善手法を学び、最新ソリューションの情報を収集して、BIZTEL shouinで復習し、学んだ内容を現場で活かす。そして、また次回のセミナーに参加する。BIZTEL大学では、こうした持続的な成長サイクルをコールセンター(コンタクトセンター)の皆さまにご用意しています。
将来的にはオフラインでの開催や、参加者同士のネットワーキングの場になるような未来を目指していく予定です。「BIZTEL大学」へ興味をお持ちの方、ぜひご参加をお待ちしております!