目指せ、 定着率大幅アップ! コンタクトセンターコンサルタントが教える、 理想の新人オペレーターデビュー
多くのコンタクトセンターが抱えている課題である「慢性的なオペレーター不足」。その原因の一つに新人オペレーターの定着率の低さがあります。人と話す仕事をしたい、スキルアップをしたいと研修に参加したものの、デビューを果たす前の新人研修で辞めてしまう人も少なくありません。これではいつまで経ってもオペレーター不足は解消できないまま。そこで今回は、コンタクトセンターのコンサルタントである池田浩一さんに、デビューするまでのフォローのコツや、定着率をアップさせる新人研修の方法について教えてもらいました。
1.新人オペレーターが定着しないのはなぜ?
新人オペレーターが離職してしまう原因は大きく3つあります。
1つ目は「採用面接」です。採用基準が明確でなかったり、現場の担当者が採用にタッチせず、人事や採用担当者のみで面接したために、いざ働きだすと現場が求めていた人材とは違っていたということがよくあります。
2つ目は「高度化する新人研修」です。コンタクトセンターの仕事はどんどん難易度が増しています。それに比例して受講生が覚えなくてはいけない内容は増える一方です。多くのコンタクトセンターの研修は、問題なく研修についていける一部の人を基準に作成されています。業務を覚える要領が良く、かつ電話対応の基礎もすでに身につけている人でないとこなせない内容になってしまっています。これでは多くの人が脱落してしまうのも当たり前ですよね。
そして、3つ目は「精神的なケアの不足」です。研修中の新人さんは、常に緊張している状態です。メンタルが非常に敏感になっているので、周りのサポートやメンタルケアがとても重要です。
以前はこうしたケアの一環で、自由参加の飲み会や誕生会などをやっているセンターもありました。楽しみがあるとモチベーションが上がりますし、職場の雰囲気も明るくなります。今はコロナ禍でこうした取り組みは難しくなりましたが、講師やSVの方が新人さんと面談をして愚痴を聞いたり、先輩オペレーターと相談できる場を設けたりといった工夫をするだけでもいいと思います。これは私の経験ですが、アットホームでフレンドリー、みんなで褒め合う、助け合う空気感を持っているコンタクトセンターは人が辞めない。定着率が高い傾向にあります。
新人オペレーターさんが働きやすい職場、働きたいと思う職場を、センター長やSV、先輩オペレーターなどコンタクトセンターに関わる全員で作ることが、定着率を上げるために最も大切です。
新人オペレーターが定着しない3要素
①採用面談時の課題……選定ミス、採用基準・募集条件と内容のギャップ
②新人研修内容の課題……研修講師のスキル不足、ボリュームが多い、スケジュールが合わない
③研修期間中のサポートやメンタルケアの不足……講師・SV・先輩達の指導が厳しい、フォローがない
2. 新人研修の見直しが定着率アップの第1歩
新人研修のベーシックな流れを紹介しておきます。
新人研修のステップ
①オリエンテーション 会社・商品・サービス・センタールール・個人情報保護の学習
②システム操作
③電話応対の基礎研修
④業務知識の習得 / ロールプレイング
⑤モニタリング / OJT
⑥デビュー判定
⑦デビュー
「④業務知識の習得」は力を入れて指導するセンターが多いのですが、意外と疎かにしがちなのが電話応対の基礎の部分です
業務内容だけをしっかりと説明できたら電話をかけてきたお客さまが満足するかというと、決してそうではありません。お客さまは無意識のうちにマナーや常識的なことを求めています。「電話応対の基礎」と「業務の知識」はいわば、自転車の両輪です。どちらか一方が回っているだけでは自転車は前に進みません。さらに言えば、オペレーターさんの言葉遣いやマナーは、そのまま会社の好感度・品位に関わります。会社のブランド価値を落とさないためにも、電話応対の基礎研修が重要です。業務の知識は勉強すれば補えます。ですが、マナーや好感度は意識・感覚が大事なので、新人のうちからその感覚を身に付けてもらうことが大切です。
OJTで気をつけたいポイント
1. 電話応対で、誤った言葉遣いやマナー違反、大きな癖があれば、OJT中に少しずつ指導する。
2. OJT中の苦情は直ぐに先輩が電話を替わり、新人の負担を減らす。
3. OJT初期の指導者は朗らかで寛容なキャラクターの人が担当する。新人は緊張の連続なので威圧感があるタイプは研修もOJTも不向き。
当たり前のことですが、新人さんはお客さまから叱られることに慣れていません。大人になって他人から叱られるという場面はあまりないので、指導者が思っている以上にショックを受けています。その直後に、教育担当から厳しく指導をするとショックが倍増してしまいます。OJTではあくまでソフトな指導を心がけてください。
苦情の電話に慣れるには場数が必要だからと、最初から苦情電話を受けさせるのも絶対にNGです。それだけで心が折れてしまう場合もあります。1ヵ月くらい経って「業務に慣れてきたな」というタイミングで、徐々に苦情応対に挑戦してみるくらいのゆっくりとしたペースでいいと思います。新人さんにはムリをさせずに、コンタクトセンターの全員で育てていくようにしましょう。
