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アップセルとは?カスタマーサクセス活動で得られるLTV最大化のポイント

アップセルとは?カスタマーサクセス活動で得られるLTV最大化のポイント

SaaSなどのサブスクリプション型ビジネスの成長要因として「LTV(顧客生涯価値)の最大化」があります。LTVを最大化させるには、サービスの継続的な利用による契約期間の延長だけでなく、アップセルによる顧客単価の向上も目指すと良いでしょう。では、アップセルを成功させるために何が必要なのでしょうか。そのヒントが「カスタマーサクセス」にあります。
ここでは、LTV増大とアップセルに寄与するカスタマーサクセスの考え方や、ICTツールを紹介します。

目次

  1. アップセルとは
  2. アップセルを成功させるポイント
  3. アップセル実現に向けて気を付けたいこと
  4. アップセルの事例
  5. アップセルを目指すために必要なツール
  6. まとめ

1. アップセルとは

アップセルは、自社サービスや製品を購入したことのある顧客に対し、さらなる購入を促す営業手法です。また、顧客の「数」ではなく「質(単価)」を上げることに注力した営業手法とも言えるでしょう。一般的には、同種かつ上位のサービス・製品の購入を提案することが多いかもしれません。また、サブスクリプション型ビジネスでは「無料プラン ⇒ 有料プラン ⇒ オプション契約」という具合に、徐々に契約金額を増やしていく手法も使われています。

クロスセルとの違い

アップセルと同様に、顧客の単価アップを図る方法にクロスセルがあります。アップセルは、既に契約しているサービスの利用金額アップ(より上位のプランへの乗り換え)を勧める方法ですが、クロスセルは関連する別のサービスの追加契約を勧める方法です。クロスセルについての詳細は、こちらの記事も参考にしてください。

クロスセルとは?3つの視点+カスタマーサクセスでLTV最大化 | C.Core ブログ | CustomerCore(カスタマーコア)

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LTV(顧客生涯価値)の最大化は、サブスクリプション型ビジネスを成功に導くための重要施策です。LTVを最大化するための方法はいくつかありますが、今回は「クロスセル」に着目して解説します。クロスセルは、アップセルと同じくLTV最大化に貢献する手法です。クロスセルは、カスタマーサクセスを取り入れることで成功率を高めること…

近年、特にサブスクリプション型ビジネスにおいて、アップセルの重要性が謳われるようになりました。そこで、アップセルが重要視される背景を整理してみたいと思います。

なぜアップセルが重要なのか

アップセルが重要視される理由としては、次の2点が考えられます。

●効率よく売上を伸ばせる

アップセルの対象となるのは、一定以上の取引実績を持つ顧客です。つまり、すでにある程度の信頼関係が築かれており、新規顧客開拓のような労力は必要ありません。こうした既存顧客にアプローチすることで、効率よく売上を伸ばす見込みが立てやすいのです。

●顧客満足度が高まる

アップセルの効果は、単に売上が伸びるだけにとどまりません。アップセルが成功すれば、自社製品・サービスをより深く広く使ってもらえるようになります。さらに顧客から改善要望を引き出すことができれば、より深いニーズの把握につながるでしょう。的確にニーズを捉えた商品は、顧客満足度を向上させていきます。

特にサブスクリプション型のサービスでアップセルが注目される理由

アップセルは、すべてのビジネスにおいて有効な営業手法ですが、サブスクリプション型のサービスでは特に注目されています。その理由は主に以下の2つです。

LTV最大化の考え方が主流になりつつある

アメリカのコンサルティング会社が提唱した「1:5の法則」は、SaaSビジネスにおいてよく知られるようになっています。この「1:5の法則」とは、新規顧客の獲得コストは既存顧客の維持コストの5倍かかるとされるものです。この法則が浸透した理由としては、ある程度ビジネスが安定してきた企業において、新規顧客の獲得コストの方が高いことがおおよそ実感されているからだと考えられます。実際、2016年の調査において、アップセルのCAC(Customer Acquisition Cost:顧客獲得コスト)は新規顧客獲得のCACの24%程度であることがデータで示されました。

このような背景から、近年では顧客の契約金額を単月で見るのではなく、契約単価×継続利用期間で算出されるLTV(Life Time Value:顧客生涯価値)を見て、LTVの最大化を目指す考え方が主流になってきています。LTVの算出式を見ればわかるように、LTVの最大化には継続利用期間だけではなく、契約単価を高めること、つまりアップセルやクロスセルが重要です。

