コンタクトセンター運営者必見! コンサルタントが語る、 センター内で起きる“困った”の原因は教育不足にあり!
複雑化する業務によって、コンタクトセンターのオペレーターにはより高いスキルが求められるようになっています。その一方で、人材不足や離職率の高まりによって、オペレーターのスキルにバラツキが生まれ、お客さまの要望に応えられないケースも増えています。この一連の問題の原因となっているのが「オペレーターの教育不足」です。 コンタクトセンターの課題を解消するために、教育をどうシステム化するべきなのか。長年、多くのコンタクトセンターでコンサルティングを行っている池田浩一さんに教えていただきました。
1. コンタクトセンターでよくある「困った!」
この3つの課題は一見バラバラのように見えますが、実はあるフィルターを通すと共通点が見えてきます。それはオペレーターさんの「教育不足」です。
コンタクトセンターが抱える3つの課題
①オペレーターのスキル不足
オペレーターごとのスキルのバラツキによって、お客さまの要望・期待に応えられないケースが増加。
②SVや管理者の負担増と疲弊
業務の高度化に加え、コロナ禍による在宅ワークの調整など、これまで以上に業務が増大。
③離職増加で慢性的な人員不足
知識とスキルが不足しているオペレーターは不安や負担感が増し、それが理由で退職へとつながる。
さらにスキル不足はオペレーターさんにとって、日常の業務での不安やストレスを増やす原因となります。そのサポートやケアをすることができなければ、離職が増えるという最悪の結果につながってしまいます。せっかく人材を採用したのに、定着率が低く悩んでいる運営者の方も多いのではないでしょうか。
一方、教育が丁寧で充実し、フレンドリーな上司にサポートしてもらえるコンタクトセンターでは、当然ながら定着率が高い傾向にあります。オペレーターの教育不足=「離職」が増えやすい運営をしているということになります。
コンタクトセンターのイメージ図
体制/マネジメントが整っているとオペレーターに対して十分な教育/研修を実施でき、サポート/ケアも手厚くなります。その結果がオペレーターの定着へとつながります。
2. コンタクトセンターで必要な正しい教育とは
本来、学び方と実践応用の能力は十人十色です。OJTのトレーナーになった方は新人さんのキャラクター・個性と学習・実践の傾向(癖)を把握し、指導につなげる必要があります。
例えば、教育とマネジメント体制がしっかり整備されている大手のコンタクトセンターでは、新人研修を終えたばかりの新米オペレーターが電話対応を終えると自動でアンケートに移り、お客さまが電話対応の評価をするシステムを導入しています。このアンケートは1週間実施し、スコア平均が基準以下の場合は、面談と再トレーニングを行います。
これはコンタクトセンターの教育として理想の形ですが、この体制を整えるには人手もお金もかかります。
ここまではできないという場合でも、最低1~3ヵ月おきに電話対応の抜き取り調査を3本程度行い、QA(品質担当)チームが評価チェック、面談(フィードバック)するといった体制はすべてのコンタクトセンターで実施してほしいと思います。
また教育のレベルについても初期研修で終わりではなく、オペレーターさんの成長を促すようにする必要があります。そのためには「初期研修」「フォローアップ研修」「スキルアップ研修」の3段階の教育を実施します。
人は一度身に付けたものでも、時間が経てば忘れてしまったり、レベルが下がったりしてしまうものです。再確認したいときに研修・教育を受けることができるような体制を整えておくことが大切です。さらに、研修を受けて終わりではなく、一人ひとりのオペレーターさんにきちんとフィードバックをすることも重要です。
コンタクトセンターで求められる3段階の教育
①初期研修
電話対応の基礎研修を必ず行う。オープニングの挨拶や名乗り、敬語や基礎マナーなど、業務上の適切な表現を習得する。電話対応デビュー以降の業務に大きく関わるため、敬語を使った謝罪表現や笑声(えごえ)がしっかりできるようにするなど、お客さまからお叱りを受けないようにすることが大切。
②フォローアップ研修