あとこれは絶対にやってほしいというのが、実際の電話応対の音声を聴くことです。いくら応対マニュアルを読んで勉強しても、実際にお客さまからかかってくる電話はその通りにはいきません。リアルな電話のやりとりを聴くことで、こう返せばいいのかとか、こういう言葉遣いが必要なのかなどと、学べることがたくさんあります。また、新人研修で音声を聴いておくと現場に出たときのギャップが少なくなり、定着率が上がります。それから、講師の皆さんにぜひ心がけてほしいのは、研修で新人オペレーターさんたちを楽しませることです。無理やり覚えさせるのではなく、受講生の強みと弱みを把握し、強みを褒めて伸ばしていきます。苦手や不足は本人から気付けるよう常に対話しながら、コーチングのマインドで指導してほしいですね。
人間は楽しいときが最もパフォーマンスを発揮できます。理解できているかどうかクイズを出したり、長時間の研修の日は、寝てもいいし、自習してもいいといった自由時間を挟んだりと、みんなが研修に出たくなるような工夫をすることが大切です。こうした取り組みをすると、定着率も不思議と上がっていきます。
3. eラーニングの活用が大きなカギ
大規模なコンタクトセンターになると数名の講師が研修を担当します。当然、講師の間でスキルや知識にバラツキがあるため、指導内容にズレが生まれます。これを防ぐためには指導内容が統一されているeラーニングを活用するのがいいと思います。特に新人研修で疎かにしがちな電話応対の基礎を学ぶのにeラーニングはお勧めです。
例えば、クラウド型のeラーニングサービス『BIZTEL shouin』には、電話応対の基礎研修動画がプリセットされており、大手のコンタクトセンターで行っているのと同水準の教育を受けることができます。
私が指導しているコンタクトセンターでは、次のような方法で『BIZTEL shouin』をフルに活用しています。
まず、新人研修の「電話応対の基礎」の科目としてプリセット動画を受講。ここまでは一般的なeラーニングの使い方と同じですが、私の指導先の企業では、さらにOJTの実施中に指導する先輩と一緒に動画を見直してもらっています。例えば、新人さんは現場に出ると、緊張のため笑声(えごえ)や明るい応対ができなくなるといったことが多々あります。こうした課題が発生した際に該当するテーマの動画を観て復習することで、注意すべきポイントが頭にすっと入り、その後の電話応対にもリラックスして臨めるようになります。動画は全て5分程度で気軽にさっと観られるので、その他にもOJT中に気がついた点があったらいつでも復習できます。
そして三度目の活用シーンが、デビューしてから3ヵ月後のタイミング。ここで再度、基礎をすべて見直すように指導します。最初の3ヵ月はどうしても業務知識に集中せざるを得ないので、多少のことは目をつぶりますが、それをそのままにしておくと応対がどんどん雑になっていきます。この時期にもう一度、マナーや言葉遣い、明るい声の出し方といった基礎を復習してもらうことで、ぐっとレベルが上がります。すると、お客さまから電話応対を褒められたり、ありがとうと言ってもらえたりという嬉しいことが増えていきます。仕事のモチベーションも上がり、定着率アップにつながるでしょう。
新人研修をする講師にも様々なタイプの人がいます。講師やOJTの指導係が「業務知識はすごくあるけれど、電話応対の基礎の指導はあまり得意ではない」というの場合は、基礎研修をeラーニングで受講してもらうことで負担を減らすことができます。
また、先ほどの『BIZTEL shouin』であれば、プリセットされている動画のほかに自分たちで作った動画を登録できます。一度動画をアップロードしたら同じ研修を繰り返し行う必要が無くなりますので、空いた分の時間を新人さんのメンタルケアやサポートに充てられるようになります。
そのほかにも『BIZTEL shouin』の場合は、5分の動画を見終わった後に授業内容に関するクイズが出題でき、理解を深めながら学べます。クイズの正解率もチェックできるので、そこで理解度を判断することも可能です。
また、各研修動画には受講者が「いいね!」をつけるボタンがあります。もし「いいね!」の数が少なかったら講義内容が退屈なものになっていないか見直してみるといった形で、研修の改善に活用できます。
『BIZTEL shouin』をはじめ、eラーニングのサービスによっては、担当業務ごとに研修内容の範囲や受講する研修の順番が設定できる「コーストレーニング」という機能を提供しているものもあります。
業務内容以外にも、「新人用」「中堅用」といった形でオペレーターさんの経験やスキルレベルに応じたコース作りができ、研修の管理が楽になります。
新人オペレーターさんが定着しないと、ずっと採用活動を続けることになります。採用担当者、研修講師、現場も負担が増え、疲弊することになるでしょう。その結果、満足のいく応対ができず、お客さまにご迷惑をおかけすることにも繋がりかねません。
コストの面で考えても、募集広告の費用、講師の人件費、研修会場費、さらには新人オペレーターさんたちの時給も発生しています。デビュー前、デビュー直後に離脱してしまうとせっかくかけたお金がすべて無駄になってしまいます。無駄になったコストを「ロスコスト」と言いますが、数百人規模のコンタクトセンターで考えるとロスコストは年間で数億円にも上ります。
満足なサービスができない上に、どんどんロスコストが増えていく。この負のスパイラルを断ち切るためには、新人研修をきちんと行って定着率を高めるしかありません。 eラーニングなどをしっかりと活用しながら、ぜひ本気で新人研修に取り組んでほしいと思います。
株式会社ブランニューデイ
代表取締役
池田 浩一
コンタクトセンター専門のコンサルタントとして、100社以上のセンターの立ち上げや業務改善を支援。数多くの電話対応の現場に携わった経験から「実践で役立つ」ことに重きを置いた研修を行い、好評を博している。ラジオやニュースサイトなど多数のメディアにも出演する。