SaaSビジネスにおいて重要とされるLTVとは?計算方法や向上させるための施策を解説 | C.Core ブログ | CustomerCore(カスタマーコア)

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SaaSビジネス拡大のために欠かすことのできない指標の一つに、LTV(Life Time Value:顧客生涯価値)があります。また、このLTVとカスタマーサクセスは切り離すことのできない関係性にあります。この記事では、LTVの概念や計算方法、重要視される理由、向上させるための施策、カスタマーサクセスとの関係性などに…

サブスクリプション型のサービスでは、長期的に顧客との接触機会を持つことができる

アップセルやクロスセルの実現には、顧客との長期的なコミュニケーションが重要です。どの顧客がアップセルやクロスセルにメリットを感じそうか、といった判断は短期的に行えるものではありません。

また、顧客にとっても信頼関係のない企業からの提案は受け入れにくいものです。そこで、長期的な接触機会を持ち、信頼関係を構築した上で、最適なタイミングで提案する必要があります。サブスクリプション型のサービスは、カスタマーサクセスの手法などを用いて、顧客との長期的な関係性を持つことが基本となるビジネスです。そのため、接点が単発になりがちな売り切り型サービスよりも成功率が高くなります。このようなビジネスの特徴も、サブスクリプション型のサービスでアップセルやクロスセルが注目される理由です。

2. アップセルを成功させるポイント

アップセルを成功させるためには、「顧客層の特定」「分類」「顧客行動の把握」という3つの施策が必要になるでしょう。

ロイヤルティの高い顧客層の特定

アップセルを成功させるための第一歩は、「顧客を分類して優先順位をつける」ことです。アップセルは「実績」がある顧客に対する営業ですから、まずは優良なアップセル対象を特定する必要があります。具体的には、サービスの「利用頻度」「利用額」で顧客を抽出し過去の取引実績に応じて順位付けを行う、といった方法がおすすめです。

顧客の分類

大まかな顧客層が特定できたあとは、さらに具体的な顧客分類を進めます。ここでは、カスタマーサクセスの考え方を採用した分類がおすすめです。カスタマーサクセスは、「顧客の成功」をゴールに据え、そこに至るまでの戦略・活動などを指す概念です。

カスタマーサクセスの考え方を取り入れると「どの顧客へ、いつ、どのようにアプローチすべきか」が明確になっていきます。こうして生み出された戦略を駆使することで、アップセルの成功確率が向上していきます。そこで、まずカスタマーサクセスにおける顧客分類を理解しておきましょう。

●LTVを軸にした3層の顧客分類

カスタマーサクセスでは、LTVを軸にして顧客を3つの層に分類します。

ハイタッチ層

3層のなかで最上位に位置し、LTVが大きく優先度も高い層です。ハイタッチ層に対しては、今後の計画や課題のヒアリング、顧客の成功につながる情報提供や支援など、顧客ごとに最適化した丁寧なアプローチが推奨されます。

ロータッチ層

3層の中で中間に位置し、ハイタッチ層の次に優先度が高い層です。この層へのアプローチはハイタッチ層ほど日常的である必要はないでしょう。ただし、顧客が必要とするタイミングではしっかりと個別のフォローを実行する必要があります。タイミングが重要な顧客層と言えます。

テックタッチ層

3層の中で最下位に位置し、LTV・優先度とも低い層です。アップセルに至るまでには、ある程度の時間が必要な層とも言えます。この層へのアプローチは「効率よく、広く浅く」が基本です。カスタマーサクセスツールなどを駆使し、定期的かつ効率よくフォローを続けていく必要があります。

ツール活用で「迅速かつ的確に知り」、行動につなげる

顧客層を分類したあとは、各層に合ったアプローチを実行していきます。この時、カスタマーサクセスツールが重要な役割を担います。各層へ的確なアプローチを届けるには、顧客行動やコミュニケーションの履歴から、顧客の動向を素早く的確に知っておく必要があります。
しかし、複数の顧客接点(チャネル)から顧客行動を把握するには、相応の労力が必要です。情報収集と把握に尽力するあまり、営業やマーケティングといったコア業務に影響が出ては本末転倒です。コア業務に割くリソースを減らすことなく、顧客動向を迅速に知るためには、ツールを活用して「顧客データの管理・集約」「データ可視化」を進める必要があります。