初期研修でカバーできない想定外の質問や臨機応変な対処は、フォローアップ研修で徐々に学んでいく。
③スキルアップ研修
さらなる業務知識や、わかりやすい案内の仕方、苦情対応の話法、マインドアップなどに関する研修を行う。過去に問題化したテーマや事例を題材にした再発防止勉強会などもここに含む。
3. 教育不足を解消するeラーニング
eラーニングシステムを取り入れると、パソコンやスマートフォンで動画による研修がいつでも、どこでも受けられます。コンタクトセンターの場合、土日や遅い時間など変則シフトでの勤務も多いため、集合研修となると日時の調整はもちろん、場所を確保するだけでも大変です。そういった調整の手間がないというのは教育担当にとってとても便利だと思います。
eラーニングシステムにも様々ありますが、例えば私が監修・講師を務めた『BIZTEL shouin』では、電話応対の研修動画がプリセットされており、すぐに研修がスタートできます。教育の3段階でいう「初期研修」は、このプリセットされている動画だけで十分な内容になっています。では「フォローアップ研修」「スキルアップ研修」はどうすればいいのかというと、eラーニングシステムによっては自社で制作した動画コンテンツを簡単にアップロードできる機能が搭載されています。自社のシステムの操作研修やコンプライアンス研修などの動画を作成してアップロードしておけば、講師や指導者の負担減にもなります。
教育担当者が新たに作成した研修動画やマニュアルをeラーニングシステムにアップすることで、業務に関する最新情報をコンタクトセンター内で即時に共有することができます。オペレーターさんに研修で伝える内容に変更があった際も、すぐに更新できるので便利です。
ちなみに、先ほどご紹介した『BIZTEL shouin』もプリセットの研修動画が毎月更新され、コンタクトセンター業務のスキルや電話対応の言葉遣いなどについて、いつでも最新の内容が学べるようになっています。
ある大手メーカーでは時代とともに変わっていく敬語や電話対応特有の表現に合わせて、自社の応対マニュアルを25年以上、毎年更新しているそうです。常に変わっていく言葉使いについて最新の情報が学べるというのは、言葉を生業とするオペレーターさんにとって大切なことだといえるでしょう。
eラーニングシステムによっては、一人ひとりの教育の進捗管理ができるほか、通話録音を各オペレーターにアップロードしてもらい、教育担当者がチェックして、それぞれにコメントを付けてフィードバックできる機能が搭載されているものもあります。オペレーターさんへの教育にもっとも重要な「スキルに合わせたフィードバック」がしっかりできるので、こうした教育ツールを有効活用するのも良いでしょう。
負のスパイラルを断ち切るためにも、もう一度オペレーターさんの教育を見直してもらいたいと思います。
最後に、私が講師として人に教える際に大切にしている心得を紹介したいと思います。みなさんの参考になれば嬉しいです。
コンタクトセンター教育者の心得
1. 教育指導者である基本は「十人十色」、全員が違う
2. 指導者は絶えず工夫する必要がある:受講生が悪いという発想は無い⇒教育心理学を勉強し学んだことは「自分が変わること」
3. ネガティブワードは使用しない
4. 難易度が高いことも、指導者が深く勉強すれば必ず簡単に説明できる
5. 研修は楽しい場である
6. 参加型のワークショップやロールプレイングを行い、音声を聴かせて耳から覚えてもらう
7. コーチングのマインドを絶えず鍛える(仕事中もプライベートでも)
8. SWOT分析(Strength:強み、Weakness:弱み、Opportunity:機会、Threat:脅威)と対策立案の思考を身に着ける(愚痴や文句より、分析と対策を)
9. 受講生の強みと楽しく付き合う(ミスや欠点は後回し)
株式会社ブランニューデイ
代表取締役
池田 浩一
コンタクトセンター専門のコンサルタントとして、100社以上のセンターの立ち上げや業務改善を支援。数多くの電話応対の現場に携わった経験から「実践で役立つ」ことに重きを置いた研修を行い、好評を博している。ラジオやニュースサイトなど多数のメディアにも出演する。