3. アップセル実現に向けて気を付けたいこと

メリットの多いアップセルですが、実現するのは容易なことではありません。以下に、アップセル実現に向けて気を付けなくてはならないことをいくつか取り上げます。

カスタマーサクセスを実施し、押し売りにならないようにする

アップセルの提案が顧客に押し売りと捉えられてしまうと、アップセルが成功しないばかりではなく、顧客の信頼を損なうことになりかねません。そのため、顧客がサービスに求めることは何かを見極め、必要な顧客に適切なアプローチを取ることが求められます。このような対応は、短期的な関係では行うことはできません。カスタマーサクセスを実施して、顧客との関係性を構築した上で行うことが大切です。

組織的にカスタマーサクセスを実施する

カスタマーサクセスによって顧客ロイヤルティを高めるためには、一貫した方針が必要です。営業担当者とカスタマーサクセス担当者で方針が異なると、顧客の混乱を招き、信頼を損ねるおそれがあります。また、属人的な対応や散発的な対応では、どの顧客がアップセルの提案に適しているのかが分からなくなったり、アップセルを提案すべきタイミングが測りづらくなります。組織的に一貫した方針のもとに対応し、同時にツールを用いて仕組みを構築することで、顧客ロイヤルティの形成と把握がしやすくなるでしょう。

4. Dropbox社でのアップセルの事例

オンラインストレージサービスを提供するDropboxは、フリーミアムモデルの成功率を高める仕掛けを入れています。ベーシックプランを2GBまで無料で提供し、新規顧客を獲得しますが、利用期間が長くなればデータ容量の不足が生じます。そして、データ容量が少なくなってきたタイミングで、有料プランへのアップグレードを勧めます。ストレージサービスは、顧客が必要なデータを保存していることもあり、利用停止のハードルが高いサービスです。これはまさに、フリーミアムの成功事例の一つと言えます。
また、Dropboxでは、サービスを他者に紹介することで、ストレージ容量を最大32GB(Dropbox Basicの場合、最大16GB)まで増やすことができる紹介キャンペーンを実施しています。このキャンペーンの狙いは、口コミや紹介によってユーザー数を増やすことはもちろんですが、紹介を行うことにより、顧客ロイヤルティを高めるという点にもあります。

5. アップセルを目指すために必要なツール

カスタマーサクセスの考え方をアップセルにつなげるためには、次のようなツールの活用がおすすめです。

CRM

顧客にまつわる情報を網羅的かつ一元的に管理するツールです。顧客属性や顧客が抱える課題に加え、営業・商談の状況なども管理できるようになります。

カスタマーサクセスツール

カスタマーサクセス活動を効率化するツールです。一般的には、次のような機能を持つことが多いでしょう。

  • CDP(基幹システムのデータや顧客とのコミュニケーションデータ、各種ログなどの統合)
  • データ分析機能
  • 顧客の状態変化を知らせるアラート通知機能
  • チーム内でアップセルのための課題とタスクを管理する機能
  • コミュニケーション履歴管理機能
  • アップセルの提案可否を判断するための指標設定、管理機能

この中で特に注目すべきは「アップセルの提案可否を判断するための指標設定、管理機能」です。この機能では、アップセル提案を行う前の顧客状況の判断に使う指標を自由に設定し、指標ごとに閾値を設けることで、アップセル提案のタイミングを推測することができます。指標はツール側からアラート通知するため、営業担当者のリソースを奪うことはありません。

実際のアップセルでは、ビジネスモデルや顧客の性質によって監視すべき指標が変わってきます。そのため、複数の指標を管理しながら、アップセルの兆候を知る仕組みが望ましいでしょう。

また、カスタマーサクセスツールは、CRMと連携することで分析精度を高めることも可能です。CRMが持つ顧客データを存分に活用できるよう、CRM連携機能を持ったツールを選定していきましょう。

NPS®️(ネットプロモーターズスコア)

NPS®️は、顧客ロイヤルティを計測するための指標やツールを指します。顧客ロイヤルティは「愛着・信頼」と言い換えることができます。NPS®️を活用することで、これまで可視化が難しいとされてきた顧客ロイヤルティを計測し、定量的な指標として表すことができます。NSPのスコアが高い顧客に対してはアップセル提案を行いやすくなるため、積極的に活用したいところです。

6. まとめ

ここでは、アップセルを成功させるためのポイントやツールについて解説してきました。アップセルを成功させるには「顧客行動の把握」「顧客状況変化の察知」「適切なアプローチ」を心掛ける必要があるでしょう。そのためには、顧客それぞれに指標を設定し、その変動を迅速に把握できる仕組みと顧客との信頼関係が必要です。また、属人的な対応ではなく、仕組みを構築することで成功率を高めることができますので、ツールの利用には大きなメリットがあります。アップセルの成功率を上げるため、ぜひカスタマーサクセスツールの導入を検討してみてください。